第三十七話 好敵手(ライバル)
"「痴れは…身共から全てを奪い去った。」"
それは、冬のむ空の下。強く雪が降りる日…
「おい坊主!」
「はい、お父様」
奥から、足音を響かせ近寄ってくる。灰色の髪の青年。
「今日からきさんの弟分になる…おっと、名前はなんちゅったかいな?」
「BADだ。」
BADはそう名乗った。
「BAD?あ〜偽名か。痴れ、ネーミングセンスねーな。」
「あ"?」
二人はあって早々歪みあった。
「おう!気が合いそうじゃな〜」
「「どこがだよ!」」
「そう言うところかいな。」
"身共にとってお前は…"
「痴れ歳は?」
「60」
「身共は80だ。兄貴分でもあんだから礼儀はわきまえてもらうぞ。」
「へぇへぇ〜」
"生意気で…"
「ねぇ〜ねぇ〜そこの姉ちゃん達〜。」
「「なんですか〜?」」
"飄々として"
「おい、仕事中に遊ぶんじゃ…」
「遊んでねーよ。ほら情報持ってきたぜお兄様」
"抜け目のない"
そして、時は現在へ…
「確かに六発打ったはず…か?」
現在、BADは右肩に弾丸を打ち込まれ、自慢の剣が振るえず。そして、周囲の煙による一酸化炭素中毒となるその瞬間まで時間は刻一刻と迫っている。
(あの時確かに剣は届いていた。)
「その技…オヤジの煙銃」
煙銃
:もった銃火器に煙の魔法で作った弾丸を込め打ち出す。元が煙と言う不定形な物質であるため装填するのにリノコイルを動かさず直接装填できる
「まさか習得しているとは…」
「あれから何年経ったと思う?」
「さーな…」
(もう一つ気になる事があるがいまわとりあえずいい)
BADはあることを気にかけつつ、話を流した。
「痴れのそんな姿を見ると思い出すぜ…痴れが親父の腕を切り落としたあの日を…」
スモークが言っているのは、BADがドン・フェルの元に連れて行かれフェルの命を奪おうとしたあの日のこと。
「あれは俺様がやったんじゃねーよ。もっと前からオヤジさんは片腕だったのを魔法で補ってただけさ。」
「そうだな、だが関係ない。今や痴れも片腕だ。ご自慢の剣筋はもう振るえないぞBAD…」
その通りである。そしてそうこう戸惑っているうちに
「ゲホォゲホォゲホォ…」
煙の中でその症状は悪化しつつある。
「もう、この周囲の酸素は既に汚染されている。無論身共は問題無いがな」
説明しよう、魔法の属性に応じて身体はその器ようの耐性を獲得するのだ。例えば炎の魔法を使う者が自身の炎に焼かれては話にならないのでその為のある程度の耐性を獲得し他の能力者より同じ属性からの攻撃が効きにくくなるのだ。
ちなみに煙の能力者は一酸化炭素中毒にならないのはもちろん、一酸化炭素を吸収することで酸素と同じ働きをすることが可能である。
「くっ…」
既に周囲の酸素はつき、立つこともままならない
「どうした?もう万策尽きたか?」
「いやなに、ちょっと落ち着いて見ようと思っただけさ。」
BADはまだ余裕を見せる。
「虚勢とはみっともない、策士のBADが聞いて呆れる…」
「いやいやだから…」
(ガブ!)
「もう手は打ってある。俺様が動く必要もねーかなって話し。」
その時スモークの背後から首元に噛み付く緑の女…
「バー…ヴァン・シー」
それはベシル達一向が村を出て商国に向かう前のこと…
「ん?BADキュン〜」
「どうしました?」
「いやいや、何平然と剣の大きさ戻ってんだよって思ってさ。」
「あ〜」
そう、BADはベシルとの戦闘で村の女達からかき集めた愛の力を失っている。そのため最後には短刀、ダガー並みの大きさになっていたはずの剣が大剣に戻っていることにベシルはふと指摘した。
「これはっすね。ほい!」
BADがそう言うと剣が輝き、宝石が周囲に散乱すると同時に
(シュ〜)
周囲に湯気が立ち、その中に現れた者とは…
「またお仕事ですかぁ〜BAD様ぁ〜」
ふわふわクルクルな長い金髪
「今回はお早いお呼び出しで…」
緑の髪と四角いメガネをくいくいっとしているタイトドレス。
「えぇ〜いまメイク中なんですけどですけど〜」
独特な喋り方で剃り込みの入ったピンクの豹柄の上衣。現れたのはそんな個性豊かな女達。
「お〜」
「あれ?お店にいたお姉さん達ですね。」
そう、キッドの言う通り彼女達は盗賊団アジトにいたキャバクラのお姉さん達。
「ふ〜んそう言うことね」
「そう言えば、彼女達とはいつ出会ったんですか?」
「あの洞窟の先約でな、共同で使ってたんだ。」
「先約?」
キッドが気にしているのは、黒星教団の運転手さんの言っていた
"「その空いた場所にモンスター共が住み着き、食料の豊富なここを取り合い争った。その後
"この地でも最強をきした生物の種"が残り誰も寄り付かなかった…」"
このことである…
「え?でも聞いた話じゃこの地で最強のモンスターがそこに住んでいたと…」
「ん?だからその最強のモンスターが…」
BADは誰も予想しなかった衝撃的なことを話し始めた。
「こいつら…"バーヴァンシー"なんだよ」
指を刺した先は、キャバクラのお姉さん達。
「バー…ヴァンシー…」
「「・・・」」
キッドは言葉に詰まり、周囲にいたスターやハスキーは…
「「えーー!お姉さん達がモンスター!」」
一度は唖然とした。
時は現在へ
「こいつらは、名前の通り"She"。女である以上俺様の魔法の対象内だ。」
「ふっ、宝石にする能力か。通りで剣が無駄にデカいわけだ!」
両者は再び睨み合う
「いつまで噛んで嫌がる…」
「うぅー」
「ふっ、煙の棘球」
詠唱と共に、噛まれていた首筋なら固体化された煙が棘となって顔を串刺しにする。
「がはぁ!」
「即時治癒とは…化け物共め。」
ふわふわくるくる髪金は、先ほど吸った血を使って即時ダメージを受けた顔周辺を治癒した。
「血妖の音波」
豹柄の上衣は周囲に凄まじく高い高音を響かせ音波を発生させ。
「くっ、耳障りな声を…なにまさか!」
その音波は周囲の壁を震わせると同時に周囲に充満した煙を薙ぎ払う。
「はぁ〜やっと綺麗な空気が吸える」
「だが、痴れが体内に抱え込んだ一酸化炭素はまだ…」
「一酸化炭素?」
(チュ〜)
タイトスカートの女は、BADの首筋にも噛み付いていた。しかし、それが吸っているのは血では無く…
「体内の一酸化炭素か!」
「ふ〜美味しゅうございました。」
「この子こう見えてヘビースモーカーなんだぜ。お宅と気が合いそうじゃん、なんなら紹介してやっても」
(バン!)
スモークはBADに煙の弾丸を放つ。
「結構だ…」
「相変わらず冗談が通じんこって」
BADは背後にバク転し回避した上で軽口を叩いた。
「行くぜ…」
(キラン!)
BADは光速でスモークに急接近した。
"そういえばこんなこと前にもあったな…"
「ざけんなー!」
怒鳴り声を上げて机を蹴り飛ばす。
「テメェが何を手放したかわかってんのか?…」
「…」
BADは黙っている。
「それが組織にとってどう言う意味を持つかって聞いてんだ!」
「…あんなもん流通させてどうしようってんだ?」
それは、バックが取り扱う違法麻薬の密売に着いての話し合いだった。
「テメェ〜ここは騎士団でもなきゃ俺達はヒーローでもねーんだぞ。こう言う物を扱って当然だろーが」
「それを誰に売るつもりだ?家を失ったホームレスか?頭のネジがゆるいパンピーにか?…それとも無知なガキにか…」
BADは、いつもは見せない神経な表情いや、その表情には怒りすらこもっていた。
「なんだその目は、兄貴の命令が聞けないってのか?」
「俺様が下につくの誓ったのはオヤジにだけだ。お宅にじゃない」
「テメェ〜」
その時、スモークは裾に隠し持った魔道銃をBADに向け。
「表てぇでろ」
BADに戦線を布告した。
「お兄貴…負けても知らねぇーぜ」
「痴れ者の戯言など聞くに耐えんな。」
二人は、あの日であった寒空のした。商都ギャングストリートの中央で決闘を始めた。
"昔からあいつは生意気だった、歳上しかも兄貴分であるこの身共の命令も聞かずそれどころか反抗的な行動ばかりを持つ。いつも適当で気分家、女遊びが多く仕事もろくにしねぇークズの癖に…たまに聖人じみた理想論を語りやがる。そして何より…"実の息子である身共を差し置いて親父が愛情を注ぐほどの才能"。それから親父が急死し、正式な組織の頭が決まらず身共が代理のドンになった丁度この時期。穏健派のBADに側につく奴らと、身共らに着く者達で対立が起き、今度は身共の"部下"すら奪おうとしていやがる…"
(ジャキン!)
BADの剣はBADの半身を切り裂いた。
「忘れたのか?俺様両利きなんだぜ」
半身を切り裂きスモークの死を持ってこの戦いは終わったと思われた。
(悪りぃな〜スモーク、でもテメェに手加減できるほど俺様に余裕はないもんだから…)
「何に終わった気で嫌がる…」
(!)
その瞬間背後にあった者は…
「…その身体は」
左半身を吹き飛ばした事で中の臓物と共に、その心臓部が露出した。しかし、その姿は…
「スチームパンクを知ってるか?」




