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ショック療法

 その夜、二人の少女は帰ってきた。

 ただし、

「うふふ、うふふふふ。おかしいなぁ、色んな人や物の上に変な数字があるなぁ潰さないとうふふふふふふ」←カンナ

「ごめんなさいごめんなさい卑屈でごめんなさいメンタル紙でごめんなさいああきっと皆私のことなんて糞虫としか思ってないのねあははは」←サクラ

 なんか、だいぶ人格が変わり果てていたが。

「……ジン、これは大丈夫なのか?」

 二人に対してどうすればいいか分からずオロオロしているアレンがジンに聞く。ジンは二人を見ながらふむふむと頷き、

「この程度で済むとは、二人とも精神力高いですねぇ」

「……これで軽いって、ジンの予想ではどうなると思ってたんだ?」

「まず人語を話しませんし、人の動きをしません」

「何があるんだ!? そのラーシャという女はいったい何をしてるんだ!?」

 アレンが思わず叫ぶと、ラーシャという言葉に二人が反応する。具体的には髪が重力に逆らって真上に上がった。

「「……ラーシャ」」

「……封護カホゴ

 何かを予測したジンが素早く呪文を唱え、二人に防護の魔法を放つ。白色の球体に二人は包まれていく。他の人たちも何故か嫌な予感がしたので各々防護の魔法をかけていく。

 そして、二人が爆発した。

「「ラーシャラーシャラーシャラーシャラーシャラーシャラーシャラーシャラーシャラーシャラーシャラーシャラーシャラーシャラーシャラーシャラーシャラァァァァァァァァァシャァァァァァァァァァッッッ!!」」

「な、なんだ!?」

 二人の叫びと共に莫大な魔力が周りへと放出される。まるで津波のような勢いを持つ魔力はジンたちが張った結界に当たり、一瞬でヒビを入れる。

「うおおおおお!? 結界にヒビが!?」

「慌てないでくださいアレン! 皆さん! ちょっとだけ持ち堪えてください」

 そう言うとジンは結界を解く。直後、他の人たちにとんでもない負荷が押しかかる。ジンが二人の魔力の半分近くを抑え込んでいたことがよく分かる勢いだった。

「じ、ジン! これはそんなに持たな……!」

 ジンは大きく息を吸い、そして叫ぶ。


「わあ二人とも! 裸になって踊ら

「シャッタァァァァァァチャァァァンス!!」


 ドッパァァン!! とギャグみたいに空間をぶち破り、結晶のような物を持ったラーシャが突撃してくる。その衝撃で結界を張っていたアレンたちはひっくり返り、結界が消え去る。

 魔力が来る! と身構えていたアレンたちだが、いつまで経っても衝撃も何も来ない。

 不思議に思いながらカンナとサクラの方を見てみると、二人とも視線がラーシャに固定され、さらには体全体がブルブルと震えていた。

 あら? とラーシャが二人の方を見て、何かガッカリしたような顔をする。

「裸じゃないし、踊ってない!? 騙したわねジャック!!」

「……正直、こんなのに騙されるそっちが悪いと思いますが」

 プンスカ、という擬音でも聞こえそうな感じに怒るラーシャに対し、サクラがビクンッと体を震わせる。

「分かりました! 一番サクラ! 裸踊りをやらせてもらいます!」

「ごぷぉ!?」

 アレンが突然のことに妙な叫び声を上げてしまうが、サクラは全く気にしない。服に手をかけ、勢いよく脱ごうとサクラをジンの仲間女性陣が必死で止めにかかる。

「ちょっと姫さん!?」

「止めないでください! 私の裸踊りで世界が救われるならこれくらいは――!!」

「姫さんの身に何が!?」

 ギャーギャーと騒いでいるのを見ながら、ジンはポツリと呟く。

「……まあ確かにラーシャならこの世界程度指先一つで壊せそうですが」

「……なぁ、あのラーシャという奴は人間なのか? 魔人の女王とか神とか言われても今なら納得できるんだが」

「人間だと本人は言ってますよ一応。……ほんと、一応ですが」

 そんなこんなしていると、カンナがジンの元に駆け寄り、ラーシャの視界から外れるようにジンを盾にして隠れる。

「あ、ラーシャは千里眼持ってますから、どこにいても見られてますよ」

「――っ!?」

 ジンの言葉に、カンナはなんか世界に対して絶望でもしたかのような顔をする。ジンの腕を掴み、縋るように言う。

「で、でも、ジンさんならラーシャさんを倒せますよね!? 倒せますよね!?」

「…………」

 カンナの言葉にジンはニコリと笑い、……そして視線を明後日の方へと向ける。

「……すいません無理です」

「うわあああああああああああん!!」

 ジンの無慈悲な言葉にカンナは絶望し、頭を抱えて蹲ってしまう。アレンはラーシャに懐疑的な視線を向けながらジンに聞く。

「ジンに勝てる奴が、本当に人間なのか……?」

「……それ、暗に私が人間辞めてると言ってませんか? というか真面目な話、ラーシャと私は全力で戦えませんよ。どう足掻いても、決着が着く前に世界が崩壊します」

「やはり人間辞めてるじゃないか」

 はぁ、と溜め息を吐きながらアレンはサクラの元へ行く。どうにかして落ち着かせるつもりか。

「……そういえば、何故私は呼ばれたの?」

「ああ言う人にはショック療法が一番ですからね」

「……つまり私の存在がショックと。ほうほう。つまり私と戦いたいということかな?」

「え、いや待って待ってください待てラーシャお前は駄目だってそんな勢いだけでやっていいレベルの威力じゃないんだってやめろ馬鹿宿が吹っ飛ぶ!?」

 ドッカンバッコン、と愉快な宿に鳴り響く。

 今日の夜は、中々長くなりそうだった。

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