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私の羽化する日  作者: 月影 咲良
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レタス

 カーテンから漏れる薄い朝日の中、スマホの画面が点灯し、7時を知らせると共にアラームを奏でる。


 You は Shock!


 わあぁ!?


 私は寝ぼけ眼で飛び起きると、慌ててスマホを探しあて、画面をスライドさせてアラームを止める。


 びびびっくりした!

 昨日寝る前に「やる気に満ち溢れてパッと起きられそう!」とか思って、スマホのアラームを世紀末に救世主が現れる某アニメのテーマソングに変えていたのだった。

 うちの家はボロ屋なので音が意外と近所に筒抜けなのだ。うっかり寝過ごすとアラームが朝の静かな近隣住民に聴かれてしまう。

 おかげてある意味パッと目が覚めた。

 心臓に悪い....。




 朝の排泄をして体重を量る。

 123.8キロ。

 お、いい感じだ。


 このまま減っていけ~~減っていけ~~


 新鮮な水をヤカンにじゃっと入れて紅茶の準備をしたら、勝手口から外へ出る。

 庭の手前の方には青々と茂るレタス畑が広がっていた。

 私は恐る恐るレタスの葉の下の方をむしっていく。

 大丈夫、大丈夫。レタスはケムシはつかないからね~。と、自己暗示をかけながら。

 実際今のところ遭遇していない。

 聴くところによると、レタスの害虫はナメクジらしい。

 ナメクジなら平気だ。というか、ケムシ以外の虫は基本的に大丈夫だ。別に好きな訳でもないが。


 今年は瑠璃がレタスを植えたのだが、これが私としては本当に嬉しい。

 何が一番良いかと言うと、採っても採ってもまた伸びて収穫できるところだ。何だかんだとっても得した気分になる。それに、庭で採集をするのって物凄く楽しい!

 レタスは今回けっこうな量を植えたようで、今 食べるのが追い付かないくらいに できている。

 ちなみに作った本人の瑠璃は、基本作るだけで食べない。肉ばっかりだ。

 おかげで私の最近の朝食メニューは生姜紅茶とレタスのサラダだ。

 夜はレタスの中華スープにしている。これは市販の固形中華調味料に、醤油と胡麻油を少し垂らして香り付けしたものだ。具材は手抜きでレタスと干し網エビのみなので、ものすごく簡単にできる。そして地味に旨い。



 昨日雨が降ったせいで、今朝はまた一段とレタスが成長しており、大豊作になっていた。

 重い体にむち打って収穫した私の手元のビニール袋の中は、レタスでぱんばんだ。

 しっかり収穫しないと、傷んだら勿体ない。

 こんなに瑞々しく青々としているのに。



 いつも同じじゃ面白くないので、今朝は収穫したレタスでおぼろ豆腐とミョウガを包みながら、食べてみた。うん、美味しい!...でもちょっと 取りすぎたかなぁ。



 シャワーを浴びて、いつものようにスッピンで会社に向かう。

 しかし私は学習した!

 日焼け止めだけはしっかりと塗ることを。

 だって日光で大抵の物は風化するでしょう?

 日光さえ防げば効果がでかいんじゃないかと。

 小さな事だけど、今はまだ少しずつ納得しながら取り入れていければいいと思う。


 職場に付くと冥王が開口一番に「あれ?また太った?」と言ってきた。失礼な!127から123に痩せてますぅー!

 気付かないくらいならまだしも、太ったって....

 へこむわ....

 しかし、体重が減ったことはあえて言わない。

 言うとなぜか妨害されるからだ。私の自意識過剰かと思っていたが、実はバイブルにもその下りは書いてあった。

 なんと、今まで自分より下か同じくらいモッサリしていた身近な人が急に進化すると、自分だけ取り残されたように不安に感じるらしい。

 そして、安心するために足を引っ張って、元に戻させようとする、と。

 うんまぁ、....恐ろしいことに、その気持ち分からんでもない。

 でも、こちとら100キロ越えなんで、勘弁してください。



 しかし....何だかんだで123キロ代。

 痩せてんじゃん、私。

 これはアレだね。何気に続けてるダンスのおかげかね。

 いやあ、やっぱり継続って大事!

 休日は散歩もしてるしね。

 腹筋は諦めたけど。もう痛くないけど、腹にあまり継続的に力を入れると痛くなりそうな予兆を感じる。止めたほうがいいだろう。....正直、面白くもないしね。


 ふんふーん♪


 はっ、いかん。また調子にのってる。

 私が調子にのるとろくなことがないから、気を付けないと。

 私はまだまだ。まだまだよ~~。



 しかしその日、私はウキウキを押さえることができず、午前中ずっと高いテンションで仕事をしたため、冥王の堪にさわって怪光線で焼野原にされた。あえなくウキウキ気分は沈下。

 冥王、心狭すぎだ。




 その日も帰りはいつも通り深夜の1時半になった。

 もはや空いている店はコンビニにくらいしかない。

 私はこれもいつも通り、コンビニに入って獲物を物色していた。

 しかし、家に帰ったら大量のレタスが待っている。

 そう思うと弁当を買う手が止まる。


 うーん、面倒なんたんだけど、せっかく採ったレタスを腐らせる訳にはいくまい。昨日も食べきれなくて大変だったしな。


 家には、弁当とレタススープを食べたことで、食べきれなかった駄菓子が丸々残っている。

 私はしかたなく弁当を諦めて、お惣菜こコーナーでハムを買うことにした。サラダにのせたら美味しそうだ。スープに入れてもいい。

 その他はもう、今日はいいや。家に駄菓子もあるし。

 私は鶏ハムと、車の中で飲む用のペットボトルのお茶を買うと、コンビニを出た。


 大量に買うと落ち込むけど、少ないとそれはそれで淋しいものがあるな。

 車に乗り込みながらちょっと思った。

 もしかしたら食べることとは別に、買うことによってでもストレスを発散していたのかもしれない。

 でもそうだとして、じゃあ買い食いやめて他の事で発散っていうのも....想像つかないよね。

 田舎じゃ遊ぶ場所もないしね。時間もないしね。

 他の人はどうしてるのかな。

 今度聞いてみよう。



 家に帰ってレタススープをムシャムシャ食べると、やっぱりお腹が一杯になった。

 香り付けの胡麻油のせいか、思い付きで入れた生姜のせいか、物足りない感じもなくお腹の中からポッカポカだ。

 何か食べようとも思わない。


 ああ、今日もよく働いたなぁ!

 ちょっぴりくたびれの出ていた私は、その日は2曲だけ踊って、おやつも食べずに さっさと眠りについたのだった。




 次の日の朝、変えそびれた世紀末なメロディーと共に覚醒した私が目にしたのは、体重計の更に減った数値だった。


 122.6キロ。


 えっ!これ体重計壊れた?!

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