1.俺の人生は不幸だった
新連載です…
チートなジョブで転移無双より早く書いていて途中になってた作品です
キリのいい所まで整理出来たので投稿します
短いです
俺の人生は不幸の連続だった。
小さな頃にに両親が離婚、弟と母親に引き取られたが専業主婦だった母親はまともな働き口もなく、スーパーのレジ打ちなどのパートを掛け持ちした。
それでも家は貧しかった。豊かな、そして食うに困らない人が多い日本で、その食うに困る側の人間だったのだ。
今でこそ子供食堂なんてあるが、もちろん俺の幼少期にはそんなものもなく。
高卒学歴の母親には知識もなく、生活保護なんて言葉も一般的ではなかった。
さらにいえば、母子家庭向けの支援なども申請をすれば児童福祉手当なるそれなりに手厚い支援があるのだが。
役所仕事の所以で、申請主義だ。
相談に行く頭もなく、教えてくれる知り合いもいなかった我が家は、申請したら受けられた可能性のある支援を貰えず貧困に喘いでいた。
なんとか引き取った子供だけは育てようと母親なりに必死に頑張ったのだろう。
しかし、無知な高卒の既婚女性、若くもないくだびれた女性に支援の手を差し伸べる人などおらず。
結果、母親は例にもれず体調を崩し、病院にかかる金も時間もなくあっけなく死んだ。
その時の心情は悲しさよりもこれからどう生きて行けばいいのか、という気持ちが強かったと記憶している。
そして2歳年下の弟と2人で施設に入った。
日本にもあったんだな、施設て。そんなことを思った記憶がある。
俺は父親似で弟は母親似だ。弟はくっきり二重の大きな目をした可愛らしい顔立ちだった。
十分に食べられなくてやせ細ってはいたものの、可愛さは損なわれていなかった。
そしてまだ物心がつくかつかないか、という5才という年齢。
それもあってあっさりと養父母が決まった。
連れていかれるとき、その小さな手を伸ばして
「ハル兄!」
と泣きながら言った顔が忘れられない。
顔をくしゃくしゃにして必死に伸ばしたその手を、俺は握ってやれなかった。
俺に力があれば、ナツキを守れるだけの金があれば…。
俺はこぶしを握り締めて耐えた。ナツキ、いつか迎えに行くから。
と言ってもたかだか7歳の子供に出来ることなどなかった。
学校では親無しといじめられる毎日。
それでもナツキの為に歯をくいしばって耐えた。
必死に勉強だけは頑張って、図書館で勉強をして高校生になり、有名な国立大学に進学した。
俺は理不尽な人生を取り戻すために手に職をつけることが出来る学部を選んだ。
何かあっても暮らせるように、ナツキを迎えにいけるように。
もっともナツキの居場所は分からない。それでも養父母の苗字は覚えている。とはいえ今ほどネットが発達していなかったからフルネームだけでは探さなかったのだが。
高校卒業と同時に育った施設は出なければならなかったので、大学の寮に入り奨学金を貰いながらアルバイトをして生活をしていた。
必修の2年が過ぎ、専攻が決まった大学3年の春。俺は弟ナツキと再会を果たした。
なんと、ナツキが俺を探し出したのだ。正確には施設の名前を覚えていて、自由に動けるようになる大学生まで待ってたのだとか。
俺が入学式した大学を目指して、そして同じ大学にナツキが無事に入学したのだ。
「ハル兄さん!やっと会えた」
あの小さくて可愛いナツキは俺と同じ目線の立派な男性になっていた。
一瞬、分からなかった。でも俺をハル兄さんと呼ぶのはナツキだけだ。
僅かに面影を残したナツキを見て、懐かしさで目が潤みそうになるのを必死にこらえる。
探してくれてたなんて、嬉しすぎるだろ。
「ナツキ、大きく…なったな」
「13年も経てばね!ハル兄さん…ずっと会いたかったよ」
同じく目を潤ませてそう言って耐えるように目をつぶってからぶつかるように抱き着いてきた。
その体はもう幼児のぷくぷくした温かい体ではなくて、しっかりした大人だった。
嬉しかった。立派に成長したナツキを見れて。やりきったような満足感を持った。持ってしまった。
思えばそれがフラグだったのかもしれない。
その日は一緒に夕飯を食べようと、並んで歩いていた大学の帰り道。
ナツキを見ながら話をしていたその視界に1台のトラックを捉えた。
そのトラックの運転手が居眠りをしていたのが、なぜだかハッキリと見えた。
まるで吸い寄せられるようにナツキの背後に迫るのを、コマ送りのように見た俺はとっさにナツキをこの腕に抱え込んだ。付き飛ばしてもトラックからは逃げられない。
だから自分の胸にナツキの頭をしっかりを抱え込んだ。兄ちゃんが守るから…守ってやれなかった時間を埋め合わせて俺に守らせてくれ!
しっかりを弟の体を抱え込んだ直後に背中に強い衝撃があり、その後何度か叩きつけられるような衝撃があった。
自分の中から何かが流れ出すのを感じる。あぁ、これは命か魂か。
腕の中で動くナツキを感じた。良かった生きている。
兄ちゃん、今度はお前を守れたかな?ナツキ…でもごめんな。夕食を食べる約束は守れなかった。
これからはそばで守ってやれると思ったのにな、ごめんなナツキ。
どうかお前はその生を全うしてくれ。天国、いや地獄かもしれないが兄ちゃんはずっとお前のことを想っているからな。
薄れ行く意識の中でハル兄さん!行かないで、一人にしないで…そんな声が聞こえた気がした。
だから俺は願った。神様がいるのか知らないから、神様でも誰でもいい。どうかナツキを見守らせてくれと。
大切な弟なんだ…誰でもいいからどうかナツキの側に…俺を。
朦朧とした意識の中で何かうっすらを声が聞こえた。
(…だろう)(いやしかし…が)(ならば。)(なるほど…か)
なんだ?俺は確かに死んだはずだ。自我はあるが体の感覚がない、もちろん痛みもだ。
そのままふわふわと漂うような心地がして、突然視界に緑と茶色が入ってきた。
えっ、緑と茶色…?
えっと、考える間もなく
「ぐわぁ」
威嚇する声が聞こえた。えっ?声がした方を見るとそこには豚とイノシシを足して2で割って、さらに熊を足したような生物が立っていた。
そう、立っていた。動物は4足歩行が多いのに、明らかにおかしい。なんで立ってる?
ほけっとしていたらその手が伸びて来た。
後ろに跳ぶ、そして頭で考える危機感よりも体が先に反応して一目散に逃げだした。
ヤバい、追って来る。どこに逃げたら?考えるより体は前へ前へと進んでいく。そして見えた!
その小さな穴に飛び込んだ。
奥へ進んでいく。少し広くなった空間で力を抜く。外からはぐわぁとかぐるぅとか聞こえたが縮こまって隅で怯えているとやがて静かになった。
助かった、のか…ふぅ。鼻をひくつかせながらしっぽも連動してたんたん揺れる。
ほわぁ、巣穴はやっぱり落ち着くなぁ…まったり。
そこでハタと気が付く。鼻をひくつかせる?しっぽを揺らす?巣穴…でまったり?
そういえば追われて飛び込んだのはほんの小さな穴だった。えっ?
うん、落ち着こう。まずは周りを見回して…茶色いな、うん。穴の中だ。
後ろを振り返ると通ってきた道が見える。遠くに小さく見えるのは外へ続く穴。
そして手を見る、手…白くてまるんとしている。そしてふんわりとした密度の濃い毛に覆われている。
毛?まるん?
うん、落ち着こう。どうやら手ではなく前脚のようだ。
後ろを振り返る。目に入るのは丸くて白い背中とわずかに見える後ろ脚、そして真ん丸なタンタン揺れるしっぽ、ひくひくする鼻。後ろ足で立って前脚で顔を洗うようなしぐさをする。
いや、正確にはしようと思った訳ではない。なんとなく立ってみたらそういう動作を体がしたのだ。
きっとこれはうさぎとしての本能だ。
行きつきたくなかった結論に達した。いや、達していたのだが拒絶していたのだろう。
まさか自分が白いもふもふなうさぎになっているなんて。
転移?いやさすがにこの巣穴を見る限りはないな。俺の中にはうさぎとして生きた記憶もあるのだから。
となると転生か?うさぎに転生、そしてなぜだかさっき記憶を取り戻した?思い出した?
獲物認定されて危機感からなのか…思い出してボケっとしていたから獲物認定されたのか。
何にしろ、せっかく思い出して即ジ・エンドとならなくて良かった。危なかった。
今のうさ生が終わる所だった。いや、どうなんだ?うさぎとして生きていく覚悟などないのだが。
そして唐突にうんこを出したくなった。ヤバい、どうしよう…俺の人としての、いや今はうさぎか。うさぎとしての尊厳が。
いやそもそもうさぎに尊厳とかあるのか?目下大混乱中だ。でもやっぱり人としての記憶がある俺としてはここでふんばってコロンと出すのは非常にいたたまれない。
なんとかしたい、でも生理的な欲求は俺に迫ってくる。我慢できるのか?と。
でもやっぱり嫌だ。なんとかする方法は…散らす方法はないか…?
前脚でお腹を押さえて踏ん張る。
…あれ?あの絶大だった欲求が消えた。
そのままの姿勢で後ろ足を開いて股を除き込む。柔らかそうな白い毛に覆われた小さな鈴みたいな丸が2個ある。
うん、雄の象徴があるね!でも見たいのはそれじゃない。
もっと除き込もうとしてバランスを崩してコテンと転がった。見事に背中をついて仰向けになっている。
そのままの丸い鈴みたいなのの奥を見る。うん、あったね。排泄器官が。
ということは、どういうことだ?仰向けで股を覗き込む白いうさぎ…シュールだ。起き上がろう。
背中に土がついてしまった。白いもふもふな毛に茶色い土。嫌だ!体を震わせて土を落とす。
ふぅ、どういうことだ?
前脚をじっと見る。そこにはもふもふな毛が足裏もあった。真っ白で、可愛らしい色だ。
毛の中に入り込んだ背中の土を落としたいけど前脚が届かない。どうにかしたい…。振り返って舐めるのも憚られる。
すると一陣の風が通り抜けた。ん?何だ…?でも背中の感覚で土の汚れが落ちたことが分かった。
助かった。元人間としてはやっぱり汚いのは困る。せっかくの白い毛皮だ。
なおももさもさの足裏を眺める。
すると頭に情報が入ってきた!なんだこれは?
白魔うさぎ
年齢 1か月
レベル 1
体力 30
魔力 100
知力 500
魔法 浄化魔法レベル1 風魔法レベル1
うぉ、なんだこれ?年齢1か月…おれのうさ生か?まだベビーじゃないか。どうりでもふもふの産毛だよ。
レベル1…まだベビちゃんだから仕方ない。多分。
体力の30は心許ない。魔力の100はもしや軽く魔法が仕えるレベルではないだろうか。知力の500は人間由来の知識だろう。
そして魔法、浄化魔法と風魔法。さっきゆるく感じたの風は魔法なのか?背中の汚れが落ちたのは浄化?
詠唱とか念じたりもしていない。ただ背中が汚れて気持ち悪いのでなんとかしたかっただけだ。
ん、待て…浄化って。もしかして体内を浄化したのか?風魔法が後だ。順番としてはもよおした、散った。
謎解きの為に股を覗いてひっくり返った。汚れた、きれいになった。こっちが風魔法なのか!もよおしたのが消えたのはきっと浄化だろう。
ってことは願いというよりは切望?すれば魔法が使えるようになる?
もふもふな白うさぎの赤ちゃんである俺。もしやチートか?
そういえば白うさぎではなく白魔うさぎだった。何だそれ?もはや獣ですらなく魔物なのか?
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