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氷の王子は恋を知ったら止まらない  作者: S@Y@


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第六十五話 倉庫街の罠


 西の倉庫街。


 馬車が止まる。


「ここです。」


 騎士が周囲を確認する。


 古い倉庫が並んでいる。


 人の姿はない。


「店主さんは、どこに……。」


 私は辺りを見回す。


「フラン。」


 クリス殿下が私の手を握る。


「私から離れないでください。」


「はい。」


 その時。


 倉庫の奥から。


「フラン!」


「……!」


 聞き慣れた声がした。


「店主さん!」


 私は思わず駆け出そうとする。


 しかし。


「待ってください!」


 クリス殿下が私を止める。


「今の声だけでは、本当に店主さんか分かりません。」


「でも……。」


「私が先に確認します。」


 クリス殿下が騎士に合図する。


「周囲を調べろ。」


「はい!」


 二人の騎士が倉庫へ向かう。


 しばらくして。


「殿下!」


「どうした?」


「中に人がいます!」


 私たちも倉庫へ入る。


「店主さん!」


「フラン……!」


 奥に。


 店主さんがいた。


 椅子に縛られている。


「店主さん!」


「来ちゃ駄目だ!」


 店主さんが叫ぶ。


「逃げろ!」


「え?」


 その瞬間。


 ガチャッ。


 倉庫の扉が閉まった。


「……!」


 周囲から。


 男たちが現れる。


「囲まれたぞ!」


 騎士が剣を抜く。


 クリス殿下が私の前に立つ。


「フラン、下がってください。」


「はい!」


 男たちが一斉に近づいてくる。


「クリス殿下。」


「大丈夫です。」


 クリス殿下が剣を抜く。


「私が守ります。」


 騎士たちが男たちを押し返す。


 その隙に。


 クリス殿下が店主さんのもとへ向かう。


「大丈夫ですか?」


「わしは平気だ!」


 クリス殿下が縄を切る。


「ありがとうございます……!」


 店主さんが立ち上がった。


 その時。


「殿下!」


 騎士の声が響いた。


「上です!」


「……!」


 見上げる。


 二階の足場に。


 一人の男が立っていた。


「やっと会えましたね。」


「お前が黒幕か。」


 クリス殿下が睨む。


「いいえ。」


 男は笑った。


「私はただの使いです。」


「誰の?」


「それは――。」


 男が懐から何かを取り出す。


 古い王家の紋章。


「この紋章を知っていますか?」


「……。」


 クリス殿下の表情が変わる。


「なぜ、それを持っている?」


「あなたが知らないだけです。」


 男が笑う。


「あなたの家には、まだ秘密がある。」


「何?」


「あなたの父親である国王陛下が、決して口にしない秘密です。」


 クリス殿下の目が鋭くなる。


「くだらない。」


「本当かどうか。」


 男は後ろへ下がる。


「確かめてみればいい。」


 次の瞬間。


 男が足場から飛び降りた。


「待て!」


 騎士が追う。


 しかし。


 男は倉庫の裏口から逃げていった。


 ◇ ◇ ◇


 外へ出る。


 犯人はもう見えない。


「……逃げられましたね。」


 私が呟く。


「はい。」


 クリス殿下は悔しそうに拳を握る。


 その時。


「クリス。」


 店主さんが声をかけた。


「はい?」


「一つ、言っておきたいことがある。」


「何ですか?」


 店主さんが真剣な顔になる。


「あの男が、わしを捕まえた時に言っていた。」


「何を?」


「『フランを利用すれば、王子は必ずここへ来る』とな。」


 クリス殿下が黙る。


 店主さんは続ける。


「そして。」


「はい。」


「『本当に狙っているのは、フランじゃない』とも言っていた。」


 私は息を呑む。


「じゃあ……。」


 クリス殿下が静かに答える。


「最初から。」


 私を見る。


「私を誘い出すために、あなたを狙っていた。」


 その瞬間。


 背後から。


「その通りよ。」


 女性の声が響いた。


 振り返る。


 そこに立っていたのは。


 あの令嬢だった。


「……あなた。」


 彼女は微笑む。


「ようやく、二人きりで話せるわね。」

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