謁見
ある晩、男爵邸の書斎に一通の書状が届けられた。
その封蝋には王国の紋章が深く刻まれており、書状を手にしたショウイチの胸は激しく高鳴った。
「王より拝謁の御用」と記された文面は、保存食の功績を讃え、宮廷にて正式な報告を求めるものであった。
長きに渡る戦乱の最中、多くの者がその名も知らぬまま命を落とすなか、ショウイチのまるふく商店が生み出した保存食が兵士たちの生命線となったことは、領主グランツ侯爵からも王の耳へと届いていたのだ。
準備の間、男爵は己の業績が宮廷の重厚な空気にどのように受け止められるのか、想像しながらも冷静を保とうと努めた。
支度を整え、重厚な紋章入りのマントを羽織り、使者に従って王都へ向かう道中、重責と期待の狭間で心が揺れる。
宮殿の門をくぐり、煌びやかな廊下を歩むたび、戦場で救われた兵士たちの顔が頭をよぎった。
あの日の努力と汗が、今ここに報われる瞬間が近づいているのだと実感し、背筋が伸びる思いだった。
そして、玉座の間で王との対面を果たし、心を尽くした成果が評価されたのだった。
玉座の間に通されると、煌びやかな玉座に腰掛けた王が静かに迎え入れた。
「男爵ショウイチよ、よくぞ参られた。諸侯の間で貴殿の名は既に語り草となっておる」
王の声は深く、厳かだが温かみもあった。
「貴殿が生み出した保存食が、我が兵士たちの命を救い、戦況の好転に大いに寄与したことは我が心より感謝しておる」
王は差し出された木箱から、丁寧に缶詰を取り出した。
「これは…まるふく商店の保存食か?」
「はい、陛下。戦地の兵士にも届けられたものでございます」
王は一口食べると、瞳を細めた。
「素晴らしい…まるで新鮮な料理を食しているかの如き味わいだ。これほどの保存食は他に類を見ぬ」
この瞬間、ショウイチは自らの努力が王に届いたことを痛感した。
続いて、侍従が黄金の勲章を運び、王は静かにそれをショウイチの胸に掛けた。
「これより貴殿を『王国功労勲章』の叙勲にて称える」
その場に居合わせた廷臣たちも一斉に拍手を送った。
「男爵よ、この栄誉は貴殿の尽力と才覚の証。今後とも我が国のために力を尽くされよ」
ショウイチは深く頭を下げ、胸の内に複雑な感慨が渦巻いた。
戦乱の只中で生き残り、領地のために働き、やっとここに認められたのだ。
王都を後にする道すがら、男爵の胸には誇りと共に更なる責任感が宿っていた。




