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翌梨リサは欲深い  作者: 夏蹴礼
第二章 生徒会を潰そう!
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●生徒会を説得しよう

「早く教えてください!」

「待てっ! 大事なとこだから!」

 岬がスパッツを履く瞬間。ここは見逃せない。


 しかし、リサが食い付いて来た。

 興奮しているようで、グイグイと体を密着させてくる。

「ちょ、ちょっと離れろ!」


「先輩が教えてくれるまで離れません!」

『当たっている』のではなく『当てている』と言わんばかりの密着率。

 リサの立派な下半身は語るまでもなく、こいつは上半身も立派に成長している。


「簡単なことだ! 生徒会を説き伏せればいい!」

 無理やりリサの体を離すと、名残惜しい触感が体中に残った。

「履けましたぁ」

 無情にも、岬はスパッツを履き終えていた。


「なんてこった……」

「早く生徒会室へ行きましょう!」

 急かしてくるリサに対して、やる気をなくした俺。

「やる気をなくした」


「ど、どうしようリサちゃん……やる気を落し物コーナーに探しに行こうかぁ?」

「世話の焼ける先輩ですね。これでどうですか?」

「!」

 リサが中腰になり、スパッツを脱ぐ。そして、そのまま履く。


「まだ足りませんか?」

「天才かよ、翌梨。スパッツ着脱無限ループ! 永久機関の完成だなっ!」

 勢いよく立ち上がる。


「たまにはカッコいい先輩の姿、見せて下さいよ」

「任せておけ! いや~、絶景かな! 両手にスパッツとは、まさにこのことだね!」

 資料室から生徒会室までの間、俺は二人を前に歩かせた。


 リサのバランスが取れた完璧に近いスパッツ姿。

 岬の男性特有の筋肉質で美しいスパッツ姿。

 どちらも甲乙つけがたい。


「リサちゃん……本当に大丈夫ぅ?」

「大丈夫、大丈夫。先輩はやる時はやる人で、スパッツに対して、すごく真摯な人だから」

「逆に不安だよぉ~」

「さぁ、着きましたよ。それではお手並み拝見といきましょうか」


 もう着いたのか。楽しい時間はあっという間だ。まぁ、いい。

「帰りもあることだし、さっさと用件済ませて、スパッツ鑑賞会の続きをしよう!」


 生徒会室に通され、司と繭に対面し、問い詰める。

「学校の規則、モラルを守るためだ」

 司は「何、当たり前のこと聞いて来るの? バカなの? ああ、バカだったよね」とでも言いたそうな顔で俺を見てくる。


「何、当たり前のこと聞いて来るの? バカなの? ああ、バカだったよね」

 一字一句違わないまま、心の声を言われてしまった。

「だけどさ~、校則に従えば……」


「校則がすべてじゃない。どこかの国の裁判じゃあるまいし、いちいちこと細かく記載するはずがない。世の中には法律以前に『常識』と言う名の原則があるんだよ」


「それはわかる。だけど日向寺が誰に迷惑をかけた? トイレはもちろん男子トイレ。更衣室だって男子と一緒。髪も化粧、小物だって他の女子生徒と同じくらいだ。まぁ、校則ギリギリな部分もあるのは認めるけどさ」


「現段階では、問題は起こっていない。だが、これからミサっちを真似て、校則の穴を突くような生徒が増えても、全く不思議じゃない。いや、むしろ『日向寺君が許されるなら、私たちだって自由にやってやる』って生徒が出るのは必然だ。みんなそれなりに我慢しているんだ」


 岬がしょんぼりしている。

 自分一人が我慢すれば、すべて解決する。

 そう言われているので、落ち込む気持ちはわかる。


「普通になれだなんて言わない。だけど、悲しいことにこの世界は普通が当たり前で、普通じゃないと異常者として叩かれる。ミサっちがこのまま進めば、いつの日か叩かれる日が来るかもしれない。それはミサっちが一番理解しているんじゃないのか?」

 キツイことを言っているようだが、司からすれば岬を心配しているのだ。


「それはわかる。事実、俺が行き着いた先は破滅だった。だけど、俺と日向寺は違う。俺は俺、日向寺は日向寺だ。違う未来へ行ける可能性だってある」

「なら、近々学校側から正式に指令が下るだろう。これで終わりなら、帰って……」


「なるほど……組織を運営する生徒会長としては模範的な回答だ」

「嫌な言い方だな。何か反論あるの?」

「司は学校の味方じゃなくて、生徒の味方のはずだろう?」

 司の表情が曇る。


「生徒会長ではなく、生徒としての司の意見を聞きたい」

「言いにくいけど……そもそも、男子が女子の恰好をするなんておかしいだろ?」

「それのどこがおかしいんだ?」

「いや……だって……」


「男が可愛い恰好をしたい? 素晴らしいじゃないか! もしも世界が日向寺を否定するなら、俺は世界のすべてを否定して、日向寺を肯定する!」

「せ、先輩ぃ~」


「司だって本当はそうなんだろ? だけど、生徒を統括する生徒会長の立場としては、本音を語れない」

「そ、それは……」

「大丈夫、司の本当の気持ちは俺がわかってる。だから、ここはお互いが幸せになれる選択肢を選ぼう」


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