お姉さんとこの世界
姉さんと仲直りできた。ちょっとまだ自分を許せないところもあるけれど、それを飲み込んで、姉さんと仲直り。ずっと、夢だった、姉さんとの仲直り。
夢だけど、これは夢じゃない。この夢は現実。だから、だから……あぁ、言葉が出ない!
「アリス、カード、開けましょう。ごめんなさいね、急に。でもたぶん時間ないのよ。あなたともっともっと話したいけど、それは全部終わってからにしましょう」
姉さんが地面に降り立って、改まってそう言ってきた。
「時間?」
「そうよ、時間。……あってないようなものだけど、もう物語が動き始めてるから……」
「よくわからないけど、姉さんがそう言うなら……」
大丈夫。もう仲直りした。この世界に戻ってきた。一度失った時間だから惜しくなっちゃうけど、大丈夫。また今度がある。また次がある。姉さんは帰ってきた。
だから安心して、《今》を違うことに使える。
「お姉ちゃんがいいんだけどなぁ。さっきは呼んでくれたのに……」
姉さんは自分の呼ばれ方に不満そう。でも、うん……ちょっとしみついてきちゃったし、気分的にまだ完全に自分を許せないからな……。
ここは話題転換が最善ね!
「あ、姉さん、やっぱり役付になったの!?」
無理やりだったけど、実際気になってたからいいでしょ。
姉さんの状況は、ちょっとよくわからないけど、謎の卵から生まれたわけだし……。あの卵アイテム扱いだったって聞いたんだけど? てかそもそもあの卵何? ワンダーランド?
「ええ。そうよ。……でも、私なんなのかしらね? ハンプティ・ダンプティのカードの位置なのだけれど、私もう卵からかえっちゃったわよ?」
「よね……?」
少なくとも元と同じカードには見えないなぁ。アイテムじゃないのは確かだよね……?
カードをとりあえず出してみるけど、特に変化があるようには見えない。ただの色づいたカード。うーん?
「あぁ、じゃあ、こうしましょう。今から私は《メアリー・アン》。白兎がアリスと間違えた召使よ」
「姉さんが召使……」
それは気分がよろしくない。
「前回のアリスなわけだし、アリスと間違えるくらいそっくりの言い換えみたいでしょう?」
「いや、実際アリスだったわけじゃない?」
「細かいことは気にしない! ふふっ、これで私の夢がかなうわ。ねぇ、いいでしょう? 私のアリス。名前交換しましょうよ」
「交換??」
姉さんが嬉しそうに笑いかけてくれるからいっか、という気持ちになるけど、ちょっと聞き流せない単語があったなぁ?
交換って何? メアリー・アン……私が? アリスと交換しましょうってことだから、そうなるはずよね? うん??
「あら? あぁ、記憶がないんだっけ? 大丈夫よ。そのうち思い出すわ。……もしかしたら私のカードにその記憶があるかもしれないわね」
「え?」
カードを開けたら記憶が戻るのも知ってる? でも、なんでそんな予知ができるの? 姉さんは何を知ってるの?
あー、頭が追い付かないのよ。
「ふふっ、じゃあ、開けましょうか。私のカードはクラブの8よ」
姉さんの声に促されて、カードを一枚選び出す。
姉さんがチョンとつつくと、青い羽をもった姉さんが卵から顔を出したミニキャラの図案が浮かび上がった。
それと同時にくらっとする。
「おやすみなさいね、私のアリス。すぐ人を呼ぶから、起きた時は皆と会えると思うわ」
「うん……」
地面に倒れて、瞼が下がっていく。
「ゆっくり、思い出してね」
最後にお姉ちゃんが頭を撫でてくれた……。




