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台風の目婚約者④

「それにしても…今日は何故ご一緒に来られたのですか?

知っているとは思いますが、例え婚約者と言えどこの女学院の門の向こうには行かれませんわよ?」



「リシュルカと一時でも共にいたいからだ。」



サラバスティアの問いにロウンが簡潔に堂々と答える。



「共にいるために長い間をかけて準備を整えた上での政略的な婚約だ。

情熱と根性と外交力で勝利をもぎ取ってようやく共に過ごせるのだ。少しでも側にいたいと思うのは当然だろう。」



大事なことなので二回言ったロウンはどや顔、リシュルカは真っ赤に染まっている。

しかし、合意と好意があったから良かったものの、一歩間違えればヤンデレストーカーに近い。

色々気が付く癖に恋愛面に疎いリシュルカあってこそのハッピーエンドだと言えよう。



「あらあら、おあついこと。

リシュ…こちらを見ている可愛いお嬢さんはどなたかしら?」



不意にサラバスティアに目を向けられ、エスティアは吃驚したがなんとか堪えて、流れるようにロウンにエスコートされ馬車を降り立つ。

一番上の姉に並ぶ、いやそれ以上のゴージャス美少女のオーラは凄まじかった。

やんちゃ爆発のエスティアが気圧される程の存在感。



「そんなに固くならないでちょうだいな。お会いするのははじめてね。

私、リシュルカの親友のサラバスティアよ。」



何度かサラバスティアがリシュルカ達の屋敷に来たことはあったが、その頃のエスティアは高位貴族の妻になるための教育がみっちりありすぎて会えずじまいだったのだ。



「お初にお目にかかります。

バンバード家の三女エスティアですわ。お会いできて光栄です。」



「まぁ!可愛らしいこと。

…先日のメタロース家の愚息の失態は聞いてますわ。

災難でしたわね…

本当に私も腹を据えかねてますのよ?

今後は付き合いを考えていこうと思ってますの。」



少しかがんでエスティアと目を合わせながら、サラバスティアは女神のごとき微笑みで言う。


ざわり…

周囲がざわめく。

エスティアの元婚約者の虫以下と家終了の危機である。

サラバスティアは次期王太子妃、いずれは王妃となる存在感。

そのような人物に嫌われるとなれば余程功績をあげて挽回しない限りはつま弾きにされる。

普段から貴族として王太子妃として序列はあれど分け隔てなく接し、公明正大を信条としているサラバスティアの見せる怒りに皆が衝撃を受けた。

この日、帰宅したものは直接に、寮住まいの者は手紙で実家と婚家に知らせがとぶこととなった。

女学院には裕福な商家の娘の平民もおり、それ故に社交界だけでなく、財界ネットワークにも話は広がっていくのだった。

こうして、メタロース家の没落は少しずつ始まるのだか…そういったことに疎いリシュルカとエスティアはサラバスティアが心を痛めたり気にかけてくれた事に対して感動したのだった。








「はぁ~!素晴らしい方ですのねサラ様は!

私もいつかあの方がたを支えられる善き貴族となりますわ!」



見送りを終えて街に向かう馬車ではしゃぐエスティアを生温かく見守りながらロウンは呟いた。



「とんだ腹黒だと思うがな。わざとやってたぞ…?」





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