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第七十一話 帝都訪問

「あ、ルシフさん、はじめまして。私はカビー。アルハザード帝国中央情報庁所属のものです。あなたのことをだいぶ探していましたよ」


 そういって、カビーと、名乗った若者が、爽やかな笑みを浮かべながら、握手をもとめてきた。


「はぁ……」


 とりあえず、握手を返す。

 回りの兵士たちはどうしたものかと、遠巻きに我々のことを見ている。

 その顔には皆、困惑が広がっている。


「とりあえずこのバカ騒ぎを納めましょうか」


 そういって、年配の方の男性が懐から、キセルを取り出し、プカプカとタバコを吸いだした。

 回りの兵士たちに剣を向けられながら、なかなかに堂々としたものである。


 ふーっと、煙を一吹きし、一服している。

 回り緊張が満ちている。


「……私はジョーイ。帝国の侯爵位をいただいているものです。さて、ここの責任者はマモス子爵だったと思いますが、マモス子爵はここにおられるかな?」


 年配の騎士がキセルをプカプカとしながら、周囲に声かけをする。


「……わ、私がマモスではあるが、そ、そなたが帝国の貴族であるという証拠はどこにある! わ、私は騙されんぞ!」


 マモス子爵は、兵士たちに守られながら、大きな声を返してきた。

 まぁ、いきなり貴族を名乗るものが現れても、信じられないのは無理はない。


「うちと管轄が違うから、知らないのも無理もない、か。たしか、君の上司はザリニガ辺境伯だったかな。ザリニガに軍を派遣してもらえば、少しは私のことを信じてもらえるかな?」


「……い、いや。それには及ばない。わかった。わかった。そ、その娘は連れていってくれ」


 急に顔を青くしながらマモス子爵が、言ってきた。なにか、上司に来られると困ることでもあるみたいだ。


「良いでしょう。我々もこれ以上、ここでの問題に首を突っ込むことは望みませんし。さ、ルシフさん。我々と一緒に来てもらいますよ。リーゼ様が首を長くしてお待ちしております」


 年配のジョーイがルシフに笑いかけてきた。


「! あ、あなたたち、リーゼの関係者なの!」


「……遺憾ながら」


 苦笑しながら、若いカビーが首肯した。


◆◇◆◇◆◇


「暇ね」


「暇だね、ねーちゃん」


 あの後、あっさりと城から解放されて、今は馬車でゴトゴトと揺られなが、帝国の首都に向けて移動をしている。

 結局、ユーグレは私についてくることになった。

 なんとなく、私に妹分ができた感じだ。


 街については、あのあとどうなるのかは私にはわからない。

 でも、住んでいるあの人たちで、どうにかするかもしれないし、どうにもならないのかもしれない。

 それは彼らが考えることで、異邦人たる、私が考えることではないのだろう。


 私は一つ頭を軽く振った。

 もう、自分では、どうにもできないことなのだから、と頭を切り替える。


 さて、私はこれから、どうなるんだろう。


 あの魔王との戦いの後、どうなったのかについて、箝口令でも敷かれているのか噂すら何も聞こえてこない。

 それに、あの戦いから、どれくらい経ったのか、正確なことがわからない。

 たぶん、半年も経っていないはずだけど。


「もう少しですよ」


「ありがとうございます」


 物思いに耽っていると、御者から声がかけられた。

 馬車に揺られること一週間。

 一日の大半を高速馬車に揺られている。

 帝国は、リットリナ王国と違い、資金があるからか、石畳の高速道を各地に整備し、その間を高速馬車で、街道を繋いでいた。

 元々は、軍の移動を効率化するためのものらしいが、平時はこうやって、高速馬車網での移動により、人、物、情報の移動に使っているらしい。

 私たちは、宿場町ごとに、元気な馬車に乗り換え乗り換え、首都へ向けて、すごい速度で移動をしている。


「到着致しましたよ」


「ありがとう」


 さすが、帝室専用馬車。

 途中一度も、検問等で引っ掛かることもなく、帝都まで真っ直ぐスムーズにやってこれた。


 ……私は初めて、帝国の首都へと足を踏み入れた。

 もう夕刻だというのに、通りには馬車や、住民の人通りがすごい。


 一つ前の宿場にて、私はドレスに着替えている。

 ちなみにユーグレも、私と同じように着替えさせられていた。

 正装をすると、ユーグレもなかなかに可愛らしい。ちょっと気品も感じられる。実は良いとこの血筋だったりして。

 まぁ、もう少し大きくなったら、きっと、男たちが放っておかないのではないか、とさえ思える。


「……ユーグレ、いーい。あんた、これからは私の家族になるんだからね。私に恥ずかしい思いをさせないために、これから色々と勉強をすることになるから、覚悟をしておきなさい」


「お、おぅ……」


 なにやら、びびっているのか、少し声が小さい。

 まぁ、この私でも、目の前の宮殿の大きさとかに、ビックリしているのだから無理もない。

 リットリナの王城で、城というものの大きさを知っていたつもりだった私だが、これほどの大きさの建物を見せつけられると、帝国とのその国力の差に、驚かされてしまう。

 いわんや、田舎出身のユーグレには、このような巨大な建物は初めて見るものだろう。


 私たちが、王城へと入ろうと、正門に向かって歩いているとき、城の向こう側で、なにやら、ざわめきが起こっている。

 緊急事態でも起こったのか、城の兵士たちが慌ただしく走り回っている。


 そして、よく訓練された動きで、廊下の脇に整列すると、なにやら、軍楽隊がどこからか現れて、いきない演奏が始まった。


 そして、その演奏の間に廊下の向こうから整然と歩いてくる一団がいた。

 その、先頭を堂々とこちらに歩いてくる人物を見て、全てを理解する。


「おう、我が娘よ! そなたの無事をこの目で確かめることができてたいへん嬉しく思うぞ!」


 皇帝その人が満面の笑みで出迎えてくれた。

 その脇に立っている懐かしい顔のリーゼと、なぜか帝国にいるヒューリの二人の顔がひきつっていているのが、皇帝と妙にコントラストを見せていた。


次回は、4/5(木)更新の予定です。

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