出兵と支援物資
グランツ侯爵の指示により、保存食と物資の輸送隊が組織された。
隊長にはカイル率いる少年隊が任命され、男爵ショウイチも護衛兼指導役として同行することになった。
朝靄の残る早朝、まるふく商店の保存食工場に集まった輸送隊は約百人ほど。
保存食の缶詰が木製の箱にぎっしり詰められ、馬車に積まれていく。
馬車は数台に分かれ、少年隊の若者たちが護衛として厳重に隊列を組む。
「これが戦場へ向かう兵士たちの命綱になる。気を抜くなよ」
ショウイチは子供たちに声をかけ、鋭い視線を巡らせた。
カイルは少年たちに指示を出しながらも、気負いは見せず冷静に振る舞っていた。
「隊列を乱すな。どんな小さな隙も敵に狙われる。任務は厳守だ」
隊列はゆっくりとグランツ領の険しい山道を進む。
木々の間を抜け、谷を越え、時折遠くに砲声が響いてくる。
戦場が近いことを実感させた。
途中、ショウイチは隊を停め、兵士たちに保存食の取り扱いと緊急時の対応を再確認した。
「この缶詰一つが命を繋ぐ。大切に運べ」
数日間の厳しい行軍を経て、輸送隊は戦地近くの拠点に到着した。
そこには疲弊した兵士たちが物資を待ち望んでいた。
リナから届いた戦況報告によると、戦線は日に日に厳しさを増し、隣国の攻勢が強まっていた。
そして何より衝撃だったのは、リナの父、グランツ侯爵の軍事司令部に所属する将校が戦線へ派遣されることになったことだった。
リナは苦悩の色を隠せなかった。
「父は領地の防衛どころか、前線に送られることになった…」
ショウイチは彼女の肩に手を置いた。
「俺たちが支えてやらなきゃな」
その日、拠点で開かれた会議では、侯爵からの命令で増援部隊の編成と共に兵站の強化が話し合われた。
少年隊は更に警戒を強め、護衛任務の厳格化が決定された。
だが、敵の狙いは物資の輸送路にも向けられていた。
ある夜、夜襲を受けた輸送隊は咄嗟の対応で反撃し、カイルたち少年隊が奮戦。
「油断は許されん。敵はどこに潜んでいるかわからん」
ショウイチは静かに言い放った。
戦況は苛烈を極め、兵士たちの疲労と緊張はピークに達していた。
それでも保存食は必須の命綱となり、少年隊やショウイチ、騎士たちは懸命に守り続けた。
リナは遠く離れた領地から家族の無事を祈りつつ、内政と兵站の両面で奔走し続けた。
こうしてグランツ領の戦争支援は、最前線と後方を繋ぐ大切な役割を担い、ショウイチと少年隊は戦場の闘いに新たな責任を負っていくのだった。




