↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その断罪お待ちください  作者: 白崎ルイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/2

断罪その後に

王国に「弁護士」という職業が誕生してから三ヶ月。その浸透ぶりは目覚ましかった


きっかけはローズ商会の一件だった。あの日、大広間でマリーゴールド嬢の冤罪を見事晴らしたベーカー弁護士の活躍は、貴族社会に激震を走らせた

「断罪される前に弁護士を雇え」

そんな合言葉が、今や令嬢たちの常識になりつつあった。そして当然、需要に応える形で組織が生まれる。名付けて『王国弁護士協会』。会長はもちろんベーカー。会員数は三ヶ月で五十人を超えた。元御用商人、元書記官元裁判所の給仕、そしてなぜか元暗殺者までいる。経歴は様々だが、全員に共通するものが一つあった。それは「令嬢の断罪現場に颯爽と現れる」という使命感である


今日も王国のどこかで断罪の鐘が鳴ろうとしていた


【第一案件・辺境伯令嬢エリーゼの場合】

「エリーゼ、貴様は夜会で聖女の像を倒した!」


辺境伯令嬢エリーゼは広間の中央で仁王立ちしていた。彼女の腕は太かった。ドレスの袖が悲鳴を上げている。告発したのは隣国の皇子。聖女の像を倒した罪で、国外追放を要求していた


「異議あり!」


扉が開き、弁護士が駆け込んできた。名刺には「協会員第七号・セブネス」。元・石工である


「エリーゼ嬢が像を倒したのではなく、像がエリーゼ嬢に倒れかかったのです」


「なんだと?」


「証拠に、像の台座には彼女の肩の跡がくっきりと。つまり、彼女は動じずに受け止めた。むしろ像の方が彼女の筋肉に支えられていたのです」


「そ、そんな馬鹿な」


「そして、この像はもともと傾いていました。過去三年間、修繕申請が出ていながら放置されていた記録がこちらに」


セブネスは書類を掲げた。皇子の顔がひきつる。エリーゼは腕を組み、満足げに頷いた


「筋肉は裏切らない。わたくし、倒そうと思えば倒せましたわ。でも堪えましたの。ええ、堪えましたとも。筋肉は聖女を拒みません」


「それ、自慢にならないから」


セブネスが小声で突っ込んだ




【そしてある日の案件】

その日、弁護士協会に緊急の依頼が舞い込んだ。依頼主はなんと、王太子アルフレッドその人


「わ、私が断罪されそうなのだ」


「殿下が?」


ベーカーは眉をひそめた。話を聞けば、どうやらアルフレッドはかつてマリーゴールド令嬢に冤罪を着せた件で、今度は自分が糾弾される立場になったらしい。糾弾者は、マリーゴールドの父であるローズ商会会長。つまり、弁護士協会の最初の依頼人である


「殿下。それは自業自得では?」


「頼む! 弁護してくれ! 私はもう、あんな恥をかきたくない!」


ベーカーは腕を組んだ。かつての依頼人と現依頼人という、なんとも複雑な状況である。だが、彼はプロだった


「わかりました。お引き受けします。ただし、条件があります」


「なんだ。金ならいくらでも」


「料金は所定の範囲内でいただきます。ただ、殿下には今後断罪をする前に必ず協会へ相談していただきたい」


「それだけでいいのか」


「ええ。それが、平和への第一歩ですから」


翌日、大広間で新たな断罪劇が繰り広げられた。糾弾者ローズ商会会長。被糾弾者アルフレッド王太子。そして弁護人ベーカー。傍聴席には、令嬢たちが並んでいた。マリーゴールド、フラン、エリーゼ、彼女たちは口々に囁く


「殿下、今度はやられてますわね」

「自業自得ですわ」

「でも、ベーカー様がついてるから大丈夫ですわ」


そして判決が下った。アルフレッドは無罪。ただし、条件付きで「今後一切の断罪を禁止」とされた。つまり、彼はもう誰も断罪できない。安易に断罪した分、断罪する権利が事実上剥奪されたのである


「殿下。断罪するより、される側の気持ちがわかったでしょう」


「ああ。よくわかった」


「人を糾弾するなら、事実を事実として見極め、自分に恥じない生き方をしましょう。貴方も、私もそれは同じです」


その日の夕方、弁護士協会の前に一枚の張り紙が出された


『王国弁護士協会 出張相談受付中。断罪される前に、まずはお電話を。初回相談無料。令嬢も殿下も、泣き寝入りはさせません』


張り紙の前で、マリーゴールドがベーカーに話しかけた。


「ベーカー様、わたくし、弁護士になろうかしら」


「マリーゴールド嬢が?」


「ええ。筋肉は裏切らないけど、弁護士も裏切らないでしょう?」


ベーカーは笑った


「ええ。ただし、デスクワークですからね。プロテインは控えめに」


「努力しますわ」


「まずは書類の読み方から始めましょう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。