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鬼教官カイル隊長

蒼雷隊の新隊員たちが正式に集められてから数週間が過ぎた。

カイル隊長は毎日のように訓練場で熱血指導を行い、その熱意はまさに爆発寸前だった。


「もっと体を使え!」「攻撃のタイミングを逃すな!」「油断は命取りだ!」

彼の声はいつも鋭く響き、隊員たちは必死に食らいついた。


しかし、カイルの厳しさは時に行き過ぎることもあった。


ある日の午後、基本打撃訓練中、カイルは特に一人の新隊員を標的にした。

その若者はまだ筋力も技術も未熟で、動きに硬さが見えた。


「動きが鈍い!そんなままじゃ戦場で生き残れん!」

カイルは普段以上に厳しい態度で繰り返し打撃を命じる。


「おい、もっとスピードを上げろ!」とカイルは近づき、強めに打ち込んだ肘が若者の肩にまともに当たった。


隊員は一瞬よろめき、膝をつきかける。場は一瞬静まり返った。


「大丈夫か?」とショウイチがすぐに駆け寄る。


カイルは冷静を装いながらも、自分の感情を抑えきれず言葉を続けた。


「実戦を知っている俺には分かる。お前がこのままじゃ絶対に死ぬ。だからこそ、容赦できないんだ。」


カイルは若者を支え、他の隊員たちにも言った。


「俺の厳しさが辛いと思うだろうが、これが現実だ。だが、無理はするな。痛みは気づきだ。怪我するなと言ったらウソになるが、見極めは大事だ。」


ショウイチも横で頷き、若者に優しく声をかけた。


「お前はまだ若い。焦らずに、でも怠けずに強くなれ。」


その日以降、カイルの指導は少し軟化したが、熱意と厳しさは変わらなかった。


若者たちはその本気の想いを受け止め、徐々に実戦に耐えうる力を身につけていくのだった。



蒼雷隊の訓練場には、今日も新隊員たちが集まっていた。

彼らにとって、隊長のカイルと男爵ショウイチが見せる模擬戦は、一種の“格闘教室”のようなものだった。


「今日は見逃すなよ。お前たちに実戦の匂いを伝える」

ショウイチが静かに言うと、カイルは無言で頷いた。


15歳になったカイルは、3年前とは別人のように逞しくなっていた。

身長は伸び、筋肉はつき、何より動きが鋭くなっている。

グランツ侯爵の近衛騎士にスカウトされるほどの逸材だ。


試合用の木剣を手に、二人は向かい合う。


「始めるぞ」ショウイチの合図とともに、静かな緊張が走った。


カイルが真っ先に突進する。剣戟は早く鋭い。だがショウイチは冷静にかわし、カイルの動きを細かく観察している。


「鍔迫り合い!」

二人の木剣が激しくぶつかり合い、火花のような音が響く。


カイルは鍔迫り合いから素早く肘を狙ったが、ショウイチは寸前で後退し、代わりに鋭いローキックを見舞う。


カイルはその攻撃をかわし、横に回り込んで斬りかかるが、ショウイチも反応が早い。

わずかな隙を狙い、鋭い突きを放つ。


新隊員たちはその高速の応酬に目を見張った。


「こんな動きができるのか……」

小さな声があちこちで漏れる。


カイルも負けじと攻撃を繰り返す。若さの勢いと大胆さを武器に、ショウイチに食らいつく。


だがショウイチは、冷静かつ正確。

技の切れ味はまさにベテランの貫禄だ。


激しい攻防の後、カイルは一瞬の隙を突いて木剣でショウイチの肩を払おうとする。


しかし、ショウイチは瞬時に左手に握っていた細かく挽いた黒胡椒を撒き散らす。


「な、なにっ!?」

カイルは視界が一気に霞み、咳き込んだ。


この隙にショウイチは木剣を振り下ろし、カイルの面を正確にとらえた。


「勝負あり」


新隊員たちは息をのんだまま静かに拍手を送る。


ショウイチは笑いながら、眼鏡を拭う。


「勝ち負けじゃない。動きの中に学びがあるんだ。目を離すなよ」


カイルは悔しそうに息を整えながらも、誇らしげに頷いた。


「お前の技、まだまだ盗むぜ」


「期待してるよ」


そして新隊員たちは、圧倒的な2人の強さと技巧の差を胸に刻み、さらに鍛錬に励む決意を固めるのだった。


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