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白雪ちゃんの華麗なる日々  作者: アサギリスタレ
白雪ちゃんの華麗なる日々
4/7

「かわいい」という言葉の魔力

 どっかの聖が付いちゃってる意識高そうな、女学院にて。

 とある教室の一角、二人の少女が向かい合って、存在していました。

 なぜか立っている白色の髪をした(――白髪(しらが)は禁句)美少女は、名を冬野(ふゆの)白雪(しらゆき)ちゃんと言います。主人公ですのでちゃんと覚えておいてください。

 そしてなぜか座っている桜の色の髪をした美少女は、胡桃沢(くるみさわ)櫻子(さくらこ)ちゃんと言います。たぶん主要人物です。覚えておいて損はないでしょう。

 櫻子ちゃんの前には、なぜか湯気の立つティーカップがあります。おそらくお嬢様学校なので、お上品なのでしょう。もし自販機が出来ても、ペットボトルでの水分補給は邪道と撤去されていそうですね。

 ところで、白雪ちゃんと櫻子ちゃん、二人は一体どんな関係なのでしょう? お友だちなのでしょうか? それともそれ以上の……いけない関係なのかもしれませんが。

 なにはともあれ、その辺も乞うご期待といったところですね。


『……あのう、そろそろ始めてください』


 白雪ちゃんからお願いされてしまいました。今回の解説はここらでお開きとします。

 では、そろそろ白雪ちゃんの視点で物語が始まります。

 3、2、1。

 スタート♪


「ゆっきーって、かわいいよね」


 同じクラスの友人である櫻子ちゃんの、紅色の艶やかな唇が動いたかと思うと、唐突に『かわいい』というワードが出てきました。

 予想だにしなかった出来事が引き金(トリガー)となり、私は混乱(パニック)を催します。

 かわいい!? え、かわいいって!? あのかわいいで、そのかわいいなんですか!?

 私の脳内でかわいいがゲシュタルト崩壊しました。パニクってしまい、ワニの代替にかわいいが吹き出ます。それも無数に。叩くなんて出来ません。

 とにもかくにも。

 まずいです。かわいいです。かわいいなんです。かわいいなんですよ。

 嬉しくて、脳内空想庭園にスカイツリーが屹立しました。てへ☆ミ

 とりあえず落ち着くことにします。


「すぅー、はぁー……」


 櫻子ちゃんに背を向けて、こっそり深呼吸して、気を落ち着けます。スカイツリーが東京タワーになって、本能寺になって燃えて灰となりました。きっと犯人は光秀さんです。信長さんの無事を祈ります。……って違いますね。

 地の文も落ち着けます。


「ゆっきー、どうしたの?」


 気を取り直して。

 桜みたいな色の髪の美人さんにそう言われると照れますが、ここは平常心。努めて、冷静沈着に返します。


「……そうですか?」


 きょとんとする櫻子ちゃんに白雪ちゃんは気付きませんでした……。

 ――白雪ちゃん発の地の文へ戻る。――

 私は「かわいいですかね……?」って、首をかしげる仕草をしました。もちろん、内心ウッキウッキで。


「うんうん、かわいいよ。笑みが隠せてなくて、喜んでるのがわかるよ。声もリズミカルに弾んじゃってて、すごくキュートだね」


「かわいいなんですか! かわいいなんですね!」


 ※補足。櫻子ちゃんに太鼓判を押された、白雪ちゃんの耳には『かわいい』しか入っていません。


「うん、姫だよ、姫!」


 櫻子ちゃんは親指を立てて、微笑みました。

 私は、心の中で「(よっしゃ!)」しました。

 心中が『嬉しい』で溢れました。

 あっ、尿意が。

 急にきました。とりあえず、私は犬ではありませんよ! と、どこかの誰かに弁明します。


「花摘みにいきます!」


 敬礼してました。自然と発動した敬礼は、完璧に決まった気がします。知らぬ間に、染み付いた天性の素質でしょうか。――って、そんなことよりトイレですね。漏らしたりしたら大失態です。さしもの私も、小一時間ナイーブになってしまうので、優雅に急がねばなりません。櫻子ちゃんに背を向けて、私は教室を出ることにしますると。


「いってらっしゃい」


 櫻子ちゃんに笑顔で見送られました。振り向いて、「……えっと」適切な動作が思い浮かびませんでしたので、脳内会議に委ねました。

 場面は脳内へ切り替わります。

 白雪ちゃんの脳内には、ミニマムな白雪ちゃんがいっぱいいました。個性豊かです。

 そんな個性豊かな面子が繰り広げる脳内会議のはじまりはじまり。


『本体から委ねられてしまいました。やれやれです』


 やれやれ系白雪ちゃんがため息を交えつつ、本体白雪ちゃんの依頼を受理しました。


『全く困ったものですね。本体白雪ちゃんときたら、困ったら何かと押し付けてくるんですから……。し、仕方ないから協力してあげます』


 ツンデレ白雪ちゃんがデレました。プイッとそっぽを向きます、


『委ねられたからには期待に応えます。私ならできます』


 自信過剰白雪ちゃんがどや顔で発言しました。


『はい! あの娘を参考にしましょう』


 ハイテンション白雪ちゃんが急に発言しました。

 それに顔をしかめたローテンション白雪ちゃんは問いかけます。


『どの娘ですか? あの娘ではわかりませんよ』


『相談しましょう』


 人気者白雪ちゃんが提案します。

 他の白雪ちゃんたちの視線が一転集中します。


『『『そうしましょう!』』』


 白雪ちゃん一同が言いました。ツンデレ白雪ちゃんもこっそり乗っかって合わせてました、ツンデレですね。

 そしてハイテンション白雪ちゃんの煮え切らない発言が形を成した時、白熱の議論が勃発します。熱血な白雪ちゃんの案を、冷徹な白雪ちゃんが叩き切りました!! そんな感じで、白雪ちゃんたちが言い争い、やがて議論が煮詰まりました。


『それが結論でいいですか』


 議長白雪ちゃんが偉そうに決を採りました。


『『『意義なし!』』』


 皆がOKして、


『オッケーです♪』


 最後にチャラい白雪ちゃんがゴーサインを出します。

 議長白雪ちゃんが、にっこり笑みを浮かべて、解散宣言。脳内議場から、散り散りに去っていく白雪ちゃんたち、とそれに付いていくSP白雪ちゃん。そして残されたのはパシリ白雪ちゃん、と護衛のSP白雪ちゃん。パシリ白雪ちゃんが本体へと情報を伝え――。

 白雪ちゃんに結論が届きます。

 この間0コンマ3秒。白雪ちゃんの脳内会議を終了します。ご清聴ありがとうございました。

 場面は白雪ちゃんの脳内から女学院へと戻ります。白雪ちゃんに地の文の権利を返します。


 発地の文権が返ってきましたので、私発の地の文を再開しますね。

 ありがたいことに即座に、脳内の私たちが結論を出してくれました。『軽く片手をあげゆっくり握る。そしてあとは笑みを浮かべておけば間違いない』との脳内議決に従いました。添え物として「うふ♡」なんて言っちゃいます。

 すると、櫻子ちゃんの頭上に♪マークを幻視しました。これは好感触です。櫻子ちゃんの胸キュンポイントを稼げた気がします。

 櫻子ちゃんはにっこりと手を振り返してくれました。

 そして私は、優雅に廊下を歩きます。はしたないのでかけたり(ダッシュ)はしません。自然と鼻が唄を紡ぎます。足もタップ、ステップしてました。コサックはしてません。

 そんな私の行き先はトイレです。お花を摘みにいくのです。

 ちなみに、トイレは縦文字だと便所とか(こっちは今の時代はあまり使わないですが……)厠ですが、この学校に通うお嬢様の端くれとして、少しでも響きのよい言葉を使うのです。便所や厠という単語を生み出してくださった方に、ごめんなさい。

 一瞬逸れた思想はすぐに、『かわいい』へとシフトしました。

 脳内に響き渡る、壊れたラジオみたく繰り返し再生(リピート)される櫻子ちゃんの音声(ボイス)。それは段々と、まさしくASMRのようになっていき、横に櫻子ちゃんがいて耳元で囁いているんじゃないか、そんなような感じに幻視幻聴してしまう。

 ――そうして白雪ちゃんは自然に夢幻へと誘われた。

 たぶん私はかわいいのでしょう。

 白雪ちゃんは、るんるんモードに突入してしまった……!

 かわいいは白雪ちゃん的に、胸にピンポイントにキュン♡と突き刺さる単語(ワード)だったのでしょうか……!?

 矢文にかわいいと書かれたダーツの矢が白雪ちゃんを撃ち抜く幻想がどっかで放映されました。


「あっ、白雪ちゃんだ」


 通りすがりの女の子が、白雪ちゃんに声をかけました。白雪ちゃんはそのユーモラスな存在……もとい美麗な容姿ゆえ学院での知名度が高く、ちょっとした有名人なのです。ちなみに白雪ちゃんは彼女のことを知りません。彼女に悪気はないので許してあげてください。


「ワタシイズソーキュート!」


 白雪ちゃん、声に出しちゃってます。たとえこの発言を後で思い返したとしても、彼女は、自分のかわいさを自負しているので、残念ながら、羞恥に悶えるようなことは、おそらくないでしょう。

 声高なお声は廊下から下手するとあちこちの教室内までに響き渡り、白雪ちゃんは、皆の注目を一挙に集めました。廊下中の視線が彼女へと突き刺さります。しかし彼女は、構うことなく、るんるんモードを続行します。


「あっ……」


 そんな白雪ちゃんの唐突な発信に、通りすがりの女の子が引きました。頬がピクピクひきつって、片足が少し後ろへと……。

 ハイテンションな白雪ちゃんはその女の子に気づかず、脇を通りすぎます。くるりんくるりんと徐に回転(ターン)しながら、


「かわいい私は、ベリーベリー、ラズベリー♪」


 ああ、いけません。根拠のない自信が白雪ちゃんを増長させてしまいました……! 白雪ちゃんにとってのかわいいは、極めてエッセンシャルな要素だったのでしょうか……!? とにかく、誰か早くなんとかしてあげてください!


「ラズベリー? どうしたの白雪ちゃん……?」


 担任の先生が、蝶のように舞い、ランランランとスキップなんてしているまさしく挙動不審な白雪ちゃんに声をかけましたが、アホの子にしか見えない鱗粉を撒き散らす白雪ちゃんは気づきませんでした。お外でなら職務質問されそうな勢いなので、「ちょっと待って白雪ちゃん……」と追いますが、白雪ちゃんは「るんるんるん♪」と喜色満面の様子でふわりふわりとしていて捕まりません。存在がぶれて多重に見える白雪ちゃんを幻視した担任の先生は「……先生、もうだめ……」と疲れ果ててバテました。


「ちょっとどうしたんですか、先生!?」


 とある女生徒が心配して駆け寄りました。


「……し、ら、ゆ、き……」


 担任の先生がダイイング・メッセージ(死なないけど)して「……ガクッ」と意識プッツンすると、合点がいった様子で「ならしょうがないですね」と女生徒は自然に納得を示し(てしまい)ました。

 白雪ちゃん相手ならこうなってもしょうがないらしいですよ……?

 そうとは知らず、白雪ちゃんは自信たっぷりマシマシてんこ盛りだくだくにかわいいをふんだんに盛り付け。


「最高にハイな気分って、きっとこれのことですね!」


 そんな白雪ちゃんは有頂天。天にも昇るとはこのことかと。そして一瞬、幽体離脱して、天井を突き破り、大空の彼方までびゅーんと飛翔します。嬉しすぎるのでぐるんぐるん……ではもの足りず、ぎゅるるるんと、雲を突き破りつつ、洗濯機にぶちこまれた洗濯物のような勢いで、旋回もします。巻き込まれた雲はひっちゃっかめっちゃっか。それをばったり目撃してしまった、カラスやムクドリが絶叫みたいな鳴き声あげて、飛行のバランス崩し、あわや墜落しそうになりつつも立て直し、そのまま大慌てでいづこへと逃げていってしまい、パイロットさんも、まさしく青天の霹靂なそれに、ビックリしちゃうけど、パイロットさんはプロ根性で冷静さを保ち、ちゃんと安全運転してました。大幅に迂回されてしまいましたが……。(これは後に、【白い何かが・ライジングしていた・雪のようで・綺麗だった】で通称SRYK(しらゆき)なんて名付けられて都市伝説になってしまうけれど、それを白雪ちゃんが知ることはなかったのでした。)

 ――戻ってきました。


「――結論。私はとてもかわいいらしいです」

 

 一人納得した、白雪ちゃんは、すっかり天狗になっていましたとさ。めでたしめでたし。

この話の登場人物

冬野(ふゆの)白雪(しらゆき)ちゃん:主人公。雪のように白い髪(白髪(しらが)言うな。)で、氷のような透き通ったアイスブルーの瞳の美少女。

胡桃沢(くるみさわ)櫻子(さくらこ)ちゃん:白雪ちゃんのクラスメイト。桜のような桃色の髪をした美少女。白雪ちゃんの友人。

・やれやれ系白雪ちゃん:『やれやれです』が口癖なミニマム白雪ちゃん。

・ツンデレ白雪ちゃん:素直じゃないミニマム白雪ちゃん。

・自信過剰白雪ちゃん:自信に満ち溢れているミニマム白雪ちゃん。

・ハイテンション白雪ちゃん:常時ハイテンションなミニマム白雪ちゃん。

・ローテンション白雪ちゃん:常時ローテンションなミニマム白雪ちゃん。

・人気者白雪ちゃん:皆のアイドルなミニマム白雪ちゃん。心なしかピカピカ輝いている気がする。

・熱血白雪ちゃん:常時熱血なミニマム白雪ちゃん。ハキハキとしている。暑苦しい。彼女から発される熱気で脳内会議場が暑くなるが、冷徹白雪ちゃんから発される冷たさが相殺している。

・冷徹白雪ちゃん:常時冷徹なミニマム白雪ちゃん。冷えきった目をしている。彼女をみたものは背後に吹雪が吹雪いているのを、幻視するであろう。実は、出された意見の一刀両断が大好き。

・議長白雪ちゃん:脳内会議の議長をやっているミニマム白雪ちゃん。なんか偉そう。

・チャラい白雪ちゃん:パリピなミニマム白雪ちゃん。会議の決定権を握っている?

・パシリ白雪ちゃん:皆にパシられる憐れなミニマム白雪ちゃん。

・怠け者白雪ちゃん:今回は喋ってないけど、賛成と手はあげていた、実は居たミニマム白雪ちゃん。椅子にだらしなく寄りかかっている。常時怠けていて『めんどくさいです』が口癖。

・SP白雪ちゃん:要ミニマム白雪ちゃんの警護担当。本体白雪ちゃんのシンパであり、本体の白雪ちゃんが、他の白雪ちゃんに乗っ取られないように活動してもいる。

・管理人白雪ちゃん:広大な脳内庭園とミニマム白雪ちゃんの住居を管理している。一人では管理が大変なので分裂して、何人もいて、本体の意識を分身体全てが共有している。一応席だけはあるが、脳内会議には忙しくて参加できておらず、今回は裏方をやっていた、白雪ちゃんがやらかした後始末である。

・通りすがりの女の子:白雪ちゃんが最高にハイだったせいで、モブと化してしまった少女。

・担任の先生:女性。


用語

・(白雪ちゃんの)脳内空想庭園――白雪ちゃんの脳内に存在する庭園。敷地は広大なのか、スカイツリーが立ってしまうほど。

・(白雪ちゃんの)脳内会議――度々、白雪ちゃんの脳内で行われている会議のこと。白雪ちゃんが困ったときに白雪ちゃんの意思のもと行われ、ミニマムな白雪ちゃんたちが話し合いをする。実は、参加しているミニマム白雪ちゃんと管理人白雪ちゃんは全員、本体白雪ちゃんの味方であり保護者のような存在でもある。

・ミニマム白雪ちゃん――白雪ちゃんの脳内に生息するミニマムな白雪ちゃん。白雪ちゃんの脳内庭園に住み着いていて、管理もしてくれている。白雪ちゃんの依頼で、度々、エリートなミニマム白雪ちゃんが脳内で会議を繰り広げる。実は、表面化できなかった白雪ちゃんの別人格。とはいうものの、一応白雪ちゃんの一部なので、滲み出ることも。

・胸キュンポイント――胸がキュンとすると加算される。白雪ちゃん発案の白雪ちゃんだけしか存在を知らないであろうポイント。

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