次なる目標
「……ぃ」
「……っと……ぇ!?」
「「アリス!!」」
「うわぁっと!?」
どこか遠くで私を呼ぶ声がする……とか思い始めた瞬間に意識が浮上して二人のどアップが。思わずビビッて飛び起きた。
「よかったぁ。起きたぁ……!!」
「大丈夫か? 何かあったの?」
心配そうな二人が声をかけてくる。
「だ、大丈夫よ」
いや、うん。状況が整理できてないから何が大丈夫なんだかいまいちわかってないけどね!
周りを見回して、自分が大きな葉っぱの上に寝かされているのを感じる。無駄に弾力が……寝心地いいなぁおい。
体を起こして葉っぱに座る。
「もうぅ、いきなり倒れるからびっくりしちゃったよぉ?」
「寝不足か? だとしたら僕のせいだな。ごめん……」
「いやいや、ちゃんと今日はお昼まで寝てたし……寝不足ではないと思うんだけど……」
貧血とかではなさそうだし、気持ち悪いとかでもないし……なんだろう? 全く心当たりはない。
んー、でもこっちの世界来てから二、三回は意味不明の気絶をしたような……。
「あれかー、ファンタジーだから……」
何でもこれで解決な気がする。
「意味が全く分からないよ?」
「突然何ぃ?」
「気絶した理由。ファンタジーだから」
そう言い切ると二人の顔はより困惑が深くなった。
「ますます意味が……」
「倒れたときに頭打ったぁ?」
「失礼ね」
意味わかんないのは重々承知だけどそれ以外に理由が思いつかない!!
だって、気絶してる間に……何かを見たのよ。
あれはなんだろう。記憶? そう、だって知ってるはずのものだから。
でも思いつかない。それは私が記憶を失ってるから? 失ってるものを気絶したときに夢として見ているのかもしれない。
てかそもそも思い出そうとするから気絶するのかも。漫画とかでもよくあるじゃない? 無理やり思い出そうとすると頭痛が、とかそういうの。あんな感じで私は気絶してるのかも、的な。
んーーーー。よくわかんない、難しい。整理がつかない。寝起きで頭回らないってのもあるかもだけどねっ。
「アリス?」
黙って考え事をしていたら、心配そうにアズールが顔を覗き込んできた。
「あ、ごめんアオ……アズール」
「アオでもいいよ。君がくれた名前だしね」
アズールはそう言って柔らかく微笑む。
むー。いきなり成長しちゃった感じだからどう接していいかいまいちよくわからん。
「でもちゃんとした名前……」
「僕はアリスのつけてくれた名前も好きだよ?」
……。こいつはたらしかもしれない(白目
「じゃ、間を取ってアズって呼ばせてもらうわね」
「ふふっ、わかった」
そう二人で笑い合ってたら後ろから粘着質な声が聞こえてきた。
「なんだよぉー二人ともぉー仲良くしちゃってぇー。べ、別に寂しくなんてないんだからねっ!!」
「あんたのツンデレとか誰得」
考えてみよう! 身長百八十越えで、むさくるしいってわけじゃないけどがっしりとした体の、強そうな騎士様ですよ? 顔は無駄に、む・だ・に! 爽やかイケメンの部類かもしれないけど、ツンデレとかおえぇ……。
「うっわー! 酷い! すっごぉく酷い! アリス今の全部口に出してるからねぇ!?」
「あら失礼」
どうやら心の声がうっかり漏れてしまったようだ。
「確信犯だったら俺泣くよぉ!?」
「いい年した男が泣くなよ……」
今回否定はしないでおこう。うん。うっかりなのはほんとだけど。ホントダケドネ。
「僕から見れば君たちもかなり仲がよさそうに見えるけどね……」
アズがあきれ顔でツッコんでくる。確かにねー。じゃれあってるようにしか見えないよねー。
「それでぇ、話戻すけどぉ。アリス本当に大丈夫ぅ?」
話戻すってお前が言うんかい。
「大丈夫。なんかカード手に入れて気が緩んだのかもしれないわ」
「そんな感じではなかったが?」
「顔真っ青でうなされてたよぉ?」
うなされる……確かにすごく悲しい気分だったかもしれない。
違う。誰かと話してて……アレ? 誰だっけ?
「アリスぅ?」
ジャックが名前を呼ぶから今考えていたことが霧散する。
「夢思い出そうとしてただけよ。やっぱり夢ねー。思い出せないわ」
「そぉ? ならいいけどぉ……」
「今日はもう帰ったほうがいい。夜来てくれと言ってあれだけど、早く寝た方がよさそうだし」
「そんな心配しなくても大丈夫よ」
「いや、イモムシの言うとおりぃ! 今日はもう帰ろう、アリスぅ?」
二人してそう言ってくるから、もう頷くしかないじゃない。
「……分かったわよ」
まぁ、カードももらったし、わざわざここにいる理由もないんだけどさ。
立ち上がって、ふらつかないのを確認。よし、問題ない。
「アリス、本当にありがとう。アリスのおかげで僕は救われた」
アズが胸に手を当てて、お辞儀をする。
「ちょっと、大げさすぎない!? 顔あげてよ!」
なんかハズイし。救うって……。
アズは苦笑いを顔に浮かべて、姿勢を普通に戻した。
「大げさなものか。足りないくらいだよ」
「わ、私だってカードもらったし……」
「それは当然の結果だよぉ?」
ジャックまで参戦してきやがった。
「ていうかぁ、カード渡す時点で命預けてるんだからぁ、それ以上の言葉もないんじゃなぁい?」
……ごもっとも。
「まぁ、ハートの騎士の言うとおりかもね」
「命とか、重いなぁ……」
どうしたらいいかいまいちよくわかんないわ。
「カードはなくさなければいいってだけだよぉ」
「後は軽く考えてくれていいよ。アリスが困ったら何でも言ってくれ。力になるよ」
「~~~……」
それが困るんだよねーって……いいか、もうなんか疲れた。軽く考えよう。らっきー(棒読み
「じゃぁ、帰ろうかぁ」
「またいつでも来てくれ、アリス。僕はどっちにしろここから離れられない運命らしいから」
「え?」
聞いてない。まだ縛られてるの……?
「代償でね。だから、暇なときにでも話に来てくれるとうれしいな」
悲しそうでもなく、ただ少し残念そうに、アズはそう言って笑った。
「……わかったわ。おいしいお菓子でもお土産に持ってくるわね」
「それは楽しみだな」
「俺も俺もぉ!!」
「騎士様は仕事じゃないのか?」
「はうっ!!」
「南の騒動は一応おさまったようだぞ? アリス付きも今日までだな」
「え、おさまったの?」
ここにいるアズがどうやって知ったんだよ、とか、なにそれ聞いてない、とかいろいろ突っこみたいけど、それより前に。
「うわぁぁあああん!! 書類整理地獄が俺を待っているぅうう!!」
この絶叫っぷりね。これにはドン引きだわ。
え、仕事してなかったの?
「アリスにとってはまたうるさいスペードの騎士様がお付で面倒そうだな」
「別に……」
たしかにオカンか! って言いたくなる時もあるけど、一応護衛に関しては話し合って解決したはずだし。問題ないはず!
でも問題解決してすぐだからまた過保護になってたりしないよね!? 考えても仕方なさそうね。
「さて、そろそろ行くわね。また会いましょう」
「うん、またね」
「ほら、行くわよジャック!!」
「うぅ……」
さっと別れを済ませて子供っぽい騎士様を引っ張っていく。
まったく……仕事終わったんならエースいるかしら? お疲れのとこ悪いけど、引き渡しにいきましょ。
部屋にかえって、寝る少し前。本日の成果を確認する。
あ、ジャックはエースに引き渡す前になんだかんだで逃げられました。
成果は二つ。アズのカードゲット。アズの森解放。
ふむふむ。いい感じじゃない?
よし、次の目標は……。
『今度は一人で来てね。誰にも知らせないで』
うん、はっきり言って忘れかけてたけど、トカゲさん。
今んとこミッションがあるのはトカゲさんだけ。手がかりある方から行くのが普通だよね。ゲームとしては。
フラグ立てないとミッションでないし。グレイ辺りはフラグの場所もわかんないし。ラビもジャックもトゥイードルも。誰かすらわからないカードもあるし。
だとしたらやっぱりトカゲさんからかな。
南の森の騒動が終わって、エースがまた護衛になる。ってことは……。
「交代する明日がチャンス?」
エースの監視は厳しそうだし、南に行くとばれたら絶対につかまる。それは避けないと。
あー、でも、これでジャックに迷惑かかんないよね? また南関係で、だったら、次はないって言ってたし……。
「んー、どうしようかな……」
エースに捕まる前にいきたい。交代するときなら一番隙がありそう。けどジャックが心配。
ついでにいえば、騒動が収まったば・か・り、なんだからまだ若干の危険はありそう。
「んーーーーーー」
護衛の交代はもう終わったものとしてもいい?
たぶん、元の世界よりはこっちの方が体は軽い。動きもいい。何かあったとしたら逃げるくらいは何とかなりそう?
「……」
行くしかない、か……。
今日までの成果。
エースのカード、スペードのA解放。
アズのカード、クラブの十解放。
アズの森解放。
明日の目標。
「南の森に行って、トカゲさんに会う。……会えるわよね? 森の中で、一人を、探し……あてられる気がしないけど、やるしかない!! よしっ! おやすみ!!」




