第19話 初めてのゴブリン
「GooBw!」
僚友の惨死に、慌てふためくゴブリン。武器を構える暇も与えないニック。
「せぇいぃっ!」
3匹目の歩哨を、長剣で袈裟切りにしたニック。その隙に、中へと突入するラージャー。
まさに今、柵を外して、綱を引き、牛を連れ出そうとしている3匹のゴブリン。
その様子を、監督するゴブリン・シャーマン。目が合った。
「GoWBwwww!」
ゴブリン・シャーマンの指示で、作業を中断し、慌てて武器を構えようとするゴブリン共。
「まず、1匹!」
武器を構える最中の、ゴブリンを1匹、戦斧の錆にしたラージャー。
そこに、地面に落とされた松明を、拾って左手に持って突入したニック。
「柵が多くて狭いし、飼い葉も、沢山ある。慎重に行かないとな。」
「もう、1匹!」
更に、ゴブリンを1匹、受けた棍棒諸共、袈裟切りにしたラージャー。
「GooWwBw!」
ヤケを起こしたのか、手にした手斧を投擲したゴブリン。それは……
「ニック!」
『麦踏』が、発動しました。……『回避』を獲得しました。
「大丈夫、後ろに牛は、いない事は確認済み。なら、是非に及ばず。」
身を屈めて、投擲された手斧を、やり過ごしたニック。
「更に、1匹!」
慌てて予備武器……棍棒を構える暇も与えず、ゴブリンを、叩っ斬るラージャー。
だが、これまでのゴブリン共は、無駄死にでは無かった。
ゴブリン・シャーマンが、『魔法』を発動させるまでの、貴重な時間を稼いでいたのだ。
「……『集団催眠』……。」
『麦踏』が、発動しました。……『魔法耐性』を獲得しました。
「う雄ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! こんなもん効かねぇっての!」
そう叫ぶと、驚愕の貌をしたゴブリン・シャーマンを、叩っ斬ったラージャー。
「大丈夫か! ニック!」
ニックの基へと駆け寄るラージャー。
「大丈夫です。ラージャーさん。……今のが、『魔法』なんですね。きっと、青年団も……。」
「同感だ。アタイだって、学習したんだぜ。取っといてよかった『魔法耐性』ってな。ニック。」
「確かに、一山越えました。が、まだ終わりじゃないですよ。ラージャーさん。」
「分かってるっての。1匹残らず、駆除してやらぁ。な、ニック。」
今度は、馬舎に向かった3匹を、迎え撃つ準備をするニックと、ラージャーだった。
* * *
次回予告
第20話 初めての博打
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