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☆おまけ☆その2☆

思いついたのでもうひとつ。

テンプレですが(笑)

 

「「「 さぶ~っ!! 」」」


 恒例の新春練習試合の為、年明け4日から早朝稽古が始まる。

 新学期に向けて体内時計を通常にするのも兼ねているらしいが、体の芯まで冷える朝の道場はただの極寒地獄である。


 通常の部活であれば先に後輩に暖房をつけさせるのだが、早朝稽古で道場の鍵を持つのは部長か副部長である。柔道部との合同使用の道場には校内を経由せずに校門から直行できるし、通常なら授業でも使う場所なので、校舎側からの出入口は放課後の部活動前も特に施錠はされていない。


 ただし早朝稽古では、用務員さんに校門を開けてもらわなければセ〇ムがやって来るのでそれも待たなければならない。早朝稽古で用務員さんの忙しさを知ったので、事務室から一番遠い道場の鍵はこちらで預からせてもらうのだ。朝の弱い顧問に代わり、部長がその責任を持つ。


 そういう理由で後輩は先輩よりも先に道場で準備をするという剣道部代々の規則は冬の早朝稽古に限り、先輩方が引退してから俺らで終わらせた。

 待ってる時間が無駄だし必ず誰かは風邪をひく。馬鹿馬鹿しい。ちなみに女子部員はいない。男臭い部活である。


 


「あれ」


 早朝から昼までの部活なので朝食用に弁当を持って来るのだが、通学カバンにしているリュックには入ってなかった。

 慌ててリュックをひっくり返しても何かのカスしか出てこない。


「……マジか……」


 学校の購買は新学期まで休業だし、コンビニに行くにも財布には152円しか入ってなかった。152円て……

 さて誰に借りようかと顔を上げると、道場の引き戸がそっと開いたのが見えた。


「失礼しまーす……」


 そこから顔を覗かせたのは防寒スタイルの月子だった。ボンボンが付いたニット帽にマフラーもぐるぐる巻いて、淡いピンクのロングニットコートから黒タイツの細い足が。


「月子!」


 思わず大きな声を出してしまったが、月子が俺を見つけて手を振った。その反対の手には弁当の包み。おお!

 すぐさま月子のもとへ。


「持って来てくれたんだ、ありがとう!」


 袴をわさわさとさせながら走って行くと、月子が微笑みながら口元を隠していたマフラーをちょっと下げた。


「テーブルに置いてあるんだもん、びっくりしちゃった。お父さんとお母さんが仕事に行くのに乗せてもらって来たの。帰りは孝汰と一緒に帰っておいでって言われたんだけど、私、見学しててもいいのかな?」


 道場の外は寒いからと月子を中に入れる。


「家族の見学は大丈夫だよ。一緒に帰ろう。ごめんな、弁当忘れて」


「ううん。お弁当の時間に間に合って良かった」


 ほわりと笑う月子が今日も可愛い……はっ!

 背後に気配を感じて振り返ると、弁当を手に持ったままの部員たちが集まっていた。うお。


「誰?」「誰!」「誰!」「美少女!」「可愛い!」「超可愛い!!」「激カワ!!」「ロリコン!」


 力強くぼそぼそ言う男子恐い!ってロリコン言ったの誰だオイッ!?


「食事中にすみません。このまま部活を見学してもよろしいでしょうか?」


 帽子を取ってお辞儀をした月子のウィッグは明るい茶髪のセミロング。色白を誤魔化せるらしい。目はそのまま。

 だがもう誰も月子の容姿を気にしていない。

 ふっ……可愛いかろう!俺の嫁!


 全員がどこぞの芸人のように「どうぞどうぞ」と月子を暖房の前の冬の特等席に誘導する。戸惑う月子がこっちを見たので頷いた。小さくホッとした月子は皆に向かってまた丁寧に頭を下げた。


「ありがとうございます。失礼します」


 そしてちょこんと正座をする。

 皆もまたそれぞれに座るが、何で俺が一番月子から遠いんだよ!?


「孝汰、どこでこんな美少女と知り合った?」


 部長の質問にザッと皆がこっちを向く。恐っ!


「父ちゃんの友達の娘で、日本に住むのに俺ん家に居候してるんだ」


 これが無難な理由だろうと家族会議で決定した。母親は柔道界隈で有名人だが父親はそうではない。しかしバックパッカーをしてた時があり、意外と海外にも友達がいる。月子はロシアから来たハーフという事になった。ちなみに月子は地球上の言語は全部マスターしてるそうだ。……能力格差。


「ひとつ屋根の下!?」「なんという夢!」「くそウラヤマ!」


 さすがに学校に通うとかは無理だろう。理由付けとしての最終手札は『婚約者』だが、部員にはそこまで言わなくてもいいだろう。

 と月子とアイコンタクトしたのを、部長が目敏く見つけやがった。


「お、なんか通じあってる。仲良いッスね」


 よりにもよって月子に確認しやがった。こいつは彼女がいるから女子に変に構えたりしない。あーあ、部活でもいじられるのか。まあいいけど。


「はい!孝汰のこと大好きなので!」


 月子の爆弾に一人噎せる俺。そしてピキンと冷える道場。一人肩を震わす部長。


「……さーて、練習再開するぞー」「「「「 おおーす 」」」」


 皆の平坦な声が恐いんですけど! 俺まだ弁当途中なんですけど!? 腕を掴むな! 引き摺るなぁぁあ! 部長!いつまでも笑ってんじゃねぇぇっ!





 そうして。

 しごきという名の部活が終わると。


「道着姿カッコイイ……」


 と、うっとりした月子が、その後も剣道部のアイドルとなったのは言うまでもない。


 俺に向かって言ったんだよ!お前らに言ってねぇよ!


 それと!俺の嫁だからなっ!!









お読みいただき、ありがとうございましたo(^o^)o



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