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初めての…騎士団

男爵邸の書斎。厚い木製の机の前に座るショウイチは、窓の外に広がる領地の風景をじっと見つめていた。

隣に立つ執事が軽く声をかける。


「侯爵がお呼びです。お戻りになりました」


ショウイチは背筋を伸ばし、覚悟を決めて応えた。


「分かった。すぐ向かおう」


ほどなくして、グランツ侯爵の執務室に入ると、侯爵はいつもの柔和な笑みではなく、少し厳しい表情で出迎えた。


「男爵ショウイチ、久しぶりだな。座れ」


ショウイチは礼をし、着席した。侯爵も向かいの椅子に腰掛ける。


「どうした?今日は珍しく真剣な顔をしているな」


ショウイチは言葉を選びながら話し始めた。


「侯爵様、私の直属の騎士団や部下を配置していただきたいと考えております」


侯爵は少し驚いた表情を見せた。


「それはなかなか重要な申し出だな。理由を聞かせてくれ」


「まるふく商店の運営と領地の管理、少年隊の指導などに忙殺されておりますが、直接の騎士がいないことで、迅速な決断や現場対応に支障が出ることがあります」


「確かにな。男爵の役割は単なる名誉職ではない。領地の実務に深く関わる者には、信頼できる部下が必要だ」


ショウイチは真剣な眼差しで続ける。


「信頼できる者がいれば、私はより効果的に動けますし、領民も安心するはずです」


侯爵は静かに頷いた。


「よかろう。直ちに候補を用意させよう。だが、選ぶのはお前だ。誰を信じ、誰を部下にするかは男爵自身の眼で見極めよ」


ショウイチは深く感謝を述べ、決意を新たにした。


「ありがとうございます、侯爵様。期待に応えられるよう尽力いたします」


侯爵は少し笑みを戻し、優しく言った。


「頼んだぞ、男爵」


部屋を出るショウイチは、心の中でつぶやいた。


「ここからが、本当の戦いの始まりだ」



蒼雷隊の訓練場。早朝の柔らかな光が木製の練兵場を照らしていた。

ショウイチは少し緊張した面持ちで並ぶ候補者たちを見渡していた。


「今日は侯爵から推薦された騎士候補を試す日だ。俺たちの目で本物かどうか見極めよう」

隣に立つカイル隊長は、自信に満ちた笑みを浮かべていた。


「そうだな。実戦を想定した模擬戦が一番だ。俺も手伝う」


候補者は十数名。いずれも腕利きの騎士見習いだが、ショウイチもカイルも一人一人の動きを細かく観察していく。


まずは基本的な剣技、盾の使い方、防御姿勢の確認。

その後、ショウイチが先陣を切って模擬戦を始めた。


「いくぞ」


鋭い目つきとともに繰り出されるショウイチの木剣。だが、単なる力押しではない。ムエタイと柔術をベースにした格闘技の動きが、剣術に新たな角度を加えていた。

相手は何度か攻撃を繰り返すが、ショウイチの巧みなステップと肘打ち、蹴りのフェイントに翻弄されていく。


カイルが隣で評価する。


「お前の動きはやはり格闘家のそれだ。相手を読んで攻撃をかわし、反撃する速さは並ではない」


次にカイルが候補者の一人と組み、同じく模擬戦を開始。

カイルの鍛え抜かれた身体能力と実戦経験が光る。強烈な攻撃の合間に瞬時に防御し、狙いすました一撃を放つ。


ショウイチは目を細め、戦術の洗練度を確認していた。


「よし、何人かは合格だな。だが最後に俺と一騎打ちしてもらう」


選ばれた数名は緊張しながらもショウイチとの模擬戦に臨んだ。


幾度か繰り返される対戦の中で、技術だけでなく精神力や瞬発力を見極めていく。


一人の騎士候補が必死に攻撃を繰り出すが、ショウイチは冷静にかわし、最後は砂を投げるように細かく挽いた胡椒を手に掴み、視界を奪い一気に面を打ち込んで勝負を決めた。


「勝者は俺だ。これが本物の強さだ。覚えておけ」


カイルはその様子に感心し、手を叩いて拍手した。


「お前が直属騎士としてふさわしいか、候補は全て見極めた。あとは男爵の判断だ」


ショウイチはゆっくりと頷き、静かに口を開いた。


「よし、彼らを受け入れ、共に領地を守る盾と剣にしよう」


蒼雷隊の訓練場は、また新たな風が吹き始めたのだった。



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