語られない伝説・No.2
「というわけで大陸の命綱、シルスベールにご到着でーす」
「なんでそんなに元気なんですか・・・?」
ナスタの脚は震えているが、その程度のことを気にするジャックではなかった
ここはシルスベール。国土の半分以上を農業に使い、海に面した部分は漁業が盛んらしい
また、開拓する際に出た大量の木材を家を作るのに使い、殆どの家が木造のようだ
「さて、まずは・・・・」
「宿を取りましょう!二週間くらい歩き続けたんですよ⁉︎」
「その前にちょいと質問なんだけどさ、ナスタって名前はこの国ではよくある名前か?」
「え?いや、そんなにある名前でもなく、そこまで珍しいものでもないです。王族と同じ名前を付ける人は結構いるみたいですから」
「じゃあお前の顔は?国民にどれくらい知られてるんだ?」
「王都の皆さんは覚えてるかもしれませんが、職務が忙しくて国民に顔を見せることがあまりありませんでした。ですから、他国の方が覚えてるとは・・・」
「(・・・・・・お前の顔なら大概の奴が忘れないと思うけどな)」
「?」
可愛らしく首を傾げるナスタは放っておいてジャックは歩き出す
ナスタはその歩く道先に視線を巡らし、全力で逃げ出した
ジャックは気付いてはいるがナスタを放ったらかしにし、その人に話しかける
「そこの衛兵さん、ちょいと聞きたいんだけどいいか?」
「なんだ?」
「ここら辺で評判の良い宿屋を知らないか?ここらには疎くてさ、ぼったくりには引っかかりたくないんだ」
「ああ、それなら・・・・」
衛兵に道を教えてもらい、礼を述べてそこに向かうように見せかけてジャックはナスタを追いかける
「はぁ・・・はぁっ!」
ナスタは今までにないくらい全力で走っていた。逃げるために
(衛兵にいきなり会いに行くなんて、あの人は一体何を考えてるんですか⁉︎)
一番に考えられるのは、衛兵にナスタを突き出して報奨金を貰うことか
(・・・逃げたはいいけど、この後どうすれば)
とりあえず路地裏に入り込んで隠れてしまおうとナスタは路地裏を走っていく
と、そこにはガタイの良い男が二人、道を塞ぐように立っていた
「すいません、そこを通してください」
「通行料を払ってくださーい」
「・・・へ?」
「つーこーりょー」
「銀貨二枚で許してやるよ」
ケラケラと笑う二人を見て、思わずナスタは後ろに下がろうとする
だが
「残念でしたー」
後ろにもう一人、男が立っていた
「ん?んん⁉︎凄え美人だなこいつ!」
「テンション上がりすぎだろ。・・・まあ分からんでもないが」
「これは、あれだろ」
「ああ」
ジリジリと、男達はナスタに近付いていく。ナスタはよくわからないが怖くて逃げ出したいが、男が邪魔で動けない
「なあ、遊ぼうや姉ちゃん」
「そこの姉ちゃんの代わりに兄ちゃんが遊んでやる。喜べ」
男が手を伸ばそうとしたその瞬間、男の後ろに立っていたジャックが腕を掴み、男が何かを言う前に腕の力だけで空高く放り投げた
「お、おおおおお⁉︎⁉︎⁉︎」
「ふんっ‼︎」
男の落ちてくるのに合わせ、ジャックは膝蹴りを放つ
ベキベキ‼︎と明らかに頭部から出てはいけない音が発せられた
「よっこいせー」
ジャックはそのままピクピクと痙攣する男の首を掴み取り、
「て、てめるぶ⁉︎」
殴りかかろうとした二人組の片割れに向かってジャックは男を投げつけた
「わ、わあああああ‼︎⁉︎」
生き残った最後の一人は泣きそうな顔になりながら逃げ出していく
ジャックはナスタの手を掴み、さっさと路地裏から出て行く
「し、死んでませんよね?」
「殺していいなら生首が三つ作れたけどな。それと勝手にどっか行くんじゃねえよ護りにくいだろうが」
「あ、貴方がいきなり衛兵の所に行くからでしょう⁉︎」
「宿屋の場所聞いただけだ。なんだ?報奨金目当てに捨てられるとでも思ったか?悪いが俺は金に命かけてないんでね」
ズンズンと進むジャックだが、ナスタはふと気付く
「・・・・あの、ジャックさん?一つお聞きしてもよろしいですか?」
「なに?」
「宿のお部屋は、一室だけなのでしょうか・・・・・」
「逆に何部屋取るつもりだったんだよお前は」
ぐいっと、ナスタがジャックの手を逆に引っ張って動きを止めた
ジャックが振り返ると、なんだか顔が赤いナスタがいた
「あの、私は十七歳という多感なお年頃なのですが・・・」
「ふーん、俺は今年で二十だったかな。で?」
「その、殿方と同じ部屋で寝るというのは如何なものかと思いまして」
「二週間も夜を一緒に過ごしておいて何を言ってんだ」
「ですが!やはり男女が同じ部屋で寝泊まりするのを許されるのは相愛の方々のみの‼︎」
「金がもったいないから駄目だ。さっさと行くぞ」
ジャックはナスタを引っ張るのだが、ナスタは石のように動かない
「・・・・・よし、ならば選ばせてやる」
ジャックはポケットから、ちゃんとした所に売れば一生遊べるだけのお金を手に入れられるペンダント(王族の証)を見せつけて問う
「これ売って金にして良い部屋取るか、節約して一部屋で我慢するか、お前はどうする?」
一秒で答えが決まった




