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迷夢の国のアリス  作者: 影宮ルキ
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キオクのカケラ②

 少女が泣いている。何かを抱いて、泣いている。

 知ってる。抱いているのは鳥だ。大事に飼っていた、大好きなペット。確か羽は青くて、小さな鳥だった。

 少女がいるのは自分の家の庭だ。そこに穴を掘って、鳥を埋めてあげようとして、それができなくて、泣いている。

 そこに泣いている少女より少し年上の少女がやってきた。

「どうしたの?」

 泣いている少女に問いかける声を確かに彼女は聞いた。

「お姉ちゃん……」

 そうだ、年上の少女は泣いている少女の姉だ。知っている。でもどうしてだろうか。彼女は思い出せなかった。

「ウミちゃんが、ウミちゃんがねぇ……」

「そうねぇ、ウミちゃん、もう死んじゃったのね。お別れしないと……」

「でも、土の中は暗いよ? 一人で寂しいよぉ」

「でもこのままじゃだめよ。ちゃんとお別れしないと、ウミちゃんもかわいそうよ」

 死んだ体は朽ちる定め。そんなのはまだ少女には理解できないだろう。死というのもわかっているのだろうか。姉もわかっているのかどうか。

 それでも姉はお別れを強調して何度も言った。

 ――――そう、お別れしないと。ちゃんとお別れしないとダメなのよ?

「あぁ、そうだわ! じゃあ、こうしましょう。毎日お花もって、ウミちゃんに会いに行くのよ。そしたらウミちゃんも寂しくないわ」

「ほんと……?」

「えぇ、そうよ。だから、ちゃんとお別れしましょうね」

「うん……」

 いつかは忘れて、涙を流すことも、思い出すこともしなくなるのだろう。それで本当のお別れ。傷は時間が癒してくれる。風化させて、麻痺させて、いい思い出に形を変えて……。

 ――――だから早く忘れて?

 無理。

 ――――思い出さないで?

 無理。

 ――――私はあなたに笑っていてほしいのよ。

 無理。

 ――――もう、あなたが泣くのは見たくないわ。

 やだ。忘れたくない。消えないで。いかないで。傍にいて。

 ――――……。

 思い出したい。

 ――――忘れて頂戴。

 ねぇ、あなたはだあれ?

 ――――封じ込めたのはあなたでしょう。

 どうすればいいの?

 ――――決めるのはあなたよ。

 じゃあ……。

 ――――目を閉じて、耳をふさいで、うずくまったのはあなた。思い出さない方がいい、思い出したいって思うのもあなた。

 もうやだ、よくわかんない。

 ――――楽しかった?

 うん。みんなやさしいよ。

 ――――じゃあそのままでいれば?

 だめ。

 ――――この前とは逆ね。

 そうだね。

 ――――目をそらす?

 だめだ。頑張らないと。でも、痛い。

 ――――傷つけてるのはあなた。

 ……。

 ――――まだまだ混乱中ね。

 うん。

 ――――頑張りなさい。

 うん、アオは、強かったから。

 ――――元気をもらったのね。

 そう、だね。負けなかった。自分で、アオは何とかしたの。だから、ね……。

 少女はいつの間にか決心をしたようだった。

 鳥を穴の中に横たえて、冷たい土をかぶせていった。

「また、また会いに来るからね、ウミちゃん……」

「大丈夫、大丈夫よ。ウミちゃんも会いに来るのまってるからね」

「うん……」

 ……。

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