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第二十話 真夜中の決闘 【計画実行の時】

ー颯 sideー


「馬鹿な…」


受け止められるなんて、思いもしなかった。


「あらあら、勝ったつもりでいたのかしら…。濃縹の刀を見て気づかないなんて、本当にダメね」


天音の言っている事が理解出来ない。刀を見てだと…?

天音の刀…そうだ、俺はどんな印象を抱いた?黒味・・がかったと感じたではないか。それが意味するところは…


「まさか…」


「やっと気づいたみたいね。一度見たことあるでしょ?」


「『あの男』と同じ力を持ってるのか。ということは、お前…まさか…⁉︎」


「その、まさかよ。あなた、白鷺家って聞いた事あるかしら?」


天音の言ってる事が頭に入ってこない。えっと…何だ?白鷺家…。

それよりもあいつ、あの男と同じ様に身内をやったんだな。

そして、あの力を手に入れたのか…。

ん?白鷺家…。どっかで聞いた事がある気がするが…どこだっただろうか。

思い出せない。


「その顔は聞いた事があるけど、思い出せないって感じね。覚えてないならこれ以上話す事はないわ」


そう言い放つと、天音はこちらの間合いに入ってくる。

下から薙ぎ払う様な太刀を躱し、近距離戦様に刀身に纏わせる光を凝縮する。先程伸ばした刀身が元の長さまで戻り、光を放つ。


直ぐに二撃目を打ち込んできた太刀を防ぎ、つばぜり合いとなる。


『このまま暫くつばぜり合いを続けてちょうだい』


天音が小声で話しかけてきた。

訝しく思い、聞く耳を持とうとせず離れようとするが直ぐに嗜められる。


『緋莉ちゃんとしん君の仇を取りたいんでしょ?』


妹と弟の名前を言われて、呼吸が止められた様な息苦しさを覚える。


『どうして、その名前を知っているんだ…?』


『本当に覚えてないのね…。詳しい話は後よ。私は正直あなたを測りかねているわ。あなたに肩入れすべきかそうでないのか…。私は私の目的の為に最善を尽くさないといけないのよ…。それにこのままだと…美稀さんは危ないわよ。言われなくても分かっているでしょ?』


確かにこの状況はマズイ。この女は簡単には仕留められない。そうなると美稀が命にやられてしまう可能性は高い。属性の優劣で圧倒的に不利だ。


『一つだけ聞かせてくれ。あんたの目的はなんだ?』


『あの男を殺す事よ…』


まさかの言葉に驚く。あの男を殺すだと…俺以外にもそんな事を考えてる奴がいるとは。

その言葉を鵜呑みにしてはいけないのだろうが、天音の瞳に偽りは感じられない。

信じてみるか…。


『まさか、俺以外にそんな事を考えてる奴がいるとはな。それで、あんたは俺に何がさせたいんだ?』


『簡単に言うと、命にやられなさい。死ぬって意味じゃなくね…負けた振りをしなさい』


どういう意図があって、そんな事を言うのだろうか…。そこだけは確認しないと。


『それをする理由は?』


『美稀さんの覚醒…。これが私があなたに協力する為の条件よ』


美稀の覚醒…。美稀はまだ伸び代が残っているのか。

覚醒ということは…まさか?


『それって…』


『多分あなたの予想通りよ。そろそろ怪しまれるから、離れるわよ。おそらく向こうも始まるわ。戦闘中はこちらへの注意も散漫になるはず。だから、こっちは適当にじゃれているぐらいでも気づかれない。でも、私は簡単にダメージ食らう程弱くないから、別に全力でかかってきてくれても構わないわ。命は弾道を操れるわ。普段は合理的な考えをしてるのだけど、戦闘に関しては少しだけSなのよ。最初に相手をいたぶるの。その様子を観察しながら、命がトドメを刺してくるタイミングでその弾丸をあなたが受けて。美稀さんには回避は無理だから』


なるほど。様子を窺いながら、土壇場で盾になるわけか。


『倒れたあなたを見て、覚醒出来たらあなたの勝ち。出来なければあなたの負けよ。美稀さんを救えるかもしれない唯一の手段。伸るか反るかはあなたの自由よ』


『やるよ。俺だけ生き残ったんじゃ、妹達に顔向け出来ないしな。美稀には生きて欲しい。あいつはきっと成功させる。信じてる』


『それじゃ、交渉成立。離れるわよ』


そう言って、天音は勢いよく後ろに下がる。


さて…美稀の様子を窺いながら、戦闘ごっこに興じますか…。




ー美稀 sideー


そんなやり取りが行われてるとも知らず、美稀は命と対峙している。


「恐怖で声も出ないか…」


命の吐き捨てる様な物言いに我を忘れる事なく、私は軽口を返す。


「全然そんな事ないわよ。あなたの方こそ、ビビってるんじゃないかしら?」


「お前、武器の属性の事も知らないのか?よくそんな口が利けるな」


「それだけで勝負は決まらないもの」


私はやれる…小さく呟いて、そう自分に言い聞かせる。


『緋莉…いくよ』


心の中でそう呟くと、脳内に複数の攻撃手段が浮かぶ。初手は何が好ましいかを考える。

相手が銃の為、遠距離は好ましくないだろう。

この位置からでも相手に届く攻撃手段はあるが、連射は出来ない為必ず隙が出来る。


刀身に焔を纏わせて、命との間合いを詰める為に走りだす。

命は銃口をこちらに向けて、銃と同じ瑠璃色の弾を撃ってくる。

水属性で間違いないだろう…。


叩き落とそう…そう判断して刀を構えてタイミングを見計らう。

相手との力関係が、どれほどの差か分からないので慎重にいくべきだろう。

足を止め、しっかり踏ん張った状態で迎撃態勢を整える。

タイミングを見据え、弾丸目掛けて左手に握った小太刀を振り下ろす。速度を重視の攻撃を選択する。


『捕らえた』


そう思った矢先…弾は軌道を変えた。美稀の小太刀をすり抜け、スカートの端を掠めた。


スパッツを履けば動きに気を取られる事はないだろうと思い、スカートにした。どんな理由であれ、颯と出かける事に変わりはないのだから…と。


「お気に入りだったのに…」


「二度とそれを着る機会なんてないんだ。お前は今日消えるんだから…」


呟くと同時に、命が銃を乱射してきた。

刀で防ごうと弾に触れた瞬間、吹き飛ばされ、バランスを崩してしまう。そこに追い打ちをかける様に、残りの弾がまたもや服を掠めていく。


あんな小さな弾にこれだけ体勢が崩れるとは思っていなかった。

緋莉に解決策を聞かないと…。


『緋莉…相手の弾が重いのだけど…ねぇ緋莉、どうしよ?』


尋ねてみるが、いくら待っても緋莉から返事がない。


『ちょっと緋莉ってば‼︎聞いてないの?』


返事がない事に苛立ちを覚える。


【なんで…?】


やっと緋莉が返事をした。だが、声が震えている…何かがおかしい。


『どうしたのよ、緋莉?私に分かる様に説明してよ‼︎』


こうして話している時間が惜しい。緋莉を現実に戻す為に少し声を荒げる。


【姉…逃げないと…このままだと殺られちゃう。相手も姉と同じぐらい武器を使いこなせてる。属性で劣ってるから勝てないよ、相性が悪過ぎる。兄に言わないと…私じゃどうして良いか分からないよ】


緋莉の態度がおかしかったのは、そういう事だったのね。

理解は出来たけど、ここで引くわけにはいかない。

颯の力になるって決めたんだ…私はこんな所で逃げるわけにはいかない。


「怖くて動けなくなったのか?お前つまらない奴だな。もう少し楽しめるかと期待したが、もういい。消えろ」


緋莉と相談していて身動きが取れなかったのを、怖気づいたと勘違いされたみたいね。

別にあんたなんかに、ビビってなんかないわよ。そりゃ、全くなかったかと聞かれたら、少しはあったけどさ…。


正面にいる命が、銃口をゆっくりこちらに向けてきているのが目に入る。


「私はこんな所で燻っている訳には行かないんだから。さっさと来なさいよ…相手になってあげるわ」


そう言い放ち、私は命の攻撃に備える…。




ー颯sideー


天音がこちらに体当たりをしてくる。


最初の鍔迫り合いからずっと攻防を繰り広げていた。

向こうから、手を抜いてる様に見えてはいないはずだ。

本気は出していないのだが、それは向こうもだろう。

負けるとは思わないが、天音の言う通り…俺は問題なくても美稀の方は厳しいのは、向こうを時折確認してて明らかだった。


『そろそろ、命が決めにかかるはずよ。どうやら落胆しているみたいね…美稀さんは嬲る価値がなかったようね。怒りの感情が攻撃に現れるでしょうから、あなた間違って死なない様にね』


天音の言葉に気が重くなる。水属性の攻撃だから、こちらが優勢とはいえ、攻撃をくらって無傷じゃ済まないだろう。


『わざわざ心配してくれて、どうも…』


『そろそろ準備して。私を吹っ飛ばして、その隙に助けに行ったように見せるのよ。今よ‼︎』


天音の言葉を合図に、刀に力を込めて振り払う。

その一撃で天音を吹き飛ばす。


「さて…飛び込みますか」


そう呟くと、全力で地を蹴り、一瞬で美稀の正面に立つ。

俺の目の前には命の撃った数多の弾が迫っている。

急所だけは避けないとな…そう思いながら、俺は弾を受けて吹き飛ばされる。


意識が飛びそうな衝撃が走るが、今はそれに耐えるしか道はない。

そう自分に強く言い聞かせ、崩れ落ちていくのだった…。

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