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話の終わり

 狩谷警部補の背後から咳払いが聞こえた。

 狩谷警部補が入室してから、ずっと背後で椅子に腰掛けて話を聞いていた久慈という名の女性警部補が、話の先を促そうと咳払いをしているのだ。

「という事で、人は色々と欲望を抱くし、色々な手段で満たそうとするのだけど」

 狩谷警部補は少し身を乗り出すと、机の上で両手を組んで続けた。

「せっかくの御指名でやって来たからさ、正直に話してほしいんだ」

 真っ直ぐに私を見つめる、狩谷警部補の目には悲しみが浮かんでいる、ように私には見えた。

「田町涼ちゃん。君は、どうして父親の田町巡査部長を殺したんだい?涼ちゃんは、どんな欲望を満たそうとしたんだい?」

 父とは長年の付き合いで、互いの家を訪問し合う仲だった。幼い頃から私を可愛がり、又気遣ってくれる人だった。

 大切な存在を、その娘が自らの手で殺めた事に、狩谷警部補は大きな悲しみを抱き悔やんでいるのだと、私は感じていた。


 私は正面に座る田町涼が、なぜ父親を殺害したのか? その欲望を抱くに至った理由に対する好奇心を抑える事が出来なかった。

 刑事課に配属されて以降、『理由を知る』事が私の欲望なのだ。満たすためなら、多少の演技・演出も厭わない。

 欲望にギラつきそうになる目に、私は悲しみの感情を覆い被せて問い掛けた。

「田町涼ちゃん。君は、どうして父親の田町巡査部長を殺したんだい?涼ちゃんは、どんな欲望を満たそうとしたんだい?」


           (終)

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