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迷夢の国のアリス  作者: 影宮ルキ
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ゲームって命がけだってうわぁぁあああ!?

 翌日、早朝。

 メイドさんたちの朝は早いです。だから少し落ち着いたころに抜け出そうかと思ったけど、そうなると騎士たちは早朝訓練を終えてしまうのです。

 そうなるとエースに捕まる可能性大!! だったらやっぱり朝早くなんだよねぇ。朝もやかかってるよ……早すぎるわ……。眠いよー……。

 そっと部屋の扉を開けて、廊下に出る。そしたらダッシュ!! 最短いきたいけど、メイドさんたちがたくさん出入りする部屋が近いから遠回りして人気のない道を進む。

 なんとか、城・脱出!! 最初の頃に脱出した経験が生かされています。

「ふぅ~……」

 精神的に疲れた……。

 緊張が解けてまた眠気に襲われるけど、背筋を伸ばして歩いて紛らわす。

 走りたいけど体力はとっておくに限る。なんせ今から行くのはこわーい南の森なんだから……。

「大丈夫かなぁ……」

 無事に南の森にいきつけたとしても、そっからどうやってトカゲさんを探せばいいんだか……。

「でか、無事にいけるわよねぇ……?」

 危険人物・危険生物。うーん、大丈夫かな……。

 よくよく考えてみればこの世界の人たちは常に武器を携帯してる。

 あれ? それってちょうきけn……。

 いやいや!! 考えちゃだめだ考えちゃだめだ!! 一人で来いっていうくらいなんだから、安全くらい確保しといてくれよって感じなんだけど!!

 いや、うん! そんなの考えても今更だし、もっと生産的なこと考えよう!!

 例えば、そうね……夢の話とか!!

 昨日アズの所で気絶したときに見た夢。

 夢の中で出てきた少女たちは仲の良さそうな姉妹だった。

 これが漫画とかだったらその中の少女のどっちかは私ってことになりそうだけど……。

「色が違うのよね」

 私の髪は銀。目は青。

 少女たちの髪は黒。目も黒。

 日本人っぽい黒髪黒目……って、え? 私も確か……。

 あれ? 日本人ってなんだっけ? 私だよ? でも色が……。

「色? 色がおかしい?」

 アリス? 私が“アリス”だから?

 もともとの私は黒髪黒目だった? “アリス”の色は決まってるとか?

 あぁ、違うな。たぶん。最初にミカ達がアリスは金髪碧眼だって言って、グレイが例外もあったって言ってた。だから決まってるわけじゃないんだ。

 じゃあ、なに? なんなの?

変態(ラビ)に聞いてみようかしら。なんか知ってるかも」

 最初に連れ込んだやつだ。私が気が付かなかった何かを知ってるかもしれないし。

 いろんなことを考えている間に森の中に入った。どこからが南の森かなんて判別は私にはわからないけど、とりあえずまっすぐ突っ走れば何とかなるはず。

「……よしっ」

 ちょっと気合を入れて、走り出した。


「こ、こんなの……聞いてないわよぉぉぉおおおお!!」

 私アリス☆ 今現在人が乗れそうなくらい大きなトカゲっぽい何かに追われてます☆ きゃっ、ファンタジー☆★☆

 って、そんなこと言ってる場合かぁぁああああ!!(セルフツッコミ

「トカゲさんっ! トカゲさんっ!! トカゲさぁあああん!!」

 ヤバい! 食われる!! 自分で呼んだんだからさっさと出てきて何とかしてくれよトカゲさぁぁあああん!!

「いや~、そんなこと言われて~も。俺さん~、ヒ~ロ~じゃないし~」

「いやいや、ヒーローとかそれ以前のもんd……っていつの間に横走ってんのよぉぉお!?」

 よく考えたらおかしいよね! 心の声に反応とか! それ以前に横に走ってんなら助けてよバカァ!!

「アリスが呼んだんでしょ~? それに声でてた~よ~? アリスって意外と~体力あるよね~。しゃべりながら話すとか~」

 お前に言われたくない!! だるっダルな話し方しやがって!! 余裕ありまくりじゃねぇか!!

「あれなんとかしてよ!!」

「あ~、あれは無理~。この森の主だから~傷つけんの禁止~」

 主ってなんだ!?

「も~ちょ~っといったら~いい木があ~るから~、そこまで頑張って~」

「なんかよくわかんないけど分かったわ!」

「その~いき~」

 っていうわけでしばらく並走。よくこんな黄緑色で目立つ人、気が付かなかったな私……。

 いい木とやらが近づいたのかトカゲさんが話しかけてきた。

「よし、少し勢いあるかもだから三秒数えたらお腹に力入れといて」

 ダルダルな話し方をやめてまともになった。なんでだ。

「んー!!」

 もう話すのが辛い。とりあえず声をあげとく。

「い~ち、に~、さんっ!」

 三の合図でぐいっとお腹に衝撃が来る。

 少し視界がくらくらとしたが状況を整理。

 どうやらお腹に手を回されて持ち上げられて、そのまま木の上に運ばれたらしい。あ、足が地面についてない……!!

 トカゲさんはと言えば片手で私をぶら下げて、片手で木の枝をつかんで落ちないようにしている。

 さすがトカゲ! 木登りはお得意ですか!! てかそれよりも握力とか腕力どうなってんの……。

「主さん~が~、どっかいくま~で、きゅうけ~ね~」

 森の主は知らないやつが入って来てたから追い出そうとしていただけなんだって。人見知りが激しいからちょっと気は立っていたけど、放っておけば問題ないそうだ。

 こ、こえぇ!! 南の森こえぇえ!! 恐竜に追っかけられてる気分だったよ!?

「あはは~」

 トカゲさんには恐怖で腰が抜けてるのはバレバレみたいで、私を大きな樹の枝におろしてからもしっかりと体を支えてくれるから危なくない。

 体密着してるけどね! 気にした方がいいのかな!? 走ったばっかで汗かいたからベタベタしてるかも、ごめんね!!

「ごめんね~。もうちょっと早く迎えに来れればよかった~んだけど~。つかまっちゃ~てて~ね~」

「もう二度とこんなとこ来ない」

「でも~、ゲームは命がけ、ってきかなか~った~?」

「こういう感じのは聞いてない!! どんな映画だ!!」

 ジュ○シックパークかっつぅの!!

「ま~ま~落ち着いて~」

「これが落ち着けるかぁあああ!!」

 命がけってこういうこと!? あれ!? 襲われるかもとは言われた気がするけど、これ!? 巨大トカゲに追われるの!? 森の主なの!?

「あぁぁあああぁぁああ!! もうっ!! 二度とくるかこんな森ぃぃいいいいい!!」

「あはは~」

「笑い事じゃねぇぇええええ!!」

 木の上じゃなかったら暴れたかった。

 ん? それを考えてのこの状況だったら……どうしよう、殴りたい。

「アリスって~、意外と乱暴者~? あ~、宰相様相手だと~そうなんだっけ~? 跳び蹴りって~難易度たか~いね~」

「何故それを知っている」

 隠す気はないけどさ。え、みんな知ってんの? それはそれで……。

「な~んでもい~や。……さてアリス。ここから本題です」

 話し方を改めて、少し体を離して、トカゲさんは帽子を取ってこちらに向き合う。

「よくこれたね。アリスのことだからエース・スペードが護衛に変わる直前の今がチャンスって感じで来るとは思ってたけど、ホントに来るとは」

「何? 来ない方がよかったわけ?」

 その言い方は責められてるように感じる。むっ。

「いや、そういうわけじゃないけどさ。色々あったでしょ? だから危ないとか思わなかったわけ?」

「思ったけど、エースに捕まったらもうこれないと思ったから」

「そう。それは正解だろうね。俺さんたちが企んで、でもポカしちゃったから、エース・スペードと女王様は警戒してる」

「なにそれ?」

 企み? 裏でこそこそやってて、失敗したから気づかれたってこと? だからエースたちがここに来たの?

 そんな、騎士が出てくるような企みって一体何してんだか……。

「内緒。アリス、カード出して」

 言葉の意味を考えていたら、トカゲさんが突然話を変える。

「え?」

「か・ぁ・ど」

 え、いつの間にゲーム? あれ? もう終わったの? んん?

 混乱の渦に叩き落されながら、とりあえず言われたとおりにカードを取り出す。

「俺さんのカードはこれ、ダイヤの七」

 カードの上に指を置く。

「いい? 俺さんと会ったことは内緒だよ?」

「なんで?」

「なんでも。俺さんとのゲームはクリア。ここに来て、俺さんと会うまでが、俺さんとのゲーム」

 話が早くてついていけない。

 そして、混乱中の私を、ここの住人は待ってくれない。

「でもね、俺さんのカードはまだ開けられない」

「え」

 顔をあげて、トカゲさんの顔を真正面から見ると、爬虫類特有の裂けた瞳孔が私をじっと見つめていた。

「俺さんはもともと戦えるカードじゃない。力も弱い。だからアリスの力にはなれない」

「??」

「でも、だからこそ、アリスを助ける剣になれるかもしれない。自分の身しか守ることのできないナイフだけど、見えなければラスボスを倒せる聖剣になれるかも」

「???」

「ゴミだって、貝の中に秘めれば真珠になれるから」

 くすくすと笑いながら私を通して、遠くを見つめるトカゲさん。

 私には話がさっぱり見えないし、話を整理する時間も与えられない。なんだかなー。

 そういえばいつの間にか色づいていた、ダイヤの七。

 それを軽く叩くと、一瞬だけ波紋を描くように模様が浮かび上がったような気がしたが、瞬きの間で元の何もないカードに戻った。

「俺さんに力があれば、こんな小細工しなくても済むんだけどなぁ~」

 疲れたように空を仰ぐ。

 いやいや、意味わかりませんからね?

「時が来れば勝手に開くよ。とりあえず、俺さんのカードゲットだね」

「はぁ、さいですか……」

「も~アリスったら~ノリ悪~い!!」

 あ、話し方元に戻った。

「さ~てと、俺さん~そろそろ行かないと~。騎士様たち~に、ばれたら~嫌だから~ね。それじゃ~ね~アリス~」

 そういうとトカゲさんは帽子をかぶり、私を置いて一人で木から降りてしまう。

 そこでやっと現実に戻ってくる。

「え、ちょ!? 私どうやって降りればいいの!?」

 木登りなんてできないよ!? よって降りることもできないよ!!

「飛び降りて~。ちゃんと受け止めてあげるから~」

 よし! ここでトカゲさんの体格を見てみよう!

 身長は私より大きいけど、体重はそこまで変わらないんじゃないかなっ!? 悲しいけどね!! トカゲさん薄いよ!? 華奢だよ!? 女装似合いそうだよ!?(錯乱

「いやいや、折れる!! トカゲさん折れる!!」

「アリス~、俺さんをなんだとおも~ってる?」

「無理無理!! 無理だって!!」

 トカゲさんも折れるし、私も痛いのは嫌だ!!

 だいたい高さ、少なくとも普通の家で二階くらいあると思うよ!? 結構高いよ!?

「も~、俺さんだって鍛えてる男ですよ~っと。しょうがない~な」

 トカゲさんはするりと上ってきて、私の体を抱えて、飛び降りた!

 え、ちょっと!! 心の準備的な何か!!

「ほいさ~。大丈夫でしょ~?」

 まったく衝撃感じなかった。さ、さすがトカゲ……。

 でもね、危ないよ!?

 地面におろされて、へたり込む。

「だいじょ~ぶ~?」

「ちょっと大丈夫じゃない……」

 がくぶる。

「よしよ~し。ま~、落ち着いたら早く出ていきなよ~? 気を付けてね~?」

 そのまま去って行こうとするトカゲさんの服をひっつかむ。

 おいこら置いて行こうとするな。怖いじゃないか!!

「アリス~?」

「せめて南の森出口まで送ってってよぉ~……」

「あ、アリスって意外と怖がり~?」

「恐竜みたいなのに追っかけられて平気な女子は相当珍しいと思うぅ」

「……」

 この世界でいたとしても私異世界人だから! いたわって!!

「しょ~がないな~。今回だけだよ~」

「うん」


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