カイル隊長と少年隊
大会が近づき、カイルの強さは日に日に噂となって広まっていた。
並の騎士たちが挑んでも歯が立たず、誰もが彼の成長に恐れを抱いていた。
そんな中、訓練所でショウイチとカイルの一騎打ちが実現した。
木剣を手に、二人は向かい合う。
訓練所の広場に静寂が訪れた。
対峙するのは若き天才カイルと、異世界の格闘家ショウイチ。
観衆の視線が二人に注がれる中、号令がかかる。
「始め!」
カイルが猛然と突進してきた。並の騎士なら、その速さに飲み込まれるだろう。
だが、ショウイチは一歩も動じなかった。
瞬時に間合いを測り、鋭く肘を振り抜く。
まるで雷の一撃のように、肘打ちはカイルの顔面を直撃。
カイルの目が大きく見開かれ、全身の力が抜ける。
そして、そのまま地面に崩れ落ち、動かなくなった。
騒然とする観衆の中、ショウイチは静かに言った。
「これで終わりだ。」
カイルの天才ぶりは誰もが認めていたが、ショウイチの技術と経験が勝利を決めたのだった。
カイルはまだ意識を取り戻していないが、周囲の騎士たちは驚きを隠せなかった。
翌日、ショウイチはカイルを連れてグランツ侯爵の元を訪れた。
侯爵は若き天才の姿を一瞥すると、深く頷いた。
「ふむ…カイル、確かに常人とは違う。だが、少年の部に出すのは危険すぎる」
侯爵は剣を手に取り、カイルに向き合った。
「ひと勝負、試してみるがよい」
二人の剣がぶつかり合う音が辺りに響く。
グランツ侯爵の経験に裏打ちされた剣技に、カイルは必死に食らいついたが、最後は侯爵の巧みな一撃で制された。
侯爵は微笑みながら言った。
「お前の実力は認める。ゆえに、特例として騎士団入りを許可しよう」
こうしてカイルは少年の部を飛び越え、正式にグランツ侯爵騎士団の一員となった。
カイルが騎士団入りを果たしてから間もなく、少年の部の大会が開催された。
かつての自分のように、未来を背負う若き才能たちが剣と素手で激突し合う熱気に満ちていた。
カイルは既に騎士団の一員としてその場に立ち、ただの選手ではなくスカウト役としても期待されていた。
彼の動きは研ぎ澄まされ、他の騎士達も一目置くほどに成長していた。
「見ろよ、ショウイチさん。あの子は只者じゃない」
カイルが指差したのは、並外れた反射神経と柔軟な動きを見せる少年だった。
グランツ侯爵も鋭い目で観察を続ける。
「確かに目を引く。将来が楽しみだな」
ショウイチはニヤリと笑い、静かに言った。
「俺たち三人で、この国の未来を担う逸材を見逃すわけにはいかないな」
こうして三人は、少年達の中から有望な若者を次々と見出し、未来の騎士団の礎を築くため歩み始めた。
カイルの才能とリーダーシップは騎士団内でも抜きん出ていた。
そこでグランツ侯爵はカイルを「少年隊」の隊長に任命した。
少年隊とは、ショウイチたちがスカウトした有望な少年たちで編成された新設部隊。
領地の見廻りや警備の初歩的な任務を任されるが、日々の食事、寝床、訓練、そして学業までもグランツ領が全面的にサポートする仕組みだった。
これにより、親たちも安心して子供を送り出せる。
給金も支払われるため、家計の助けにもなっていた。
カイルは隊長として少年たちをまとめ、日々の厳しい訓練と生活指導にあたる。
ショウイチは、影ながら格闘技の指導を続け、グランツ侯爵は行政と財政面を支える。
こうして少年隊は、将来の騎士団の中核となる人材を育てながら、領地の安全を守る役割を果たし始めた。




