白雪ちゃんのインタビュー
トイレに入った白雪ちゃん。実は、トイレには先客の有明朝日ちゃんがいました。白雪ちゃんのクラスメイトでもある朝日ちゃんは明るい茶系の髪をした美少女です。彼女は、胸は貧相ですが、心が広いです。モブではありませんよ。
あっ、白雪ちゃんが朝日ちゃんと鉢合わせしました――。
「私って、かわいいですか?」
すっきりした私は、早速、トイレでかち合った朝日ちゃんに聞きました。
朝日ちゃんはハンカチを口に咥え、手を洗っています。ちなみに朝日ちゃんはカリスマインスタグラマーらしいです。お化粧――お化粧は品位気位の高い、白雪ちゃんの女学院では、ある程度は許容されている――も上手くて、制服の着こなしも他の生徒とは一線を画している彼女は、女の子にもモテそうなくらいに、キラキラしてます。実際よく告られるらしいです。女の子の恋人いるんでしょうか? 少し気になりますね。
そんな朝日ちゃんが私を見て、困り顔になりました。
「……」
察してって目をしてます。さしもの私も、秒で察しました。
「あ、口が塞がってますね。すみません。終わってからでいいです。隣失礼します」
私も手を洗います。水浸しにすると用務員の御手洗さんが激怒するので、細心の注意を払います。
バイ菌さんに付け入る隙を与えないために、入念に手を洗っていると、手をキレイキレイした朝日ちゃんが細長くてすらりとした指を顎の辺りに当て、答えてくれました。
「う~ん。ビジュアルは満点で実際かわいいんだケド、そうやって聞いちゃうのは心象が悪いカモ? マイナス20ポイントで80ポイントってところダネ♪」
指パッチンが炸裂しました。
――ガーン
私はガックリ膝を落としました。――ここトイレなので心の中で。
「ふふ。落ち込まないで、白雪ちゃんは、充分かわいいヨ」
朝日ちゃんはウインクしながら、私の頬っぺをツンとしました。
「…………」
ハッ! ブンブンと顔を振ります。水をバシャバシャ顔にぶっかけます。冷たいです!
「ど、どうしたのカナ、白雪ちゃん?」
私としたことが、呆然としてしまいました。朝日ちゃんの方が上手みたいです。うっかり、胸キュンポイントを奪取されてしまいましたね。
「な、なんでもありません! 決して堕ちたというわけでは……!」
慌てて弁解します。
「にしては顔赤いヨネー?」
よってくる朝日ちゃんに顔を覗きこまれて、どぎまぎします。朝日ちゃんは、目元ぱっちりで睫毛が長いです。
「そ、そうですか? ちょっちょーっと、暖房が効きすぎているみたいですね! おそらく!」
両手でパタパタあおぐポーズをとり、必死でごまかします。
一方その頃、きょどってる白雪ちゃんを見て、怪訝な顔をしている朝日ちゃんは――、
暖房なんてついてないはずなんだケドナー。
心中で突っ込みを入れていた。
ややあって朝日ちゃんは、あっ、ソッカ。と思い当たる。
またうっかり、かわいこちゃんに惚れられちゃったのカモ。私って罪な女ダネ。
原因に気づいてしまった朝日ちゃんは心中でほくそ笑んで、自惚れた。
実は、そんな朝日ちゃんの胸中は表情に思いっきり出てました。
それを見た、白雪ちゃん、心中で呟きます。
うわぁ、朝日ちゃんが、ニマニマと笑み浮かべてます。かわいいです。
思わず、じーと見詰めてしまいました。
「あれは百合の花が咲く兆候かもしれないわね」
「ですね」
そんな白雪ちゃんと朝日ちゃんをトイレの外から覗き見て、二人組の少女が評しました。その呟きは白雪ちゃんの耳にも朝日ちゃんの耳にも、届きませんでした。
「じゃ、バイバイ♪」
「バイバイです」
にっこり笑顔な朝日ちゃんと別れます。朝日ちゃんは移動教室で別のクラスにいきました。
私も移動します。移動しながら、理解しました。
――なるほど。かわいいのは私であり、朝日ちゃんであった。ということですね。
白雪ちゃんは、なにやら納得したようです。自分かわいい認識はぶれないんですね。
そんな朝日ちゃんの魅力に気づいてしまった白雪ちゃんは、すっかり朝日ちゃんの虜となっておりました。
放課後。授業を終え、頭のなかが朝日ちゃんでいっぱいになっていた白雪ちゃんは、
にしても、インスタグラムのアカウントってどうやって作成するのでしょう?
脳内会議に――『ググるのがいいと思いますよ』――かけるまでもありませんでした。ブレイン白雪ちゃんに言われた通りに、ググります。
朝日ちゃんをフォローしたい一心で、
「オッケーグーグル」
『お話しください』
「インスタグラムの始め方を教えてください。お願いします」
ググりました。
即座に、白雪ちゃんのスマホ画面に検索結果が表示されました。
《まずはインスタグラムのアプリをインストールします》
「ですよねー」
というわけで、インストールしました。通信量は大丈夫です。全生徒に開放されているWi-Fiを私的に使わせていただきましたので。
《電話番号またはメールアドレスで登録を選択します》
「電話番号を…………入力しました」
『――♪』
すぐにメールがきました。認証コードみたいです。ということで、それと氏名とパスワードを入力します。
アカウントの完成です! さすが私! 天才かもしれません!
白雪ちゃんはぴょんぴょん飛んで自画自賛しました。
そしてその日の内に、朝日ちゃんのインスタグラムのフォロワーが一人増えましたとさ。めでたしめでたし。
『――♪』
LINEの着信音が鳴りました。なんでしょう? 見てみます。
『インスタグラムフォローしてくれてありがとネ!』
おお、意中の朝日ちゃんからLINEがきましたよ。嬉しかったので、とりあえずガッツポーズしました。
そしたら♡マークを浮かべて尻尾を振る犬耳美少女さんのスタンプもきました。かわいいですね。
にしても――、
「レスポンス早いですね!」
あまりの早さに驚きです。こうやって女の子をたらしこむのでしょうか? その手腕に脱帽です。敬意を表しておきます。
『どういたしまして^^』
と返信して、スマホを閉じました。
ん? 脳内庭園のテラスから信号が、
『ブレイン白雪ちゃんの思い通りにはさせません。私たちも本体白雪ちゃんの、脳裏に積極的に存在を刻み込みます。いいですね?』
議長白雪ちゃんの声がしたと思ったら、
『『『おーです!』』』
なんか脳内がガヤガヤし始めました。ミニマム白雪ちゃんたちは、優雅にお茶会を行っているようです。パシリ白雪ちゃんが私の体液茶を注がされています。茶菓子は私の脂肪クッキーみたいですね。馴れました。
にしても管理人白雪ちゃんはいないようですね。せわしなく働いているのでしょう。感心感心。それに比べて、このミニマム白雪ちゃんときたら、喧しいですね。SP白雪ちゃんたちの背景っぷりを少しは見習ってくださいよ。
『この私がフォローしたのですから、朝日ちゃんも私を意識したはずですよ』
自信過剰白雪ちゃんが、自意識過剰になってます。朝日ちゃんは、そんなチョロくないでしょうに。
『べ、別に朝日ちゃんのことなんて好きとかではないんですからね!』
ツンデレ白雪ちゃんがツンツンしだしました。すると――、
『私は朝日ちゃんのこと大好きですよ!』
身を乗り出した熱血白雪ちゃんがこっぱずかしいこと言いました。
『熱血白雪ちゃん、やめなさい』
それを冷徹白雪ちゃんが背中を引っ張って席に戻しながら、諌めました。
『熱血白雪ちゃんの言うことは至極全う、正しいです! 私も朝日ちゃんのことが大好きです!!』
ハイテンション白雪ちゃんが熱血白雪ちゃんの肩を持ちます。若干キャラ被ってませんか?
『ハイテンション白雪ちゃん、喧しいですよ。本体白雪ちゃんもそう思ってるはずです』
ローテンション白雪ちゃんは私の意見を代弁してくれました。ありがたいことです。
『好きとか嫌いとかそういうの面倒くさいですよ……そんなことより如何に怠けるかが大事です』
欠伸をまじえてそう言ったのは、怠け者白雪ちゃんです。
『そうですよ……やめましょう……』
ダウナー白雪ちゃんが発言しただけで、一気に場の空気が暗く重くなりました。
『やれやれです。これだからダウナー白雪ちゃんは、脳内会議からあぶれてしまうのですよ』
やれやれ系白雪ちゃんがため息をつきました。
『そうやって除け者にするのは良くないと思います。私はダウナー白雪ちゃんも白雪ちゃんの仲間に入れてあげたいです』
人気者白雪ちゃんが皆に説きました。菩薩ですね。
『『『(ジーン)』』』
多数の白雪ちゃんの心が打たれました。
しかし――、そうでないものもおりました。
『で、でもですよ。私たちは選りすぐりのエリートではありませんか?』
自信過剰白雪ちゃんが食い下がります。
『そこは熱血白雪ちゃんとハイテンション白雪ちゃんのホットな感じで相殺シクヨロでーす♪』
チャラい白雪ちゃんがピースを額に当てました。
『負の感情なんて消えた方がいいんですよ……』
『明るい方たちでうまくやってください……』
『やってられないです……』
ダウナー白雪ちゃんと、ローテンション白雪ちゃん、おまけにチャラい白雪ちゃんが落ち込んでます。ダウナーが伝染したようです。
『そんなこと言わないでくださいよ!』
『消えるなんて寂しいこと言わないでください! 同じ白雪ちゃんじゃないですか!!』
『私は負の感情ですら、優秀なはずです』
ハイテンション白雪ちゃんと、熱血白雪ちゃんが説得します。というより、自信過剰白雪ちゃんの自信はどこから来るのでしょう。
すると――、
『そうですね。やる気がないのなら消えてください』
冷徹白雪ちゃんが冷ややかに吐き捨てます。
『面倒くさいのでそれでいいです』
怠け者白雪ちゃんが面倒くさそうに賛同しました。
すると、冷徹白雪ちゃんイラっとしたようです。冷気がすごい。
『まずは怠け者白雪ちゃんから消しましょうか?』
『やめてください、冷徹白雪ちゃん!』
『そうです! エリート白雪ちゃん同士で、争うのはやめましょうよ! ただでさえ悪いことを企てる白雪ちゃんが一杯いるんです! 私たちは手を取り合わなければなりません!』
熱血白雪ちゃんと人気者白雪ちゃんが叫びました。
『消えるなんて言ったら嫌いになっちゃいます……。この中から誰かが消えるなんてそんなの悲しすぎますよ……』
ツンデレ白雪ちゃんが呟きました。目には涙が浮かんでいます。
『『『デレデレ白雪ちゃん……』』』
ツンデレ白雪ちゃんの涙が効いたのでしょうか、なんか皆が握手しだして和解しました。
『やれやれです』
やれやれ系白雪ちゃんがやれやれしました。
『これにて閉幕です。おつかれさまでした』
結局なんもしてない議長白雪ちゃんが偉そうに閉幕宣言すると、幕が下りました。パシリ白雪ちゃんが下ろしたのでしょうかね。
……ふぅ、やっと終わりましたか、白雪ちゃんたちの喜劇は。
ため息をつきます。変なものを見せられて、どっと疲れました。ゲームでもして息抜きしましょうかね。
空調が快適だからってPC部員でもないのにPC室にいた私は、PCの元へ向かいます。
この話の登場人物の紹介
・冬野白雪ちゃん:主人公。雪のように白い髪(白髪言うな。)で、氷のような透き通ったアイスブルーの瞳の美少女。敬語調で喋る。意外と有名人で『白雪ちゃん』と呼ばれることが多い。うっかり朝日ちゃんを意識してしまう。
・有明朝日ちゃん:白雪ちゃんのクラスメイト。明るい茶系の髪をした美少女。胸は貧相だけど、心が広い。カリスマインスタグラマー。お化粧が上手く、制服の着こなしからして、他の生徒とは一線を画す。なんかキラキラしている。女の子からよく告白されるらしい。語尾が特徴的。ちゃっかり白雪ちゃんに意識されてしまう。
・御手洗さん:用務員のおばさん。トイレを汚くすると、激怒する。白雪ちゃんの回想に出た。
・二人組の少女:白雪ちゃんと朝日ちゃんの間に百合の花が開花した瞬間の目撃者。
・ブレイン白雪ちゃん:もっとも有能なミニマム白雪ちゃん。本体白雪ちゃんから一番信頼されている。しかし、白雪ちゃん以上の知能は持ち合わせていない。実は、白雪ちゃんの脳味噌の化身だったりする。有能すぎるゆえか脳内会議からハブられている。脳内会議とは犬猿の仲。白雪ちゃんとの連絡を、度々、脳内会議に妨害されてしまっている。脳内会議の面々曰く、『私たちの出番がなくなる。白雪ちゃんに必要とされなくなったり忘れられるのは辛い』とのこと。
・議長白雪ちゃん:脳内会議の議長をやっているミニマム白雪ちゃん。なんか偉そう。
・パシリ白雪ちゃん:皆にパシられる憐れなミニマム白雪ちゃん。パシられるためだけに生まれてきた存在で発言しない。
・管理人白雪ちゃん:広大な脳内庭園とミニマム白雪ちゃんの住居を管理している。一人では管理が大変なので分裂して、何人もいて、本体の意識を分身体全てが共有している。忙しいからか脳内会議には参加できていない。
・SP白雪ちゃん:要ミニマム白雪ちゃんの警護担当。本体白雪ちゃんのシンパであり、本体の白雪ちゃんが、他の白雪ちゃんに乗っ取られないように活動してもいる。
・自信過剰白雪ちゃん:自信に満ち溢れているミニマム白雪ちゃん。
・ツンデレ白雪ちゃん:素直じゃないミニマム白雪ちゃん。
・熱血白雪ちゃん:常時熱血なミニマム白雪ちゃん。ハキハキした口調。暑苦しい。彼女から発される熱気で脳内会議場が暑くなるが、冷徹白雪ちゃんから発される冷たさが相殺している。
・冷徹白雪ちゃん:常時冷徹なミニマム白雪ちゃん。冷えきった目をしている。彼女をみたものは背後に吹雪が吹雪いているのを、幻視するであろう。実は、出された意見の一刀両断が大好き。
・ハイテンション白雪ちゃん:常時ハイテンションなミニマム白雪ちゃん。
・ローテンション白雪ちゃん:常時ローテンションなミニマム白雪ちゃん。
・怠け者白雪ちゃん:常時怠けていて『めんどくさいです』が口癖のミニマム白雪ちゃん。会議中、椅子にだらしなく寄りかかっているのが目につく。今回は喋った。
・ダウナー白雪ちゃん:ダウナーなミニマム白雪ちゃん。場の雰囲気を暗くすることに長けており、周囲のミニマム白雪ちゃんに伝染してしまうことも。それが原因か脳内会議から、ハブられてしまう。
・やれやれ系白雪ちゃん:『やれやれです』が口癖なミニマム白雪ちゃん。
・人気者白雪ちゃん:皆のアイドルな白雪ちゃん。心なしか輝いている感じがする。
・チャラい白雪ちゃん:パリピなミニマム白雪ちゃん。会議の決定権を握っている?
用語
・胸キュンポイント――胸がキュンとすると加算される。白雪ちゃん発案の白雪ちゃんだけしか存在を知らないであろうポイント。
・(白雪ちゃんの)脳内空想庭園――白雪ちゃんの脳内に存在する庭園。敷地は広大なのか、スカイツリーが立ってしまうほど。
・(白雪ちゃんの)脳内会議――度々、白雪ちゃんの脳内で行われている会議のこと。白雪ちゃんが困ったときに白雪ちゃんの意思のもと行われ、ミニマムな白雪ちゃんたちが話し合いをする。実は、参加しているミニマム白雪ちゃんと管理人白雪ちゃんは全員、本体白雪ちゃんの味方であり保護者のような存在でもある。
・ミニマム白雪ちゃん――白雪ちゃんの脳内に生息するミニマムな白雪ちゃん。白雪ちゃんの脳内庭園に住み着いていて、管理もしてくれている。白雪ちゃんの依頼で、度々、エリートなミニマム白雪ちゃんが脳内で会議を繰り広げる。実は、表面化できなかった白雪ちゃんの別人格。とはいうものの、一応白雪ちゃんの一部なので、滲み出ることも。
・エリート(ミニマム白雪ちゃん)――本体白雪ちゃんに忠誠を誓っている、ミニマム白雪ちゃんのことらしい。




