語られない伝説・No.15
笑う。
「……ははっ」
笑う。
「……ふっははは」
笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う!
「「ははっ、ははははははははははははははははははははっ! はははははははははははははははははははははははははははは!!」」
轟音が連続する。
剣と槍がぶつかり合う度に、地面が抉り取られていく。
いつの間にか、二人は避けるということをしなくなっていた。
ファルムニルはニルヴァルナの背に乗り、高空から急降下し、とんでもない速度を出しながら槍をジャックへと突き刺す。
対してジャックは大地を踏みしめ、全体重を乗せた防御などのことを完全に無視した全力の一撃を槍へとぶつける。
金属と金属がぶつかり合う音が鳴り響き、衝突しあった際に発生した莫大なエネルギーが周りに撒き散らされ、大地が悲鳴を上げた。
何度も何度も、同じことを繰り返す。
楽しそうに、己の武器を振るい続ける。
そんなことを百回以上も繰り返していると、ビギリ! という音がジャックの右腕した。直後、右腕の感覚が完全に消え去り、ピクリとも動かなくなる。
「…………」
ファルムニルはゆっくりと地上へと降りてきていた。見れば相棒であるニルヴァルナが息切れを起こしている。急降下攻撃を何度もやったのだから当然だろう。
ジャックは右腕を使えずに、ファルムニルは半身と共に戦えない。
だが、
「……まだだ」
ジャックは剣を左に持ち替える。ファルムニルはニルヴァルナを背にし、槍をジャックへ向ける。
「まだまだまだまだ!! こんな楽しいこと、簡単に終わらすわけにはいかねえよな!!」
二人は獣の如く吠え、全く同じタイミングで目の前の敵に全力の一撃を叩き込む。
その直前、轟ッ!! という音がし、二人の間を白い光が通り抜けた。
「「っ!?」」
光に反応して二人は大きく後ろへと下がる。光は途中で勢いを弱め、結晶のようなものを散らせながら甲高い音と共に消え去る。
「止まりなさい!」
声のする方へと振り向くと、ナスタが右手をファルムニルへと向けて立っていた。
「ドラブラエの王、ファルムニル・ドラブラント! 貴方の臣下は既に全員拘束済みです! おとなしく投降を――」
「――威力は弱の中」
対して、ファルムニルはナスタの言葉を無視し、槍を向ける。
「放出は制限せず。猛焔の紅槍よ、獰猛なる焔をもって全てを焼き尽くせ!」
「あの馬鹿!?」
ジャックは慌てて近づき、ナスタを抱えて逃げ出そうとする。
だがナスタは慌てず、その右手を向けたまま叫ぶ。
「聖滅!」
声と共にナスタの右手に光が宿り、槍となってファルムニルへと飛んでいく。
槍は猛焔の紅槍の穂先を掠めると猛焔の紅槍は弾けるように穂先の向きが変わり、何もない空の方へと向く。
轟ッ!! という炎が空気を燃やす音がした。炎が出る勢いに負けたのか、ファルムニルがバランスを崩し、地面に頭を打つ。
ナスタは右手を向けたまま叫ぶ。
「貴方がその槍を使うならば、私は何度でも同じことをさせてもらいます!」
ファルムニルは一瞬で起き上がり、ナスタの体を貫こうととんでもない速さでナスタへと近づき、槍を振るう。
その槍を弾き飛ばしながらジャックも叫ぶ。
「お前街の方はどうしたんだ!?」
「既に全員縛り付けています! ラーシャさんに任せて、私はジャックさんの援護に!」
「……そうかいそうかいご苦労さん」
不満そうな顔をしながらそんなことを言うジャックにを見て、ナスタは首を傾げる。
ファルムニルは二人がそんなことをしている間に立ち上がり、猛焔の紅槍の柄で地面を叩く。
「……偶像を支配するは紅き焔。降り立つは穂先を向けられし緑の地」
何か、呪文のようなものを、ファルムニルは呟く。それと同時に猛焔の紅槍が紅い炎を纏い、さらにはファルムニルの体が透け始める。
「――神の槍に炎は舞い戻る。偶像に宿りし幻想よ、緑の地より消え、竜の地へと還らん!!」
その言葉と同時に、ファルムニルとニルヴァルナの体が炎に変わる。
炎から、ファルムニルの声が響く。
『また会おう傭兵。次に会う時は、本物の体で相手になろう』
その言葉を最後に、炎が消え去る。ファルムニルとニルヴァルナの姿は、完全に消え去った。
「……今のは?」
「多分、陰炎だと思います。炎の高位魔法で、自身の分身を作って何処か遠くに送り飛ばすという」
「……つまり、俺らは偽物と必死こいて戦ってたわけか」
ジャックは街の方へと目を向ける。遠目で見ても、街は酷い有り様だった。
頭を掻きながら、ジャックは溜め息を吐く。
「……街の方に戻るか。瓦礫だの何だので大変だろうしな」
「…………」
「って、なんで俺がそんなことを気にしないといけないんだ? ったくもう、俺の仕事じゃないよなぁ……」
「…………」
「……ナスタ? なんでお前さっきから黙ってんだ?」
ジャックがナスタの方を向こうとすると、ポンッとナスタがジャックの背中に体を預けてきた。
「お、おい?」
「……疲れた」
「は?」
「……さっきの聖滅、実はかなりの魔力を込めてたんですよ。そうじゃなくても竜騎士たちを拘束するのに魔力を使っててスッカラカンですし」
「ふーん……ナスタ?」
ジャックはナスタから掛けられてくる重さが増えたのを感じ、少し後ろを向いてみる。
「……すぅ……すぅ」
「……寝てやがるし……!」




