ACT4 unconditional love 4
貧乏客船の医務室は、想像以上に簡易だった。
むしろ、違法労働してた辺境輸送船の設備がハイグレードだったのかもしれない。
軍の下請けをしつつ、暇な時は海賊家業だもんね。
医者だって生身を雇ってたし、再生医療なんて、脳味噌残ってれば、ギミックつけまくりで改造してくれるし。
否、改造はしてないよ。
一応、整形も改造も、リニューアル臓器とか、違う入れ物とかにもなってないよ!
エルミナの頭がふらふらしていたので、医務室のベットに寝せる。
それから簡易の給仕システムからジュースを取り出す。
「ルミたん、ジュース飲める?」
二つ取り出して、一つは自分で吸いながら、子供の口に吸い口を当てる。何とか糖分補給をすると、エルミナのふらつきが止まった。
冷凍冬眠後の低血糖もあるんだよね。
まぁ、さっきの俺のシェイクが殆どの原因だけど。
「おいしい?」
「うん、フィちゃんは、足がはやいのねぇ」
「うん、駆け足ははやいよぅ。ルミたんぐらいの時から走ってたからねぇ」
ジュースのパックをくわえたまま、医務室の棚やら壁の扉を開けまくる。
備品やら薬品やら、色々出てくる。
でも、肝心の緊急装備一式が無い。
いやいや、普通の外宙船の医療区には普通あるよねぇ~。
散々探して、生命維持装置を一つ見つけた。
だけどハードスーツが無い。
無いったらない。
しばらく脱力して床に手ついてうなだれる。
どんだけ貧乏で手抜きしてんだよ船会社ー!
「どうしたのフィちゃん?」
俺の名前はフレデリカ。
貧乏と悪運の星の元に生まれた..のかよぅ
「何でもないよ、ルミたん。ジュース飲んだら、安全な所に移動しよう」
「何処行くの?」
選択肢は、船体下部の脱出用舟艇を利用する。
この場合、現在の航行地点を明らかにし、救難信号を確実に発信できる状態である事が前提。
そして、この客船を放棄する理由が明確である事。
未だ何が起きているのか不明だからだ。
もう一つが、補助制御部へ向かい、航行記録装置の保護部に入り込む。
主制御部、船の人工知能がダウンした時に、船の制御を代行する補助電脳部が船には必ずある。
そこには航行記録を残す部屋があり、一般には知られていないが、事故等があると、その部分が攻撃を受けないように外部と遮断される。
そして簡易の脱出艇と同じく船外排出されるのだが、数名まで同乗できるのだ。大事故の時の艦橋から船員が最後に脱出する時にも利用されている。
これは、この船が沈むよって時の究極の選択である。
もうだめだよって時じゃないと、この補助機能は活動を始めないからだ。
で、どっちに向かうかと言えば、ひとまず脱出舟艇の近くまで下に行く。そうすりゃ嫌でも船員用のハードスーツの置き場所にでるだろう。
それまでは、簡易服を探してエルミナに着せる。
うし、それでいこう。
子供用の簡易服。
ついでに俺っちも簡易服を取り替えよう。
さっきの走りで簡易服の靴底が潰れた。
医務室の奥の棚から簡易服を取り出す。
さすがに子供用があってほっとする。
即死だけは、これで免れるだろう。
いそいそと簡易服を脱ぐ。
「ほぇ!」
妙な声をエルミナが出したので振り返る。
「お着替え手伝うかい?」
目が丸くなっていた。
「フィちゃんは、ネコたんなんですか?」
否、違うから。
俺っち猫の遺伝子ないからね。




