王城にて
「よく来てくれた。英雄ジャック殿」
厳格な雰囲気を持った王は、最初にそう言った
「初めまして、マーケティヌス王。早速で悪いのですが、現状の説明を頼めるでしょうか?」
「うむ。しかしその前に、ジャック殿の後ろにいるその者達について教えてもらえないか?」
ジンの後ろにはカンナ達がいる。ただ、彼らの姿は知らない人からすれば怖いだろう
まず、数人を除いて顔をマスクで隠している。その上武装してるもんだから誰が見ても山賊か傭兵である
カンナは沢山の人の視線を集める容姿をしていて目立つし、アレンは騎士の姿だがこの面子に混じってる時点でまともな人に思われてないし、サクラ姫はフード付きローブで顔を隠してるから怪しさ全開である
「彼らは私と共に戦う仲間です。彼らの実力は私が保証いたします」
「そうか。それならばよい」
と、そこでタイミングを見計らっていた大臣らしき男が幾つかの書類と地図を持ってきた
「こちらの書類は、魔獣の被害についてです」
そう言ってジンに書類を渡し、大臣は地図を広げる
「そしてこちらは、我が国で出没している魔獣達の出現予測地です」
地図には幾つかの赤の三角があり、その周りには大量の赤い点があった
「ある程度場所は絞り込めてるのですか」
「うむ。しかし我が国の兵士達は、長き平穏に浸っていたせいでまともに魔獣と戦える者がおらんのだ。兵士達も皆、その身を削って民を護ってくれているのだが・・・」
「それで、私達は何をすれば?その予想地に赴き、確かめてくればよいのですか?」
「うむ。とはいえ、ジャック殿もその仲間達も長旅で疲れているだろう。今日はゆっくりと、休んでくだされ」
「ご厚意、感謝します」
「つっかれたー!」
城から出て第一にジンの仲間はそう言った
ジンは呆れながらも一応言う
「貴方立ってただけじゃないですか」
「それでもあんな雰囲気の中にいるだけで疲れるんだよ。なあ皆」
「確かにねぇ」
「なんかこう、しっかりしなきゃと思っちゃってね」
「だろ?」
ジンの仲間達はそんなことを言いながらうんうんと頷いている
ジンはこっそりとため息を吐いた
「王が宿の手配をしてくれたので、皆さんはそちらに向かって荷物を置いてきてもらえますか?」
「ジンさんは?」
「私は少々調べ物をしてきます。すぐに行くのでご心配なく」
「・・・・・分かった。んじゃあ皆行くぞー!わざわざ王が手配してくれた宿ってことは、美味しいものが沢山出るってことだからな!」
「「「おー‼︎」」」
城の近くで騒ぐジンの仲間達。少々ジンは心配になってきた
「お、おー」
カンナも付いて行けてないようだった
「おーい、行くぞそこの騎士様と姫様」
「わかりました」
「じゃあな、ジン」
アレンやサクラ姫達もカンナ達に付いて行く
その途中、仲間の一人が振り向いた
「一応気をつけろよ、ジンさん」
それだけを言うと、彼もさっさと宿へと向かっていった
「・・・・・・まあ、素直に聞いておきますか」
ぽつりとジンは呟き、腰の剣に手をかける
「起動」
一言と共に剣を引き抜く。その剣に刃はないが、代わりに光のような物が剣に集まり、刃に似た形状を取る
刃の形をしてはいるが、この剣に殺傷能力はない。これは刃物というよりは鈍器だ
だが、それで良かった
(今の私が使う武器なんて、これで充分なんですよね)
「さて、なかなかに懐かしい物がありますね」
ジンの周りには、いつの間にか五人の人がいた。それぞれの手にはダガーが握られている
全身を黒装束で包んでいるため、男か女かも分からない。だが、彼らにも一つの共通点があった
彼らの服の肩や胸には、月と鎌が描かれた紋章があった
「『冥府の眷属』ですか、懐かしいですねえ。二百年経ってもまだいるとは」
彼らは何も言わない。ただ黙ってジンを見ている
「ま、何だっていいんですが」
ジンは剣を彼らに向け、告げる
「とりあえず、私も休みたいので適当に蹴ちらさせてもらいますね」
ダンッ‼︎と五人同時に跳躍し、ジンへと襲いかかり
そして・・・




