58:卒業しても
これで最終回となります。
いろいろあったけど、私達は無事に5年生を終えた。
そして、春休みも終わり、6年生になった。
もちろん、恵利佳も一緒だ。
あの悲惨な未来は訪れることはなかった。
◆◇◆◇
夏休み。
私達はみんなでキャンプに行った。
5年生の時のキャンプのことを聞いた謙輔のお父さんが、恵利佳の為にキャンプを主催してくれたのだ。
場所はもっと近場だったけど、私達はキャンプを楽しんだ。
カレーは作らなかったけど、みんなで焼いたバーベキューは美味しかった。
謙輔達はカブトムシやクワガタをたくさん捕まえて満足そうだった。
そして、なぜか一緒に呼ばれていた恵利佳のお母さん。
謙輔のお父さんいわく、苦労してきたのだからたまにはこうして羽を伸ばして下さいとのこと。
そう言いながらも、謙輔のお父さんは恵利佳のお母さんにずっとデレデレしていた。
初めて聞いたんだけど、謙輔の家はお母さんが早くに亡くなって居なかったらしい。
これって、もしかすると……?
◇◆◇◆
冬休み。
みんなで雪遊びをした。
そんなに雪が降る地域じゃなかったのに、今年は結構降り積もった。
私達は、一緒にかまくらを作った。
綺麗な白色のかまくらを作りたかったんだけど、ちょっと雪の量が足りなくて土も混じってしまった。
それでも、みんなで作ったかまくらの中は暖かかった。
お正月には悠太郎と初詣に行った。
悠太郎は大吉を引いていたけど、私は小吉だった。
おみくじは高い所に結ぶといいらしいので、悠太郎に思いっきり高い所に結んでもらった。
その後、久しぶりにタコ公園に寄った。
去年まであった遊具は幾つか撤去されていた。
危険な遊具はこれからどんどん撤去されて行ってしまうらしい。
少し寂しいねと言った。
悠太郎の手がそっと私の髪に触れた。
その手は寒さを忘れるくらい温かく感じた。
私は、あの日の賭けの賞品を悠太郎に贈った。
その後は何となく恥ずかしくて、お互いにあまり話すことも無く家に帰った。
◆◇◆◇
春になり、私達は卒業式を迎える。
去年は卒業生を送る側だったけど、今年は送られる側だ。
何度も練習をした卒業式。
去年、卒業生を見送った時は泣いている人が多かった。
中学校でも学区が同じだから、みんな会えるはずなのに何でだろうって思ってた。
一人一人名前を呼ばれる。
校長先生は、一人一人に労いの言葉を掛ける。
私の番になり、名前を呼ばれて壇上に上がる。
練習した通りに卒業証書を受け取った。
そして、席へと戻って行く。
この6年間色んな事があったけど、この小学校で過ごすのも最後なんだ。
今までのことを振り返る──────
由美と友達になったきっかけは、小岩井が遊んでくれなくて寂しがってた私に声をかけてくれたのが始まりだった。
香り玉が流行った時、近所のおもちゃ屋さんに一緒に買いに行ったのも良い思い出だ。
喧嘩をしたこともあったけど、由美はいつでも私の一番の理解者で居てくれた。
辛いことがあると、同い年なのに由美は姉のように私を慰めてくれた。
悠太郎と琢也と順と朱音。
彼らとは遠足が切っ掛けで友達になった。
悠太郎の第一印象は、いけ好かないイケメン野郎だった。
女子達に囲まれて喜んでる軟弱な奴だと思ってたけど、実際は友情を何よりも大事にするいいやつだった。
頑固で負けず嫌いなところもあるけど、困ったことがあると誰よりも頼りになった。
琢也もああ見えて面倒見のいいやつだし、順もお堅いイメージがあったけど案外ユーモアな子だった。
朱音も最初はツンケンしてたけど、今では素直になってすっかりイメージが変わった。
謙輔達との出会いは最悪だった。
今では私を理解して、味方にまでなってくれたけど、下手をしたら彼らは最後まで私の敵だったのかもしれない。
恵利佳を悲惨な運命から救えたのは、彼らの功績が大きいと思う。
そして、恵利佳。
前世の私が助けることができなかった薄幸の少女。
貧乏な家に生まれ、父親は殺人犯。
ずっといじめられてきて、辛い運命を歩んできた。
運命の日までに彼女を救うことができ、前世での約束、“また友達に”も果たすことができた。
彼女は以前とは比べ物にならないほど明るくなった。
そのおかげもあって、今ではいじめも無くなった。
彼女の悪夢は消え去り、今日こうして卒業式を迎える。
歌が流れ、私達は退場する。
悲しくなることはないと思っていたのに、自然と涙が出てきた。
久しぶりに由美の胸を借りて泣いた。
由美も泣いていた。
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卒業式が終わった後、私達はあの神社に行った。
神様が本当にいるのかどうかはわからない。
けど、もしも願いが叶うなら、叶えてほしい願いが一つだけあった。
私達は神様に祈った。
『これからも変わらず、みんな一緒に居られますように』と────────
~おわり~
今まで私のこの拙い小説をお読みいただきまして、ありがとうございました。
ブクマを初めて貰った時の感動は今でも忘れていません。
初めて書いた小説で正直不安もありましたが、その後もブクマや評価をいただいて、絶対に最後まで書こうと励みになりました。
ちょっと最後は縮小してしまいましたけど、書きたかったことは書けたと思います。
最終章はあえてギャグパートっぽくしてみました。
微妙な感じになってしまいましたが、いじめが解決してはい終わりとは、あまりしたくなかったのです。
次の作品も書いておりますので、気が向いたらお読みいただければ幸いです。
働きアリが転生して町娘になるという変なお話ですけど(汗)
それでは、今まで本当にありがとうございました。
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※続編スタートしました。
http://ncode.syosetu.com/n7925da/




