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言っとくが普通なのは顔だけだから。

我々が仕えるバンバード家は二男三女のご子息とご令嬢がいる。


長男は跡取りの若旦那様。

彼は旦那様には劣るとはいえ怜悧な美貌を誇る策略家で、沈着冷静を絵にかいたようなお方である。しかし真顔で冗談や下ネタを溢すお茶目にも程がある性格をしている。ちなみに奥方は美男子顔にすらりとした体型で老若問わず女性におモテになる方である。

二人仲睦まじく過ごす姿は禁断のナンタラのようにしか見えない。



長女は今なお社交界の華として君臨する美貌と教養、カリスマを備えた美女であり、綺麗な薔薇には棘があるを体現なさるエキセントリック美女である。

新興貴族であるが国を動かす鍵となる程の働きをする伯爵家に嫁いでいる。現在伯爵家を牛耳…いや、手を取り合い仲睦まじく夫君と家をもり立てていらっしゃる。



次男のご子息は武力に秀でたお方で、正直化け物じみた力をお持ちの狂戦士(バーサーカー)である。

本人はちょっと体が頑丈で強い位にしか思ってないが本気になれば一国潰せそうな武力である。将軍の跡目として婿に入られた。

強面な美形だか、中身はマイペースで朴念仁、ぼんやりがちなところもある。



ひとつ飛んで三女の末っ子妹君は六歳にして天才的な頭脳を持ちかつ美少女であり、特に数字関係に強く時々二番目の兄君の補佐をなさるほどである。

つい先日碌でなしのボンボンとの婚約が破棄されたばかりだが、煩わしい高位貴族婦人として必要な教育から解放されて大喜びである。

有り余る体力と知力を駆使してイタズラを仕掛けるのは本気でやめてほしい。奥様により文字通り吊し上げられたが、それでもめげない反骨精神…実に無駄である。




そんな御兄弟に囲まれた二女…

リシュルカお嬢様は正直ちょっと普通だった。

ものすごく正直にいって華がない。

何がといわれると見た目がである。可でもなく不可でもなく、特色がない。絢爛豪華な御兄弟と並ぶと霞むのだ。

第一印象が残らない。


しかし、である。

その分第二印象最強なのである。

リシュルカお嬢様は努力の人である。ご自分の普通すぎる容姿をご理解なられた上で、家のため少しでも貴族として恥ずかしくないよう淑女らしく、また家のなかの手伝いを率先して行ってくださった。


今代の旦那様は外交官として忙しく家の事は奥様と御子息に一任していらっしゃる。

奥様は由緒正しいやんごとなき他国の姫君であったが生まれついてのアマゾネス、最強の戦士である。

人類最強であるがそのステータスは武力のみに偏っている。

そんなわけで内向きの取り仕切り等は壊滅的であった。

長女である一の姫がいるときはなんとかなっていたが、嫁に出てからも実家の事を取り仕切ることはできない。

若旦那様の妻、つまり若奥様は奥様詐欺を体現する王子よりも王子らしい麗しい方である。女性のもてなしは右に出るものはいないが、男性への対応は若旦那様に丸投げしている。


しかしである、アマゾネスである奥様は王族でありその強さは他国の…いや海を航った先の大陸にまで届く程なのだ。

その為…軍事大国やら王族・高位貴族やらの腕に覚えのある野郎共が使節団という名目でやって来ては必ずバンバード家にも滞在するのだ。


正直、ふざけんなである。


何かあればドンパチ始まっちゃいそうで気が休まらない。事実それを狙ってわざと不遜な態度や横暴な態度をとる輩もいるのだ。

ノックして入ったのについナイフを飛ばすとか意味がわからない。当たったことはないけど、頬を掠めるナイフやらタガーやら針やらの感覚は未だに慣れない、いや慣れてたまるか。

そんな頭のネジおかしいけど地位だけはある奴等が快適に過ごせるよう取り計らうのは女主人の務めだが奥様と若奥様は正直使えない。


そこで出てくるのが我らがリシュルカお嬢様である。

どんな猛者にも和やかに穏やかに対応し、時には注意もし、手当ての手伝いもし…と、もはや女神じゃね?な対応をなさり帰る頃には我が嫁に、我が息子もしくは孫の嫁に!!!と、熱望される位には好印象に塗り変わる御方なのだ。


毎回、奥様と次男様がうちの娘もしくは妹が欲しくば我を倒せと立ち塞がりぐうの音も出ないほど叩きのめすまでがいつもの流れである。

もちろんリシュルカお嬢様の知らないところで行われる。

あの方はご家族が危険にさらされるくらいなら自分が犠牲でもなんでもなる位の事を平気でする。



そんなリシュルカお嬢様が、政略結婚の予定がないのを儚んで修道院か市井に下りたいとの思いを暴露された。



その情報が影のサノからもたらされた時、私の中にバンバード家終了のお知らせが入った。



サノは元々某組織で暗殺者として育てられた子どもでバンバード家に保護された娘である。自分の事をNo.3の737と名のったのを聞いた幼き日のリシュルカお嬢様が『サノ』と呼ぶようになった。

それに何故かいたく感動したサノは自分がリシュルカお嬢様の影となり一生の忠誠を尽くすことを誓ったので、彼女は現在お嬢様命の過激派メイド兼護衛だったりする。


サノはリシュルカお嬢様のもしもの願いを叶えるため奔走した…が、本来的側付きの者があちこち動くとどうしても粗が出る。

そこで、僭越ながらお嬢様からも信頼の厚い執事の私に相談がなされたのだった。

ちょっと調査してくる間よろしく的な。


私は悩んだ。

リシュルカお嬢様の思いは分かる。

家の為にしなくても良い諸々の苦労や仕事をしょいこんできたのだ。

お痛わしいとは思う。

思うが、リシュルカお嬢様がバンバード家から去られては家が崩壊する。

使節団という名目の戦闘大好きイカレ野郎共との戦場と化す。

由々しき事態である。

私は悩み、悩みに悩んだ末執事長に打ち明けた。

チクったとも言う。

因みに悩んだ時間は12分30秒。





「オイ、レンドルばらしたな。覚悟は良いか?」



そんなことがあったので私は現在壁ドンならぬ足ドンを訊問から戻ったサノにされている。

もう少しでパンツが見えそうである。危ない。



「誤解だよ、サノ。

私も苦しかった…けれどこれもリシュルカお嬢様の為なんだ…」



俯きながら苦しそうに言う。



「よく考えてごらん、サノ…

リシュルカお嬢様に片思いした野郎共は権力と武力だけはあるんだ。

我々で防ぎきれない…防げてもお優しいリシュルカお嬢様が黙って見ていると思うかい?

今までは家の為に…今度は我々の為に…そんなお嬢様を私は見てはいられない!」



「レンドル!

お前、そこまで考えてたんだな、すまなかった。」



サノは足を下げ、礼をするとお嬢様の元にかけていく。

危なかった。


しかしである、本気で修道院や市井にくだると襲撃を受ける可能性は高い。

片思いの輩もいるが、バンバード家と全面戦争したい輩の人質としての襲撃もあり得る。


そうなればサノは戦うだろう。

怪我や最悪死んでしまうかもしれない。



私はリシュルカお嬢様はもちろん、バンバード家が大事である。

けれども、サノも私にとってはかけがえのない大切な存在なのだ。









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