Season 2 - Episode 3: Brady’s Big Break(ブレイディの転機)
登場人物
田所家
健一/元ハリウッド映画主演原作、影が薄い
カヨ/健一の妻、カリスマ、管理魔
トシキ/健一の息子、パン屋でバイト
シンディ・ゴールドバーグ/トシキの彼女、カヨの弟子
ブレイディ・ヴァーデン/役者の卵、レッドブル依存、おバカ
Bakery Karamazova
ミーチャ(ドミトリア・カラマゾヴァ)/三姉妹長女、陽気な店の看板娘
イヴァンナ・カラマゾヴァ/三姉妹次女、インテリ、コンサルタント会社勤務
サーシャ(アレクサンドラ・カラマゾヴァ)/三姉妹三女、心優しいカトリック、神様憑き
ヴィック(ヴィクター・カラマゾヴァ)/父親、パン職人
※カラマーゾフの兄弟とは無関係です
劇団
デヴォン・クロス/若手演出家
クレア、マーカス、ジャスミン/劇団員
☆なんちゃって参考文献
ロバート・ルイス・スティーヴンソン「ジキルとハイド」
※読んでなくても大丈夫!
シーン1: オーディション合格報告
Bakery Karamazova、朝8時
ドアが勢いよく開いた。
「I GOT IT! I GOT IT!(受かった!受かった!)」
カウンターにいたミーチャ、驚いた顔。
「Brady? What—(ブレイディ?何—)」
「53rd audition! Finally! FINALLY!(53回目のオーディションで!ついに!)」
興奮しすぎて、カウンターに両手をついた。
息を切らしている。
「You… you got a role?(役…受かったの?)」
「YES! Lead role! ‘Jekyll & Hyde: 2025’! It’s experimental theatre!(そう!主役!『ジキルとハイド:2025』!実験演劇だ!)」
奥の厨房から、ヴィクターが出てきた。
パン生地を手に持っている。
「…Lead role?(主役?)」
「YES! I play Dr. Jekyll! And Mr. Hyde! And Claude! And Brooks! And Jester! And Hailey Queen! And Hamilton! And Usoppi!(そう!ジキル博士を演じる!それとハイド氏!それとクロード!ブルックス!ジェスター!ヘイリー・クイーン!ハミルトン!ウソッピ!)」
「…How many people?(何人だ?)」
「Eight! I play eight people!(8人!8人演じる!)」
「Eight!?(8人!?)」
ミーチャが驚いた。
「It’s about multiple personalities! Identity crisis! Post-modern deconstruction of heroism!(多重人格だよ!自分が誰だか分からなくなるヤツ!ヒーロー像をぶっ壊すポストモダン的なアレ!)」
「…I don’t understand any of those words(全く意味が分からん)」
でも、ヴィクターは微笑んでいる。
「But… congrats」
ブレイディは、目を丸くした。
「Really?(本当に?)」
「You worked hard. 53 times. That’s… not bad(お前は努力した。53回も。それは…悪くない)」
ミーチャも、笑顔。
「Congratulations, Brady! When’s the show?(おめでとう、ブレイディ!公演はいつ?)」
「Two weeks! Rehearsals start tomorrow!(2週間後!リハーサルは明日から!)」
トシキが、厨房から出てきた。
サーシャも一緒。
「Brady got a role?(ブレイディが役を?)」
「That’s wonderful!(素晴らしいわ!)」
ブレイディは、嬉しそうだった。
「Thanks! Thanks everyone! I… I can’t believe it!(ありがとう!みんなありがとう!信じられないよ!)」
そして、リュックからレッドブルを取り出した。
「Celebratory Red Bull!(祝杯のレッドブル!)」
「…Put that away」
ヴィクターが言った。
「What? Why?(え?なんで?)」
「You’re an actor now. Professionals don’t drink that garbage(お前は今や俳優だ。プロはあんなゴミを飲まない)」
ヴィクターは、奥からウォッカのボトルを取り出した。
「This. Vodka. Like a real artist(これだ。ウォッカ。本物の芸術家はこれを飲む)」
イヴァンナが、帳簿を持って現れた。
「Papa, that’s from the store inventory(パパ、それは店の在庫よ)」
「…」
ヴィクターは、ボトルをしまった。
「Fine. Just… don’t drink Red Bull before the show(分かった。ただ…公演前にレッドブルはやめろ)」
「No promises!(約束はできない!)」
シーン2: 家族への報告
その夜、田所家のアパート
トシキが、リビングで話していた。
カヨ、健一、シンディが聞いている。
「Brady got a lead role. eight personalities in one play(ブレイディが主役を取った。1つの劇で8つの人格だって)」
「Eight? How does that even work?(8つ?どういう演劇なんだ?)」
健一が聞いた。
「I don’t know. But he’s really excited(分からない。でもすごく興奮してた)」
「That’s great! We should support him!(素晴らしいわ!応援しましょう!)」
シンディが言った。
カヨは、少し考えていた。
「When’s the show?(公演はいつ?)」
「Two weeks from Saturday. Small theatre in downtown(2週間後の土曜日だって。ダウンタウンの小さな劇場)」
「We’ll go. All of us(行きましょう。みんなで)」
「Really?(本当に?)」
健一が聞いた。
「Brady supported Toshiki at the marathon. We support him back(ブレイディはマラソンでトシキとの縁もあるし。私たちも彼を応援しなきゃね)」
シンディが、頷いた。
「I’ll tell Amy too(エイミーにも伝えるわ)」
「Good. Make it a group outing(いいわね。みんなで行きましょう)」
シーン3: 劇団の稽古場、初日
翌日、午後2時
小さな倉庫を改装した稽古場。
ブレイディが、入ってきた。
中には、若手演出家デヴォンと、数人の劇団員。
デヴォン・クロス(27歳):
長髪、黒縁メガネ、タートルネック。
いかにも「芸術家」という雰囲気。
「Brady! Welcome! Ready to deconstruct identity?(ブレイディ、来たね!それじゃあアイデンティティ解体ショーを始めようか!) 」
「Uh… sure?(ええと…始める?)」
「Great! Let me introduce the team(最高だよ!チームを紹介しよう)」
女優A - クレア(24): 金髪、痩せ型
俳優B - マーカス(26): 筋肉質、ビーニー帽
舞台監督 - ジャスミン(29): 短髪、クリップボード持ち
「Now, Brady. Do you understand the concept of this play?(さて、ブレイディ。この劇のコンセプトを理解してる?)」
「Uh… multiple personalities?(ええと…多重人格?)」
「Exactly! But it’s more than that! It’s a commentary on how modern society fragments our identity! We’re all Jekyll and Hyde! We’re all superheroes and villains! We’re all liars and truth-tellers!(その通り!でも本質はもっと深い!現代社会が僕たちのアイデンティティをどう切り刻んでるか暴くんだ。みんなジキルでハイド、ヒーローであり悪党。嘘つきで真実の語り手なんだよ!)」
「…Right」
全く理解していない顔。
「Now! Let’s start with the script reading! Brady, you’ll read all eight parts!(では!台本読みから始めよう!ブレイディ、8つの役全部読んで!)」
台本を渡された。
ブレイディは、ページをめくった。
「…This is 80 pages. And I’m in every scene(80ページある。そして全シーンに出てる)」
小声で呟いた。
「Of course! You’re the protagonist! All eight of them!(もちろんだ!君が主人公だ!8人全員が!)」
シーン4: 台本読み
「OK, start from page 1. Scene 1: Dr. Jekyll’s lab.(じゃあ1ページ目から。シーン1:ジキル博士の研究室)」
ブレイディ、台本を読み始めた。
ジキルの声で。
「I am a man of science. I seek to understand the duality of human nature.(私は科学者だ。人間の二面性を研究している)」
「Good! Now, he drinks the potion. Switch to Hyde!(いいぞ!さあ、彼は薬を飲む。ハイドに切り替えて!)」
ブレイディ、声を低く、荒々しくした。
「I am free! Free from morality! Free from—(俺は自由だ!道徳も関係ない!—自由だ)」
「YES! Now, suddenly, Hyde realizes he’s actually Claude! A reporter!(そうだ!よし、突然、ハイドは自分が実はクロードだと気づく!記者だ!)」
「Wait, what?(待って、何?)」
ブレイディが困惑した。
「Just go with it! Claude appears!(流れに乗って!クロードが現れる!)」
ブレイディ、急に明るい声に切り替えた。
「I must find the truth! But first… where’s the public toilet?(真実を探さなければ!だけどまず…公衆便所はどこだ?)」
クレアが、横で笑いをこらえている。
「Perfect! Now, he goes to the toilet, takes off his glasses, puts on a cape, and becomes… Claude of Steel!(完璧!さあ、彼はトイレに行って、メガネを外して、マントをつけて…クロード・オブ・スティールになる!)」
ブレイディ、急にマントをつけて戻ってきた。
仁王立ち。
「Evil shall not prevail! Justice is eternal! The wicked will be punished!(悪は滅びる!正義は永遠だ!悪人には容赦しない!)」
ジャスミンも、横で笑いをこらえている。
「YES! Now, Claude of Steel spots a villain! React!(そうだ!クロード・オブ・スティール、悪人を発見!リアクションして!)」
ブレイディ、遠くを指差した。
「You there! I see the darkness in your heart! Surrender now, or face the consequences!(そこのお前!お前の心の闇が見える!今すぐ降参しろ、さもなくば覚悟しろ!)」
「Perfect! But wait — he hears a phone ringing. He must go back to being Claude the reporter!(完璧!でも待て—電話が鳴る。彼は記者のクロードに戻らなければ!)」
ブレイディ、急いでマントを外してメガネをかけた。
「I must find the truth! But first… where’s the public toilet?(真実を探さなければ!だけどまず…公衆便所はどこだ?)」
マーカスが、小声で言った。
「Just roll with it, man(流れに任せとけよ)」
シーン5: ブレイディの自慢
休憩時間
みんな、コーヒーを飲んでいる。
ブレイディは、クレアと話していた。
「So, Brady, you’ve done a lot of auditions, right?(ブレイディ、たくさんオーディション受けてきたんでしょ?)」
「Yeah. 52 failures. This is my first success(ああ。52回失敗。これが初めての成功だ)」
「That’s dedication(頑張ったのね)」
「Thanks. Actually, I know some people in Hollywood(ありがとう。実は、ハリウッドに知り合いがいるんだ)」
マーカスが興味津々で近づいてきた。
「Really? Who?(本当?誰?)」
「Kenichi Tadokoro. You know, the guy who wrote AND starred in ‘Digital Ghost’?(田所健一。ほら、『デジタル・ゴースト』を書いて主演した人)」
「WHAT!?(何!?)」
全員が振り返った。
デヴォンが駆け寄ってくる。
「THE Kenichi Tadokoro!? The one who wrote that AI novel that became a Schpiegel film!?(あの田所健一!?AIで小説書いてシュピーゲル映画になった!?)」
「Yeah. He’s actually a friend of a friend. I met him a few times(ああ。友達の友達なんだ。何回か会ったことある)」
クレアが興奮してる。
「Wait! He was the lead actor too, right? He played Ray, the hacker!(待って!彼、主演だったでしょ?ハッカーのレイ!)」
「Yeah! Ray was cool! The whole cyberpunk hacker thing!(そう!レイはカッコよかった!あのサイバーパンクハッカーの感じ!)」
マーカスが言った。
「I watched that movie. The action scenes were amazing. And those actresses… Emma, Lupita…(あの映画見た。アクションシーンが素晴らしかった。それであの女優たち…エマ、ルピタ…)」
「Yeah, Emma played his girlfriend. She was gorgeous(そう、エマが彼のガールフレンド役。めちゃくちゃ美人だった)」
クレアが頷いた。
「But honestly… I barely remember Kenichi as Ray. The movie was great, but he was kind of… forgettable?(だけどぶっちゃけ…健一がレイだったってあんまり覚えてないかも。映画は素晴らしかったけど、彼はちょっと…印象薄い気がしなかった?)」
マーカスも頷いた。
「Yeah. I remember the action, the visuals, the actresses. But the main character was… kind of bland?(うん。アクション、映像、女優たちは覚えてる。でも主人公は…地味だったかも)」
ブレイディは、少し困った顔をした。
「Well, he’s a nice guy. Really humble(まあ、いい人だよ。すごく謙虚)」
デヴォンの目が輝き始めた。
「Wait. WAIT. Brady.(待て。待て。ブレイディ)」
「What?(何?)」
「Kenichi created AND played Ray. He’s a HACKER! A cyberpunk hero!(健一がレイを創って演じた。ハッカーだ!サイバーパンクヒーロー!)」
「…Yeah?(そうだよ?)」
「What if… what if we get Kenichi… to play Ray… AGAIN… in OUR play!(もし…もし健一に…レイを演じてもらったら…もう一度…私たちの劇で!)」
「What? Why?(何?なぜ?)」
「Your play is about fragmented identity, right? Multiple personalities! What if one of Brady’s personalities… is RAY THE HACKER! The author comes back to play his own creation in a completely different context! It’s META! It’s BRILLIANT!(君の劇は断片化されたアイデンティティがテーマだろ?多重人格!もしブレイディの人格の1つが…ハッカーのレイだったら!作者が完全に異なる文脈で自分の創造物を再び演じる!メタだ!ブリリアントだ!)」
マーカスが割り込んだ。
「But that doesn’t make any sense. Why would a hacker be inside someone’s multiple personalities?(でも意味が通らないだろ。なぜハッカーが誰かの多重人格の中にいるんだ?)」
「EXACTLY! It doesn’t make sense! That’s ABSURDIST THEATRE! We’re breaking the fourth wall! We’re mixing realities!(その通り!意味が通らない!それこそ不条理演劇だ!観客との境界なんてぶっ壊して、現実と舞台をごちゃ混ぜにしてるんだ!)」
デヴォンは興奮している。
ブレイディは困惑している。
「But… I don’t think Kenichi would…(でも…健一さんがそんなこと…)」
「Call him! ASK him! This is GENIUS!(電話して!聞いてみて!これは天才的だ!)」
「I… I don’t have his number. But I know someone who does(俺…彼の番号は持ってない。でも持ってる人を知ってる)」
「CALL THEM! NOW!(電話して!今すぐ!)」
クレアが小声で言った。
「This is going to be… weird(これ…変なことになりそう)」
マーカスも頷いた。
「Yeah. But if it works… it could be amazing. Or a total disaster(うん。でもうまくいけば…素晴らしいものができるかも。それか完全な大惨事)」
シーン6: トシキへの電話
Bakery Karamazova
トシキの携帯が鳴った。
「Hello?(もしもし?)」
「Toshiki! It’s Brady! I need a huge favor!(トシキ!ブレイディだ!大きな頼みがあるんだ!)」
電話越しに、ブレイディの興奮した声。
「What’s wrong?(どうしたの?)」
「Can I talk to your dad? About the movie? About Ray?(お父さんと話せる?映画について?レイについて?)」
トシキ、少し困惑。
サーシャを見た。
「About… Ray? You mean Dad’s movie?(レイについて?お父さんの映画のこと?)」
「Yes! The director wants him to play Ray again! In our play! As one of my multiple personalities! It’s… it’s complicated. Can you just ask him?(そう!監督が彼にまたレイを演じてほしいって!僕らの劇で!僕の多重人格の1つとして!複雑なんだ。とにかく聞いてくれる?)」
トシキは、困惑した顔でサーシャを見た。
「Wait… Ray as one of your multiple personalities? Like… Jekyll, Hyde, and… Ray the hacker?(待って…レイが君の多重人格の1つ?つまり…ジキル、ハイド、そして…ハッカーのレイ?)」
「YES! EXACTLY!(そう!その通り!)」
「…That makes no sense(意味が分からない)」
「I KNOW! That’s what I said! But the director says it’s ‘meta’ and ‘post-modern’!(分かってる!俺もそう言った!でも監督が『メタ』で『ポストモダン』だって興奮してるんだ!)」
トシキは、頭を抱えた。
「…I’ll ask(聞いてみる)」
「Thanks, man! You’re a lifesaver!(ありがとう!助かる!)」
電話を切った。
サーシャが、パン生地をこねながら聞いた。
「What was that?(何だったの?)」
「Brady. Something about Dad playing Ray again. In his play. With multiple personalities(ブレイディ。お父さんがまたレイを演じるとか。彼の劇で。多重人格と一緒に)」
「…I have no idea what that means(全く意味が分からないわね)」
「Me neither(俺も)」
トシキは、溜息をついた。
「I’ll explain it to Dad tonight. If I can(今夜お父さんに説明する。どうなるか分からないけど)」
サーシャは、笑いながら言った。
「Good luck(頑張って)」
月木曜日、8時更新




