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Brass Heroines Secret Story  作者: 野中猫
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3/3

クラス


「ネコ!」


一人の少女が走ってきた、そして、ネコと呼ばれる少女の肩を叩く。


「わあ! びっくりした〜!」


走ってきた少女はニコニコと笑顔で、楽しそうである。

ネコは驚き、胸をおさえた。そして、ほっと息をつく。


ネコと呼ばれる少女、その呼び名は、彼女が小学生の頃に付けられたあだ名。

彼女の名前は野田菜緒という。

ニコニコと笑う彼女は、しーちゃんと呼ばれる子。


二人は小学校時代からの友達だ。


「やあ」


二人に話しかける、もう一人の少女。

大人しく落ち着いた雰囲気の彼女も、二人の友達で同じクラス。

小学校時代、よく遊んだ友達だ。

呼び名は、いず。


ネコとしーちゃんといずを含めた五人で、毎日遊んでいた。

あとの二人はクラスが分かれてしまったらしい。


ネコは今までひとりぼっちだった。

人と仲良くすることができない彼女は、無表情でうつむき、突っ立っていた。


「同じクラスだね!!」


仲間が増えて、ネコは笑みがこぼれる。

しーちゃんもいずも嬉しそうに笑う。


よかった、味方が増えた、

ネコは安心した。

とりあえず今日はうまくいきそうだと、ネコは考えていた。


ニコニコと楽しそうな友人たち。

ネコは心の中が、あまり穏やかではない。


ネコは念じる。

とにかく目立ちませんように、と。

目立つことは悪いこと、いじめられやすいネコにとって、それは教訓。


小学校時代六年間でようやくいじめられることも減り、穏やかに過ごせるようになってきた今、また新たな生活が始まる、ネコが考えることはただ一つ、中学校こそは、いじめられませんように、ということ。


雰囲気が暗いネコにとっては、なかなか難しい話ではあるが。

ネコ自身もそれをよくわかっている。

いざという時は先生だ。

先生にチクるのが一番だ。

例え嫌なヤツ呼ばわりされようとも、いじめるヤツが悪いから、チクられて当然、ネコはそう考える。


ネコとしーちゃんといずは、しゃべりながらクラスへ向かう。


一年B組、それが、これから始まる新しい生活の舞台だ。

いじめられることなく過ごして部活では吹奏楽部に入る、それがネコの思い浮かべる理想の学園生活。


いずとしーちゃんはどんどん盛り上がって、少し声のボリュームが上がる。

ネコは会話を盛り上げないように、あまり会話に入らないでいた。


目立ちませんように、盛り上がるふたりを目の前に、ネコは願う。


「あ、ここだ!」


しーちゃんが教室を見付けた。

扉は開いている、中を覗き込むと、なんだか不良のたまり場のような、そんな人達がそろっている。


うわぁ、とネコは思った。

ここにいる不良のような人達が、よそのクラスから遊びに来た人ならいいのに、

同じクラスになりたくないな、

また、頭をよぎる、不幸せな生活。


ネコはクラスに入りにくいなと思った。

いずも少しそんな顔をしていた。

しーちゃんは、いずに話しかけながら入っていく。


クラスは賑やかだった。

だから、ネコたちが入っていっても、特に目立たなかった。

ネコはとりあえず一安心した。


そして席順を見に行く。

席も重要だ、前後左右になる人によって、過ごしやすさも格段に違う。


三人で近い席になればいいのに、ネコはそう願う。

けれど、その願いは届かず、皆バラバラの席になった。


しーちゃんは窓際の席、いずは真ん中の一番後ろの席、ネコは廊下側から二列目の前から二番目の席。


ネコはくるっと振り向いて、席を目視した。

なんと、そこは、不良のたまり場ど真ん中、というような席。


ああ、終わったな、ネコはそう思った。

いじめられませんように、ネコはひたすら願う。


「席離れちゃったねー」


そんな会話をしていると、やがてチャイムが鳴り、ネコたちは席へ着く。

不良に囲まれたネコは心穏やかではなかった。


隣の視線が痛い、ネコはそう思った。

不良に観察されているような気がした、気にしすぎかもしれないし、とにかく、隣を向くことすらできない。


大体、学校でよくあるのは、隣の人と組んで、二人で英語の練習をしたりするやつだ。

席をくっつけたり、会話をしたり。

そんな時、ネコは隣の人から、決まって嫌そうな顔をされた。

席をつけることも、会話をすることも、なにもかも。


大人しいからいけないのだと、ネコは思う。だが、明るく振る舞うなんてこともできない。

ネコは人見知りをして、カチコチになってしまうのだ。


どうしよう、どうしよう、これから先のことを考えていると、うるさそうなおばさんが、教壇に立った。


「さあ、廊下にならんで!」


おばさんは自己紹介をするでもなく、追い立てるように皆を廊下に誘導する。


「今から体育館に向かいます!」


大きな声の、男子が鬱陶しがりそうな人だった。


「これから入学式に行きますよ!」


大きな声が耳に刺さる。

出席番号順に並んで!と叫んでいる。


この人が担任の先生なら嫌だなあとネコは思った。

なんだか不良の人を煽りそうだったから。


「着いてきてください!」


うるさい人がそう言って、クラスの列が動いていく。

ネコは前の人のかかとを踏まないように、また、列から遅れることのないように、気を付けて歩いた。


なんだか疲れるなぁと、ネコはぼんやり考えていた。




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