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第五十六話 弱点

特訓開始から3時間経過。

「はぁ〜はぁ〜ちくしょ、化け物かよ。どんな体力してんだ…」

無傷でバテバテになるBAD。

「えへへ、鍛えてますから。」

傷だらけではあるが、ピンピンとしているキッド。

「全く、つーことで何となく掴めたか?」

「はい!僕が普段からやっている抜刀のスタイルから、状況に応じて他の持ち方に切り替える。ですよね?」

「そうだ、基本は竹刀打ちな、ダガー持ちは〜多分つかわねぇーだろ。よっぽどのことがねー限り…」

「ですね、了解です。」

二人は数時間の死闘とも呼べるほどの激しい切り合いのすえ、いい汗かきながらその場を終えた。

「よいしょっと!」

(ジー)

BADは、次の特訓へ向かおうとしたくを始めるキッドを見つめ。

「なぁ〜キッド。」

「何でしょう!BADさん」

「お宅さ、何で"武器に魔法纏わせ"ねぇーの?」

その言葉、キッドの胸をドキ!とさせた。

「…なるほど、お宅外界(アウト)系の魔法苦手だろ。違うか?」

またも図星だ…

「なんで…それを…」

「は?言っとくが誰かに聞いた訳じゃねーぞ。勘だ、てか考察だ。お宅の動き見てりゃーわかる。魔法騎士団学校主席で卒業してんだ方法分かってんのにやらねぇー理由つったらこれきゃねぇーだろ。つーかお宅もとっくの昔にそんなこと分かってたろ、そして今でも自覚してるはずだぜ…自分自身が弱点から目を背けている事実に…」

「…」

キッドは、固唾を飲んで黙り込む。彼の言う通り、ずっとしっていたんだ。自分自身に足りないものも、何をすべきかも。しかしそれと同時にに知っていた。それを…弱点と言う大きな壁を越すことがどれだけ大変か、そしてそれに挑んだ結果も…

「何度も…何度も何千回も試したんです。でも!…魔力を扱うことだけはどうしても難しくて…どうして良いかわからないんです。」

BADは、落ち込むキッドの表情を見て少し共感ににた同情の心を抱いていた。それはかつて自身が受けた愛の喪失。才能と言う絶対を越えようと足掻き続けたあの時の自分を思い出しながら。しかし、BADは顔に凛々しさを纏わせてキッドに辛辣な言葉をかけた。

「でも、それじゃ勝てねぇーぞ…限界の中で泳ぐ井の中の蛙のまま、"三流のままじゃな…"」

本来魔法騎士と呼ばれるものは、通常の魔道士や魔術師と違い武器を主体として戦う。そのため基本的に、魔力とは武器に纏わせ戦うものである。がしかし…

「お宅はそれができない。魔法騎士として当たり前の"武器に魔力を纏わせる"と言う行為が。お宅は魔法使いとして使用変化系統のほとんどが使えず身体能力に頼った荒削りな三流。そして魔法騎士としての基礎もできないド三流。それだから成長できない、俺様の知ってるコミックで言うとこの成長性Eってとこだ。」

(何も…返す言葉がない…)

拳を強く握って浴びせらるたその言葉を耐えるしかないキッド。

「何だよその手。悔しいか?だったらつべこべ言わずにやってみろ!!!相手になってやる…」

BADはその身に光の魔力を纏う。

(あれは!光術…)

「時間もねぇーしな、こっからは実践訓練だ。魔力を瞬時に纏わせて一撃で俺様を粉砕してみろ。剣ごとぶった斬ってもらってかたわねぇ〜ぜ」

BADはキッドの刀を投げ渡す。

「こい!」

剣を突くような耐性で構え。

「突!」

(キラン!)

アグリオスの再現と言わんばかりに光速でキッドに向かって渾身の突きを放つ。

(見切れた!)

キッドは、その目でその速度を見切って前もって動く。

「まだだ…」

「え…」

そう言うとBAD、空中に浮いたキッドの着地地点に向かって

「突!!」

「ぐはぁ…」

放つ。

「突!突突!!突突突突突!!!」

しかし病むことのない連続攻撃。これはまるで…


"「迅雷多連」"


まるでそれを思わせるような、技の連続。そしてまたもや起こる…


"(見えているはずなのに…)"


デジャブ。

「くっ!」

斬りかかろうとタイミングを測るが…

(ダン!)

「がはぁ!」

返り討ち。

「どうした、辞めるか?諦めるかおう!」

「まだ…まだです!!!」

キッドは立ち上がった。トラウマのビジョンを横目に、その屈強な足で強く地面を踏んで立ち上がる。

「そうこなくっちゃな…」

(キランキランキラン!)

連続する光速の突き。

「うわぁ!」

キッドは何度も切り裂かれながら…

「くっ…」

決して倒れない。

(冷静になれ、BADさんの性格を鑑みればこの言動は僕を煽って怒りに誘おうとしていることぐらいわかる。だからこそ…)

「ぐはぁ!」

(だからこそ冷静になれ!きっとこの訓練の意味はそこにある。どんな緊迫して怒り狂うそうな状況でも冷静に、冷静に対処できるようにBADさんはわざとあんな言い方をしている。僕に足りないもの…)


"魔法は精神で扱うもの…"


(そうだ!)

キッドはその言葉を思い出し、悟ったように目を閉じる。

(ヒ!やっと気づいたか…)


"精神は魔力をコントールするためのいわばスプーン見たいなものさ。"


"スプーンだって、震えていては取りこぼしてしまうだろ"


(つまり、魔力のコントロールは精神のコントロール…)


"魔法騎士団学校主席で卒業してんだ方法分かってんのにやらねぇー理由つったらこれきゃねぇーだろ"


(方法は…知っている…)


そしてイメージした、魔法騎士団学校での就業のようす…

「今日から貴様らに、魔法及び実践訓練の指導を行う、シリマ・キャッツアイだ。よろしく頼む。」

「「はい!」」

「まず魔法には…」

それから、使用変化の説明が入る…

「次に使用変化系統の一つ、外界(アウト)についてだ。先程の説明にもあったように魔力とはイメージだ。」


"(イメージ)"


増強(パワー)が身体に纏わせるイメージであったのとは対処的に、外界(アウト)周囲の放つもしくは…身体とは別の場所に放出するイメージだ。」


"(身体とは別の場所…)"


「すなわち…」


目を閉じていたキッドの脳裏から過去の記憶が消え去り闇の中。

「武器に…」

今だ開かぬ瞳孔のまま力を溜めようにして構える。

(突き!)

「ふぅ〜…」

吐息を出して

(イメージは…)

そのイメージは、"管"。魔力は器と言う機関の吸収機能。魔吸によって吸い寄せられたエーテルを、魔力が通るための"管"魔線によって貯蔵庫である器に運び。器で色付けされた魔力は再び魔線によって周囲に放たれる。つまり、魔力を扱う器と言う機関そのものが管を通してあらゆる現象を引き起こす。だからこそ、外の世界に魔力を放出する外界(アウト)は、それを周囲の物体に共有するイメージが必要なのだ。

(武器に…)

しかしながら、管を通ると言うことは一回に管から放出する魔力の量をミスれば、ホースから溢れる水の如く周囲に散らばり威力も範囲も分散して小規模なものになる。今までのキッドは魔力を武器に纏わせるも言う魔法騎士にとって極々自然な行動ができなかったのだ。

(線を…一本の線を通す!)

しかし、今のキッドは違う。この土壇場で、訓練で習った放つ魔力の出力調整。蛇口を捻る量を調整する、その意識から。今、キッドは改めた。そのイメージは線を剣に通すこと。そもそも魔力は霊的第六感が及ぼす身体作用。それすなわち身体能力の一種なのである。今まで彼に欠けていたのはその意識、魔力は自分とは違う武器であると。機械であると思っていた。テニスラケットを振るう時、自身の手のリーチより伸びてしまうため間合いが把握しずらいように、彼に根付いたその先入観は今!まさにここで捨てられた。

(ブワン!)

蝋燭に火を灯すように、キッドの持つゴムの剣に灯った魔力の光。

(キラン!)

光速で向かってくるBADはその一寸の変化を見逃さない。

(掴めたか…この場で…)

そんな進化の瞬間でもBADは攻撃の手を緩めない。いつも通りの光速で、エネルギーとなってキッドを襲う。

(見える!)

キッドはBADが、光速と言うとてつもない速度で接近してくるBADのそれを見切ったかのように目を見開き。

「ここだ!」

(ジャキン!)

その、肉を切り裂くような嫌な音が周囲に鳴り響く。

「完成…したな…新技。」

「はい!」

キッドはその感覚を忘れないまま…

「よろしくお願いします!リップさん。」

「まっまぁ〜仕方ねぇ〜気張ってこい!」

大理石の柱が立ち並ぶローマ風のステージで、リップとの魔法訓練が始まった。

「ゲームを再現できるとは聞いてたが、にしてもすげぇ〜な。お宅の幻想魔法。」

「そうスカ?」

「そうよ、ヤングちゃん。でも〜こんなに魔力使って大丈夫なの?」

「それならご心配なく…」

ヤングは地面に倒れる。

「大丈夫じゃないじゃない!」

「そりゃ〜そうだ。幻想魔法ってのは、自身の世界を作る魔法。通常の魔法より魔力の消費は激しい。うっしゃ!この大乱闘バニシングブラザーズみねぇーなフィールドで一戦かましたら一旦休憩な。」

「BADちゃん!」

ヤングが倒れるなか、心配する素振りも見せずケロッとしているBADにカポネは怒る。

「いいんつーんすよ、カポネ様」

怒るカポネを静止したのはヤング。

「ヤングちゃん…」

「これは…キッドのため…俺に夢を思い出させてくれたあいつのためなんだ…だから…大丈夫つーんす。」

「ヤングちゃん…」

ヤングは、倒れたままでも意識だけは保ってキッドの訓練のため力を持続させ続けた。

「ねぇ〜騎士団の訓練場とかじゃ駄目なの?」

「無理言わないでくださいってすよ、カポネ姉御。仮にも俺様達は犯罪者ですよ。騎士団の連中に知れたらことです。それに…これだけ用意周到な敵だ。こっちが用意を整える前に潰したいはず。あんな目立つとこじゃかえって目立ちます。」

「でも〜」

「カポネの姉御、男がやるって言ってんだ。疑うなんて野暮だぜ。」

「…」

BADは早くに気づいていた。ヤングの思いも、その覚悟も…だからこそ信じて任せる。マフィアのボスとして今まで弱い者を守ろうとしてきたカポネには理解できない。背中で語る男の空談。

「BADちゃんはさすがね。あたしなんかよりよっぽどリーダーに向いてるわ。」

「そんなことないっすよ、一人じゃ何もできない駄目な人間です。」

「そんなことないわ、元にさっきのキッドちゃんに対する態度もわざと煽ることで冷静さを乱していたし、その弱点に築くことまで見越していた。今リップちゃんと戦わせてるのもただ魔法を教えるだけじゃないんでしょ。そもそも魔力の扱いだけなら素人のリップちゃんより経験のあるBADちゃんの方が上だしね。」

「少し違うっすね、確かに狙いは魔法教えることじゃない。そもそも騎士団学校主席の優等生に今更魔法の基礎なんて教えても意味はないし、形式的に教えて理解できるならとっくに苦手なんて克服してるっすよ。だがそれができてない、考えられる理由の一つ、精神的なもの。」

「精神ねぇ〜」

BADは勘付いていた。

「魔力がどんだけ強かったって結局は精神がそれを扱う。特に増強(パワー)は常に意識して暴発を制御できるが、一度手元から離れてしまう外界(アウト)じゃ、それは不可能。キッドは外界(アウト)が苦手だと思ってるかも知れないがあいつの弱点はそこじゃない。」

「魔力の制御、つまりは集中力が足りないって言いたいわけ?」

「そうだ、その証拠にウルシーとの戦いがある。あの場にはいなかったが、下の空気が確かに変わった瞬間を魔力感知で感じ取っていた。ただあいつの性格的不真面目が故じゃねぇーよな。つかストイックだしなあの白髪の坊主は。そうなってくるとあの状況にあっていつもはない何かがある。それは…」

「怒り…か?」

背後に現れるのは、スモーク。

「そうだ、集中力が極限にますそのためのトリガーは怒りだ。確かに怒りは火や炎属性の大元、火と同じようにその温度に制限は無く。その爆発力も突発性も確かにすげぇー、つってもそんなもんいつでもあるわけじゃねぇーしな。もっと安定した強さが欲しい。だからわざと切れるように煽ってみた、できるだけわざとらしくしてその欠点に気づかせ冷静にさせる。」

「それとリップちゃんと何の関係が?」

「リップちゃんは確かに俺様より基礎的な魔法の使い方なら下だが、精神面じゃ俺より上さ。」


「おら!」

防御(ディフェンド)


キッドとリップは斬り合い殴り合う。

「わかるか、ストリート育ちのリップちゃんは基本の方にとらわれない。そもそもリップちゃんの種族自体が本質的魔力とのシンパシーが強い。それにリップちゃんのあの性格合わさって…」

「ようするに、白髪女の感情を表に出す性格と方にハマらない戦闘スタイルを利用して、キッドに教え込もうって言うのか。心の扱い方を…」

「そうだ、魔力に属性が宿ってない以上、基礎を上げるしかねぇーからな。バラバラだった拳と剣の戦闘スタイルをさっきのでまとめ。今回ので魔力の扱いを学ぶ。これだけしたって普通は奴らにはかてねない。でも…キッドなら…」

BADが今行っている行為は至ってシンプルで基礎的な技術の指導。この段階で教えるにはあまりに遅い。しかし、キッドなら、キッドならその常識を超える。何より自身の相棒を倒した彼を危険視し、認めているからこそ。


"その成長に希望を持てる。"


(言葉で言い表せない何か、説明できない心の内を呼び覚ます。そのためには、リップちゃんが一番最適だ。)


ーーー商都 騎士団本部・訓練用体育館ーーーー

        11時59分


現在、住宅区(ホームストリート)が襲撃され、そこに住む市民達は急遽この体育館にぎゅうぎゅう詰めになりながら生活している。

「お母さん、怖いよぉ〜」

「大丈夫よ、悪い人達はみーんな、騎士団の方々ご倒してくれるからね。それまでの信奉よ。」

襲撃の事実に怯える子供達。

「ヒュー!スッゲェー!」

「広ろーい!」

「こら!騒がないの。大人しくしてなさい。」

「「はーい!」」

怯える子供をよそに、貧しく小さな家で慎ましく暮らす子供達は、大きな騎士団の本部の建物中を走り回りながら母に止められる。

「チェックメイト!」

「うぁー!爺さん強すぎるぜぇ〜」

「じゃじゃじゃ、若いもんとは年期が違うでのぉ〜どうじゃもう一戦。」

「望むところー!」

チェスやボードゲームで暇を潰す老人と若人の姿までさまざまな姿が見える。

「ホッホッ…」

そんな中、突然天上の電気が消える。

「何だ!」

不適に笑いながら、コンコンと杖の音を響かせ目にはビンテージ物の片側眼鏡、全身を白いスーツに白いマントを靡かせた男は…

白刃(ホワイト・メス)

「「うぁ!」」

見張りの騎士団を小さな刃物で蹴散らし。

(ピカン!)

もう一度電気がつく頃には…

「何だったんだ…」

「停電?」

突然の出来事に動揺する市民。

「子供!子供達は!!!」

そう叫ぶ先程走り回る子供を叱っていた母親。

「私の娘は!」

「おい!俺の息子は!」

その言葉を境に子供達がいなくなっていることに気づく親達。

「そん…な…」

監視室でモニター越しに見張りをしていた騎士は唖然としている。そのわけは…


"予告状

本日、ランチタイムのベルと共に、お子様達を迎えにまいります。


                怪盗ホワイト"

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