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プロローグ

 神様から見える世界って、こんな感じなのかも知れないな。

 こんな壮大な妄想を膨らませているが、今自分の目の前にあるのは、ランドセルに入りそうな大きさのモニターだ。


 ランドセルといえば、自分達が使っているものは、父さん達が小学生だった頃のものよりも少し大きいらしい。

 爺ちゃん達が通学で使っていたのは、ランドセルですら無かったという。

 爺ちゃんに見せてもらった古い写真では、子どもが手さげカバンを持っていた。

 入学式なのか何なのか、家族そろった集合写真だった。

 こんなカバンじゃ、教科書が入りきらないんじゃないかと、そう思った記憶がある。

 

 モニターを見ながら、科学の進歩ってすげーなーと何となく思っていたら、カバンの事を考えていた。

 小さなアパートの一部屋にある小さなモニターと、そこに広がる無限大の世界が、大きくなっていったランドセルと被ったのだろうか。

 自分でもよくわからない。


「一体俺は朝から何を考えてるんだ?」

 藤田修平は、パソコンをしながらランドセルのことを考えている自分がおかしく思えていた。

 修平は、パソコンのモニターを通して、地球を見下ろしている。


 グーグル・アース

 これ自体は知っていた。

 社会の授業で先生が使っていたのだ。

 自分たちの住んでいる町と、日本、そして世界・・・。

 あれこれ動かして、地球ってでかいんだな、世界って広いんだなと、そう思った記憶がある。


 丁度、自分が発表の順番だったので、クラスを代表して、自分達の住む町をスタートに、ブラジルまで画面を移動させた。

 名前は忘れたが、人工都市とかいうやつで、街が飛行機だかの形をしていて、空から見下ろすと本当にそう見えた。

 たしか、碁盤の目みたいな都がどうとかいう話に繋がっていったんだ。

 先生には申し訳ないが、既に記憶はおぼろげだ。


 でも、その時に先生がしてくれた話は覚えている。

 世の中には、もう作られていない車がたくさんあって、どうしてもそれを欲しい人の中には、グーグル・アースを使って探している人もいるのだという。

 実際に見つけて、直して、その車に乗っている人もいるのだとか。

 なんとかビューとか言ってたっけな。

 厳密にはグーグル・アースでは無かったかも。


「なんて言ったっけな。なんかゲームっぽい感じがしたんだけども・・・。」

 思い出せないし、そもそも、そこまで本気で思い出そうとしているわけでもない。


 それはそうと、今、修平がグーグル・アースで世界をグルグル回って遊んでいるのには理由がある。


 真面目な回想もしているが、自分の頭の中はピンク一色で染まっている。


「俺の脳みそは今、多分誰よりも綺麗なピンク色をしているぞ。・・・いや、俺達・・・かな。」



 これは、昨日の事だ。



 小学生最後の夏休みが始まり、1週間が過ぎた。

 朝起きる時間が段々と遅くなり、少しづつ強くなってきた母さんのお叱りに、ちょっとした危機感を覚えていた。

 少なくとも、今日より遅く起きないよう努力しようと思っていた矢先に、下山恭介からメールが来た。


 携帯電話は持っていないが、ゲーム機でもネットは出来る。

 母さんたちは、今ではゲームでも色んな事が出来るのね、と驚き、呆れている。

 色々な大人にそう言われるが、正直ピンと来ない。

 今、自分が持っているのは、最新型のひとつ前のタイプだが、この一番最初に出たタイプは自分たちが生れた頃からあったのだ。


 爺ちゃんたちが子どもの頃は、テレビもエアコンも冷蔵庫も洗濯機も無かったという。

 でも、母さんたちがテレビを見たり、エアコンをつけたり、冷蔵庫や洗濯機を使うことを起こったりはしない。

 なんで自分たちだけが、小言を浴びせられないといけないのか。

 ピンと来ないばかりか、最近ではじわじわと怒りが湧いている。

 

「さっさと朝ごはんを食べちゃいなさい。」

 言葉にはしていないが、ゲームなんか見てないで、ご飯を食べろということだろう。さすがに分かる。

 食べ慣れた母さんの朝食を頬張り、片付ける。

 姉はすでに部活に行っている時間なので、朝ごはんを食べたのは自分が最後だ。

 洗い物も自分がやらないといけない。


「洗うのは面倒だし、明日はもっと早起きしようかな〜。」

 どうせ無理だろうと自分でも思っているが、母さんに聞こえるようなつぶやきをして、気持ちだけは見せておく。

 しかし、頭の中は、恭介からのメールが気になるという事で一杯だ。


 手早く洗い物を済ませ、メールの内容を確認するためにゲーム機を持ち自分の部屋に行く。

 ちらっとこちらを見た母さんの目線から冷たいものを感じるが、気にしない。

 母さんだって寝転んでテレビを見ているじゃないか、とやはり小さな怒りがこみ上げる。

 

 メールを確認すると、2通目が来ていた。


『もしかして、まだ寝ているのか?早く返信よこせ。』

 相変わらずせっかちなやつだ。

 それでも焦らず、自分のペースで最初のメールを確認する。


『俺の家で面白いものを見せてやる。

 昨日見つけたすごいやつだ。

 智行と真も来る。時間があったら昼過ぎに家に来い。』

 いつも通りの淡白で簡潔で、よく言えば分かりやすいメールだ。


『俺っち今日ひまだし、恭介ちゃんのお家に行っちゃうわよ(´∀`*)ウフフ』

 ちょっとふざけて返信してみた。


 1分で返事が来た。


『それじゃ、また後で。』

 恭介は平常運転のようだ。

 こうなると分かっていても、ふざけた返しをしてしまう。

 そして、スルーされた自分が恥ずかしい思いをするのだ。


 夏休みの特番を見ている母さんがいる居間で、わざとらしく、見せつけるように、宿題を少しだけ進める。

「勉強しなさい」と言われるとすごく気分が悪くなるので、それを言わせないように、時々こうする。

 元々そういったことを言う人ではないが、こうすれば母さんは、必ず何も言わない。


「今日、遊びに行くの?」

 すっかり見透かされているようだ。

 これ見よがしに勉強する姿を見せつけた自分がバカみたいだ。


「うん。お昼食べたら恭介の家にいく。智行も真も行くんだってさ。」

 恥ずかしさから顔が少し赤くなった事に焦り、早口になる。

 完敗だ。無駄に敗北感を味わってしまった。


 宿題を切りのいいところで終わらせ、母さんとテレビを見る。

 時々イラッとすることもあるが、母さんと話たりするのが嫌なわけではない。

「今年もあちこちでお祭が始まるのね〜。」

 人混みが嫌いな母さんにとって、テレビに映るような大きいお祭りは他人ごとらしい。

 かといって出歩くのが嫌いなわけではなく、家族であちこちに出かけることは結構あった。

 地域の小さいお祭りにもよく連れて行ってもらった。

 去年、姉ちゃんが中学に上がり、部活を始めてからは、家族でどこかに行くという事は一気に減った。

 それと共に、休みの日に友達の家に行く機会が増えた。


 母さんは唐突に言った。

「そう言えば、町内会のお祭、みこしを担ぐのは今年で最後になるわね。」

「そうだね。姉ちゃんも中学に上がってからは参加してないし。」

 別にそういう決まりがあるわけではないらしいが、

 中学校というのは、ほとんどの人が部活をするみたいだし、実際に中学生で参加している人はめったにいない。

 知るかぎりでは、自分が2年生か3年生の時、中学生だか高校生のお兄さんが1人参加していた位だと思う。

 多分、誰かのお兄ちゃんが手伝いに来てくれてたんだろうけど、金髪だったので勝手に怖がっていたという記憶しかない。


「それじゃあ、行ってきます!」

 お昼ごはんを食べ、軽く準備をしてから出かける。

「暗くなる前に帰るのよ。」

 母さんはいつもそう言うが、学校の決まりでは午後5時には帰宅していないといけない。

 守っている人もいるが、実際の所、それは少数派だと思う。

 恭介も智行も真も守ってないし、家の人も何も言わない。

 ただなんとなく、6時には解散するようになっている。

 誰に言われるでもなく、自然とそうなった。

 解散してからの帰り道や公園など、まだまだ子どもが沢山いる。


 4人の家は近くない。

 智行と真は隣のアパートだが、自分の家と恭平のマンションの位置関係は、家を線で結ぶと学校を中心に三角形のようになる。

 移動は自転車がデフォだ。


 それぞれの家の近くに古本屋やゲーム屋、公園などがあるので、その時の気分でどこの家に集まるかが決まる。

 そして、ゲームなどをする時はもっぱら恭介の家だ。

 色々なゲームが揃っているし、コントローラーも多い。

 3人兄弟のはずだが、不思議とゲームやパソコンが使えないということは少なかった。


 恭介が住むマンションの駐輪場に自転車を止める。

 智行と真の自転車があった。2人はすでに着いているらしい。

 時折あることだが、遅れてくることが多い彼らに先を越された。

 どことなく普段と違う雰囲気を感じ始める。

 なにか特別な事が起こりそうな予感がしている。

 それは、さっき母さんと話をして、今が小学生最後の夏休みだという事を変に意識していたからかも知れない。


 自動ドアも、パスワードを教えてもらっている自分達にとってはただのドアだ。

 なんなくドアを開け、エレベーターに乗り込む。

 歩いてすぐの中央公園に行くのだろう。

 エレベーターの扉が開くと4人の子どもが騒がしく出てきた。

 このマンションにはかなりの頻度で来るので、ここの住人のことは結構知っている。

 4人の中には見知った顔もあった。

 手にはボールやバット、ゲーム機も持っている。


 まぬけにも

「ああ、自分達以外の子どもも夏休みなのだな」

 などという当たり前の事を今更にして思った。


 エレベーターで5階に上がり、503号室のチャイムを鳴らす。


「どうぞ」

 相変わらず淡白な恭介の入室許可をいただき、特にかしこまりもせずに扉を開ける。


 自分達4人しかいない。

 そんな雰囲気を瞬時に感じた。

 こんな書き方をするとすごく特別な空気が漂っていたのか、はたまた自分に超能力的な何かがあるのかと思う人もいるかもしれない。

 しかし何の事はない、ただ単にうるさかったのだ。

 さすがに小学6年生、家の人がいる時は、そこそこ気を遣って静かにしているのだ。

 ちょっとうるさければ、家の人がいないのだと分かる。

 自分の家なんか、夏場は窓を開けているので、外からでも分かると、真に言われたことがある。


 さてさて、訳も分からず部屋に呼ばれて集まった4人。

 いつもなら適当にお菓子を食べたり、ジュースを飲みながら今日何するかを決めていくわけだが・・・。

 沈黙になりそうになると、大体、真が口火を切る。

「んで、面白いものってなに?」

 こいつも恭介に負けず劣らず単純明快。

 恭介と真が話すと、ポンポン話が進むので、ついていけなくなる時すらある。


 智行と自分は、どちらかというとマイペース。

 のんびり2人とせっかち2人、周りから見るとそんな感じだろう。

 実際は微妙に違うのだが、説明も難しいし面倒くさいので、誰も否定したり、説明したりすることはない。


 真の問いに対して、恭介はもったいぶったりせず、ズバッと答える。

「これを見ろ。すごいだろ!」

 恭介は、いつになく興奮気味な自分に戸惑う3人を尻目に、話を進める。

「前、先生がグーグル・アースについて話てたよな?あの授業で興味を持って、俺、色々調べてみたんだよ。」

「ああ、なんか修平がパソコン動かして、台の森小学校からブラジルまで移動したやつだよね。」

 のんびりした口調で智行が答える。

「そういや智行、変に悔しがってたよな。すねて修平と喧嘩しかけてんの。どんだけやりたかったんだよ。」

 真は歯に衣着せぬというか、デリカシーなくズバズバ言う。

「ああ、そういうこともあったね〜。で、調べてみてどうしたの?見たところ、風景写真っぽいけど。」

 智行は気にせず話を進める。おだやかというか、鈍感というか、不思議なやつだ。

「これ、何に見える?」

 恭介は本当に興奮気味だ。

「沢山の鳥が飛んでるな。白鳥・・・?いや、なんか赤っぽいな。」

 今まであまり喋ってなかったし、思ったことをそのまま口にしてみた。

「これ、フラミンゴの群れなんだってよ。次が、これ。」

 一目見て浜辺と分かる。砂浜に波が押し寄せている。

 近くには灰色っぽい生き物のようなものが、これまた大量にいる。

 重なり合っている部分も多く、詰まっている感じがする。

 茶色い体に黒い影なので、先ほどのフラミンゴに比べて、生き物の外観がイメージしにくい。

「なんだこれ・・・?魚?」

 3人とも同じようなことを思っているようだが、真が言う。

「砂浜にいっぱいいるし、アザラシとかかな?」

 智行はのんびり言う。

 本人も真も意識してないだろうが、やんわりと真の魚説を否定した形になっている。

 どことなく相性は良くない気がするが、2人で話している姿もよく見る。

 家が近い幼なじみの2人には、4人の中でも違った関係性があるように思う。

 恭介は、

「おしいね!オットセイの群れなんだって。アザラシっていう人もいるけど、俺もよく分からん。」

 とやはり興奮気味に言う。


 皆状況をなんとなく察した。そして、こういう時に口を開くのはなんとなく自分であることが多い。

「つまり、恭介が俺たちに見せたかったのって、この動物の写真?」

「そうそう。で、この写真っていうのが実は・・・」

 珍しく勿体つける。

「ああ、グーグル・アース!」

 真はピンときたようだ。身体表現が激しい真は、手をポンと叩く。

「なるほど、それでさっき先生の話をしていたのか。」

 自分が言うやいなや、

「そうそ。で、こういう写真がいっぱいあるのよ。

 自分で探したわけじゃないけど、まとまってるサイトとかあってさ。

 実際にその緯度と経度の数値を入れると、本当にその画像が出てくんのよ。」

 いつになく饒舌だ。


「それで〜?」と智行。

「お前ら、自由研究どうしようかって決めてる?」

「いや・・・。」3人で声が揃う。

「まだ夏休み始まったばかりだし・・・。夏のスキルを少し進めてる程度だよ。」

 なぜかわからないけど、言い訳めいたことを口ごもってしまった。

「それじゃあさ、4人でやろうぜ!グーグル・アース使ってさ!」

「使ってどうすんのよ?授業でちらっと見た感じ、うちの町なんてそう大したものないっしょ。」

 いつになくテンションの高い恭介もなんのその、こちらも平常運行らしい。

 しかし、真の言うことも分かる。

 学校とか家とか、車とか、それとは分かるが、だからと言ってどうということはない。

 しかし、恭介にしては珍しく、

「なんでも良いんだよ。うちの町の車の色の割合とかさ、屋根の色の割合とかさ。

 どうせ小学校の宿題なんだしさ。どんなもの持って行っても文句は言われないっしょ?」

 実際そうだ。智行なんか去年、夏休みに食べたアイスのレビューが自由研究だった。

 レビューの数が多すぎて、1日数本アイスを食べていた事は明白。

 定着はしなかったが、アイスマンというあだ名が一時流行した。

「ま〜。そもそも、出さないでしらばっくれる人もいるからね〜。」

 自分達が去年の智行の事を思い浮かべたのを察して、

「少なくとも俺はやってきたんだぞ」と主張しているように感じた。

 そもそも、恭介と真がそう思ったかすらわからない。

 自分一人で勝手に後ろめたくなって、勝手にどきりとしている。


「そうそ。とりあえず町を色々見てみてさ。何か面白いものがあったら現地に行ったりしてさ。

 なんかそういうの、おもしろそうじゃない?お宝とか見つかるかもよ!」

 今日の恭介はぐいぐい来る。

「ああ、先生もなんか言ってた気がするね。」と自分。

「車がどうってやつでしょ?」真が続く。

「な?見つからなくても自由研究にはなるし、一緒にやろうぜ!」


 こんな恭介は初めて見るという驚きや戸惑い、そして彼自身の勢いに押され、自分たちは4人で共同の自由研究をすることになった。

 とりあえず、明日それぞれ調べてみて、面白そうなことがあったら、明後日のプール開放の時にネタを出しあう事にした。


 そのあとは、いつもどおりゲームをしたり、中央公園に行って遊んだり、スーパーで試食めぐりをしたり、お菓子を買って食べたした。



 そして今、自分はパソコンの前で良からぬことを考えている。

 昨日見たのは上からの写真だけだったが、先生が言っていたなんとかビューを利用して、エッチな本を探し当てようという野望を抱いているのだ。


 恭介が言っていたお宝はきっとエロ本のことだと、なぜか信じて疑わなかった。

 みんなもエロ本を探すために、今必死にパソコンをいじっていると思い込んでいる。


 こんなにも女の子が気になるようになったのはいつからだろう。

 干してある母や姉の下着を見て変な気持ちになったり、ドラマのキスシーンなどを見た時の気持ちも、今までのそれとは全然違う。


 コンビニ等に置いてあるエッチな本は直視できない。

 見たら警察に捕まるようなきがするのだ。

 漫画雑誌のグラビアですら、誰かに怒られるような気がして、じっくり見ることが出来ない。


 その答えを探すんだ。

 それがお宝だ。

 そんな変な思いを抱きながら、必死にパソコンを操作している。


 結局、数時間しても収穫はなかったし、ずっとパソコンを見ていたら目が痛くなったので、この日は切り上げた。

 3人の嗅覚に期待するしか無い。

 まだまだ夏は長い。気長に行こうじゃないか。

 そんな心持ちで、その日は布団に横になった。


 昼間は暑いが、夜は結構涼しい。

 扇風機をつけて、網戸にして、タオルケットをかけて横になると、すぐに寝てしまった。


 そして、夢を見た。


「何だったっけ?」


 朝起きると、綺麗さっぱり忘れてしまった。

 寝ぼけた頭で必死に思い出そうとする。

 幼稚園の頃に聞いた先生のお話を思い出しているかのようだ。

 話を聞いたのは覚えているけど、その内容がさっぱり出てこない。

 夢を見たことは間違いないけど、ストーリーが分からない。


 4人で何かを追いかけていたような、追いかけられていたような、

 誰かを助けたような、助けられたような・・・。

 とにかく慌ただしいものだった気がする。


 夢というのは心の状態を反映するものらしい。

 エッチな本を探そうとするワクワク感と、後ろめたさが、そういう夢を見せたのだ。

 それとも、神様のお告げで、エッチな本を探してはいけないということだろうか?


 たかが夢。

 気持ちはすぐ切り替わり、空腹を満たすために朝食をとることにした。


 準備を済ませて家を出る。

 今日はプール開放。

 驚くほどの晴天だ。

 恭介、智行、真はどんなものを調べて、何か見つけたのだろうか。

 とても気になる。ワクワクする。

 でも、もし3人共見つけてたら、ちょっと嫌だな。

 自分だけ何もないのは、なんだか嫌だ。


 期待と不安、両方が膨らむ。


 夏の青空には、大きな入道雲が空高く積み上げられていた。

 所々黒ずんだその雲を見て「お天気雨が降りそうだな。」などとのんきな事を考えていた。


 これから始まろうとしている、長くて短いひと夏の冒険譚。

 そのページは静かに、そして確かに、めくられていることにも気付かずに・・・。

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