12月31日
大晦日午後12時58分。
「後、二分で今年が終わるのかー」
テレビの端のデジタル時計を見ながら言ったのは私の妹、桜。
今年の年越し蕎麦作り担当で、ちいさいテーブルに四つ置いてある蕎麦は彼女の自信作。といっても冷水麺だけど。あっ、わさび入れすぎた。四人で囲う夕飯も慣れてきた。
「あ、俺年越しジャンプやらなきゃ」
椅子から立ち上がって飛ぶ体制になったのは私の弟、柳。
一番運動神経がいいんだけど、何かやるごとに物を壊して行くからやめて欲しい。
というより蕎麦つゆが揺れて溢れそう。
「やめろ葵、もしやるなら外出てやってこいよ」
私が言う前に葵をたしなめたのは私の兄、柊。
葵の後片付けはほとんど柊に回ってくるからもうやりたくないんだろうな。
「えー。年越しといったら年越しジャンプだろ?」
「いやいや、柳がいつ家を破壊するか皆ヒヤヒヤしてるんだよ?」
「流石に俺でもそんなことしないから!」
「お前この間割った花瓶で楓が怪我しただろ?忘れたとはいわせないぞ?」
あーそんなこともあったなー。遅刻しそうで慌ててた時柳が割ったんだよな。
そこに運悪く私が居合わせてちょっと手を切ったんだっけ。
それより私は麺と格闘するのに忙しいんだ。
「いやっ、うん、はい、すみません」
「結構前の話だし、私は気にしてないけど……あ、あと一分切った」
「姉さん、蕎麦に対する食いつきが……」
うなだれてる葵がかわいそうになったから少し助け舟を。せっかくの年越しなんだしね。一番最後の桜の言葉は聞かなかったことにしよう。私は清楚系少女でいたいんだ。断じて食べ物に目がないとかそんなことはないんだ、うん。
「来年こそはちゃんと勉強するぞー」
「それ、去年も聞いた気がするんだけどな……」
「柳のことだから気にしたら負けだ」
なんていうか、やっぱり楽しいんだな。この家族は。
テレビの中のアナウンサーがカウントダウンをはじめた。
あと少しで新しい年か。
「あけましておめでとうございます」
元旦午前0時00分。1年の始まり。




