私の世界3〜雪のハッピーエンド〜
「すごく好き……」
セドリックの美しさに私はもう訳が分からなくなる。
思わず何度目かの告白をしてしまった。
セドリックが柔らかく微笑んでくれる。
「俺も好きだよ」
両思いって事ね。
「おい! 別れるって言ったじゃない!」
誰かが何か言っている。
あ、そうそう。別れないといけない。
「好き……じゃなくて、なんだっけ。あ、別れてください」
今日は初めて言えた。
言い切った。
うっとりとセドリックを見つめながらでは説得力ないかもだけど、言い切った。
「じゃあ、その事についてはゆっくり2人で話し合おうか。じゃ、皆さん、俺たちはカップルの危機で修羅場だからこれで。あ、俺はもし雪と別れても誰とも付き合えません」
セドリックが長いセリフを言いながら、私を押す。
私はうっとりと押されるままだ。
だってセドリックがかっこいいからしょうがない。
他にもかっこいい人はいるけど、セドリックは本当にかっこいい。
異世界でも真っ先に選んだ人だ。
+++
で、話し合いだけど。とセドリックが一人暮らししているマンションに連れてこられた。
マンションは結構豪華に広い。セドリックってば、学校の合間にモデルの仕事をしてるから。
歩いている間にちょっと頭が冷えた。
うん、明日ちょっと学校行きたくない。いや、行くけど。
セドリックがリビングのソファーに座らせてくれる。
コーヒーを入れてくれてから、自分は目の前に座った。
「離婚すると愛の女神様から天罰が下る。もちろん知ってると思うけれど」
チャレンジャーだね、とセドリックが首を傾げた。
「て、天罰ってなんだっけ?」
たらり、と背中に冷や汗が垂れる。
そんな話は聞いてなかった。
「あれ、そうか。雪は知らないのか。あの愛の女神様は気まぐれでしょう? 婚約破棄だけなら、人間の方の罰金刑で済むけれど、離婚はすると大変な罰が下る」
「早くどうなるのか教えて」
「離婚した人は周りで見た事ないから分からないけど、本には死刑と書かれていたな。他には女神様の機嫌が良い時には、もう一生愛を語れないようにと口のきけなくなる呪いとか」
私を大変な目に合わせた女神ならやりそうだ。
離婚したら最悪死刑。
セドリックは真剣な顔で私を見る。
「それでも別れる?」
セドリックの質問はもう答えが分かり切っている質問だった。
「セドリックは私の他にもっといい人とは……」
「物理的に付き合えないね」
「そう、だよね。それだと」
「雪もね」
沈黙がおりた。
セドリックがソファーから立って、ゆっくりと私の隣に座る。
私の手をゆっくりと握った。
薄い茶色の目が私を見つめる。
そして、唇がゆっくりと近づいた。
……長いキスだった。
「愛してるよ、雪。高校卒業したら結婚しようね」
私はこっくりと頷く。
女神の天罰があるなら、こっちの世界でも結婚しといた方がいいだろう。
私は結局のところセドリックが好きだ。
かっこいいし、優しいし。
異世界で精神崩壊した私と結婚してくれた。
頭がおかしくなった私と結婚してくれたのだ。
そして、自分の世界を捨てて私を追いかけてきてくれた。
いまいちセドリックの真剣さに私の気持ちが追いついてない気もするけれど。
これからもっともっと気持ちを育てていこう。
セドリックと私はもうお互いしか相手はいないのだから。
+++
俺の雪は本当にかわいい。
純粋で人を疑う事を知らない。
女神の天罰なんてない。
俺は別れようとする雪を嘘で引き止めた。
ちょっと考えれば分かる話だ。
離婚したら女神の罰が下るなら、あんなに婚約破棄だなんだで騒動は起こらない。
婚約を飛ばして結婚させれば良い話だ。
こちらの世界に来る時こそ世話になった女神だが、別れ際にはこちらに興味を無くしていた。
こちらの世界で新しいおもちゃをまた見つけた、と言っていた。
しかし、被害にあった雪にとっては恐ろしいのだろう。
そして俺なんかに捕まって。
本当に雪は可哀相で可愛いくて。
俺のどうしようもない愛しい人、雪。
「雪、愛してるよ」
「セドリック、私も」
雪はうっとりとした目で俺に微笑んでくれた。
投げっぱなしはこれでないと思うので終わりです。
ヒロインも幸せになりましたし。
読んでくださってありがとうございました。