11話:六つの頭の化物
「・・・迷った」
俺達は今四十九層にいる。
四十九層は遺跡みたいになっていて、すぐに迷ってしまう。
「クソっ、階段はどこにあるんだよー」
俺は遺跡の中で叫ぶ。四十九層に来て、もう一時間は経っているのに、なかなか階段が見つからない。
すると、索敵に魔物の反応が二つ現れる。囲まれたか。
「イリス、敵だ。囲まれた」
「わかりました。後ろは任せてください!」
「おう、頼んだ」
気配察知で敵の正体を見ると、どうやらゴーレムのようだ。
ゴーレムは近づいてくると、両手を合わせて振り下ろしてくるが、俺はそれを回避して、クレアで横に一閃して終わらせる。
イリスも終わったようだ。
「次はイリスが道を選んでくれ、俺じゃあたどり着けない」
「わかりました、頑張ります!」
そうしてイリスを先頭に、遺跡の中を歩いてくとその三十分後、下へ行く階段にたどり着く。
「マジかよ、俺は一時間以上かかっても、見つけられなかったのに」
「た、たまたまですよ。ほら、早く行きましょう」
「ああ、そうだな」
そうして俺達は五十層の階段を降りる。
✽
五十層に降りた瞬間、索敵に多数の敵の反応が現れる。その数、二十。
だが、降りて見ても何もいない。
どういうことだ?俺は気配察知で敵の気配を探ると、壁一面に敵の反応二十。つまりーーー
「イリス!ゴーレムだ、この壁はゴーレムだ壁じゃない!」
そう言った瞬間、壁・ゴーレムが一斉に攻撃を仕掛けてくる。
俺はクレアを地面に突き立て、
「闇の鎖よ、汝を束縛せよ《闇縛鎖》」
シャドウチェインで敵を束縛するが、束縛をできなかったゴーレムがイリスを攻撃して、もう一体が背後から俺を攻撃する。
「がはっ!」
俺は壁に直撃して、ゴーレムの束縛が解ける。
ゴーレムは俺に接近してパンチを繰り出してくるが、
“魔力撃”
俺は右手に魔力を込めて、ゴーレムの腕ごと砕き割る。
“縮地”
俺は縮地でゴーレムの後ろに周り、レイナを抜刀して斬ると同時に走り出し、斜め前のゴーレムに斬りかかる。
なんの抵抗もなく、その体が二つに割れる。
両サイドからゴーレムが攻撃を仕掛けてくるが、
“身体強化”
俺は身体強化で足を強化して跳躍し、天井を蹴ってゴーレムを真っ二つにしてから、地面に着いた瞬間横に飛び、前にいるゴーレムを横に一閃する。
数が多いな、魔法を使うか。
俺はクレアとレイナを地面に突き立て、
「汝を貫け、光り輝く聖槍《聖光槍》」
詠唱を唱えると光り輝く槍が十本出現し、ゴーレムを貫いていく。
イリスは身体強化で手と足を強化し、ゴーレムを五体倒しゴーレムが全滅する。
「ふぅ〜、一瞬危なかったな」
「そうですね、死を覚悟しました」
「一番進んだパーティーも、これにやられたのかもしれないな」
「その可能性はありますね」
「よし、じゃあ先に進むか」
俺達は一本道を歩き、十分後ついにボス部屋の前にたどり着くが、扉の前に本が二冊と一枚の紙が置かれている。
紙を見ると何やら文字が書いてある。
『どうやら俺達はこれまでのようだ。
壁に化けたゴーレムによってパーティーはほぼ壊滅して、なんとかここまで来たが体力がもうもたない。
そこで、次にここまで来る冒険者にこの二冊の魔法書を託そうと思う。
一つは火の魔法書だ。これを読んで適性があると火の魔法を覚えられるが適性がないと覚えられない。
二つ目は詠唱破棄の魔法書だ。これは読むとほとんどのやつが覚えられる。
詠唱を破棄できるが、詠唱をすると魔法の威力が上がる。詠唱を破棄するか破棄しないかは、その時のお前次第だ。
この二冊の魔法書を読んで、最下層の百層まで行ってくれ。頼むぞ。』
紙の下には火の魔法書と詠唱破棄の魔法書が置かれている。
「これ、どうする?」
「読んでいいんじゃないですか」
「だよな。イリス、読むか?」
「いえ、主様が読んでください」
「いいのか?」
「はい。もちろんです」
「そうか、じゃあ遠慮なく」
そう言って俺は火の魔法書を開くと、脳に火魔法の情報が一気に流れ込んでくる。
〈火魔法を取得しました〉
次は詠唱破棄の魔法書だ。詠唱破棄の魔法書を開くと詠唱破棄の情報が流れてくる。
〈詠唱破棄を取得しました〉
「よし、これで二つとも覚えた」
「火魔法の適性があったんですか!」
「ああ、そうみたいだな」
「さすが主様です!」
「ありがとよ。じゃあ行くか」
「はい」
俺達は扉の中に入り、一瞬の浮遊感の後にボス部屋にたどり着く。
そこには柱が等間隔に建っており、その奥には首が六本ありそれぞれの頭に紋章みたいなものが刻まれており、右から赤青白紫黄緑色の紋章が刻まれている。
あれはーーーヒュドラか?
俺は鑑定で魔物の正体を見る。
名前:ヒュドラ
LV.80
HP:850
MP:980
STR(筋力):700
DEF(防御力):750
AGL(素早さ):800
LUK(運):70
スキル
火魔法LV4
氷魔法LV4
雷魔法LV3
風魔法LV3
回復魔法LV4
毒魔法LV3
あの頭一つ一つが違う魔法を使うってことか。厄介だな。
すると赤い紋章の頭が火のブレスを放つ。
俺は横に飛び柱の陰に隠れながら、
“魔弾”
魔弾で赤い紋章の頭を撃ち抜くが、白い紋章の頭が「クァー!」と叫ぶと赤い紋章の頭が光りに包まれ再生する。
チッ、回復魔法か。
「イリス、真ん中の白い紋章の頭を狙え!」
「わかりました」
イリスは詠唱を唱え雷の槍を生成すると、白い紋章の頭めがけて撃ち出すが、紫の紋章の頭が白い紋章の頭をかばう。
そう簡単には行かないよな。
俺はボヤきつつ作戦を考えて、
「《ファイアアロー》」
火の矢を白い紋章の頭めがけて撃ち出すが、青い紋章の頭が氷のブレスで火の矢を凍らす。
俺はクレアとレイナを抜刀して、ヒュドラめがけて走り出す。
遠距離攻撃がだめなら接近戦で勝負だ!
緑の紋章の頭が風の刃で攻撃してくるのを、クレアとレイナで相殺し、
“魔力解放”
クレアとレイナの魔力を解放して、緑の紋章の頭を斬り落とし、斬撃を飛ばして黄い紋章の頭を倒したが、赤い紋章の頭が火のブレスを放ってきて、俺はクレアとレイナをクロスさせ止めようとするが、壁に吹き飛ばされる。
「クソっ、あと四つだったのに」
俺は考える。どうやったら倒せる、俺が五つの頭を倒してイリスが白い紋章の頭を倒す。やっぱりこれが一番ベストだよな。
「イリス、俺が五つの頭をなんとかする。イリスは白い紋章の頭だけに集中してくれ」
「わかりました!」
よし、やるか。
「万物の根源たる紅き炎よ、森羅万象を焼き尽くす業火よ、我が敵を灰塵にせよ《爆裂業火球》」
俺が詠唱を唱えると頭上にある巨大な火の玉が、ヒュドラの紫黄緑色の頭めがけて飛んでいき、三つの頭と体が吹き飛び、俺はクレアとレイナを赤青色の頭に投擲して、その頭が爆ぜる。
「イリス今だ!」
イリスは雷を体に纏い一瞬で白い紋章の頭の目の前に移動し、雷を纏った足を振り抜き、白い紋章の頭が弾ける。
ヒュドラの体は地面に倒れる。
俺も地面に四つん這いの体制になる。
魔力を使いすぎた。魔力解放と爆裂業火球を使うと魔力がもたない。次からは気をつけないとな
「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ」
「さっきの魔法すごかったです!」
「確かに威力はすごいな。でも魔力の消費が激しすぎる。使いどころは考えないと」
俺達が話していると、
ゴゴゴ…
扉が開く音がする。
「行くか、未だ誰も行ったことのない新たな地へ」
「はい。私達なら行けます」
そうして俺達は、未だ誰も足を踏み入れたことのない地へ、進むのであった。




