相談屋の日常‐家業に勤しむ家出少女ユキの話 その伍‐
「りんちゃん、クリビアおまたせ~」
「(にこ)」
「あれ?クリビアは?」
「まだ用事があるみたいで……先食べててだって」
「…そっか」
「どうかしたの?」
「うんう。ただね、クリビア大丈夫かなあって思って」
「?」
「詳しい事情は分からないけど、クリビア苦手みたいだから」
「…」
「…」
「…」
「……りんちゃんは」
「何?」
「あたしに何も聞かないの?」
「何を?」
「何でも」
「…だってさ」
「うん」
「聞かれなくないこととか、私には言えないような中身のことだってあるでしょ?」
「まあね」
「だから…」
「…」
「…」
「今回のあたしのことについて話しても友達でいてくれる?」
「え?」
「…正直、暗い話なんだけど」
「……ユキちゃんは、友達だよ。たとえどんな暗いことをやっていたとしても」
「ホント?」
「うん」
「ありがとう、じゃあ順を追って話すね」
「わかった」
少女ユキは殺し屋の家庭の二子長女としてこの世に生を受けた。可愛い可愛い女の子ということもあり、家族から注がれた愛情は長男のそれにくらべたいそうなものだった。もちろんここは殺し屋の家である。普通に愛でるだけではこと足りず、殺し屋としての訓練にもそれは影響を及ぼした。長男の訓練と変わらないものを彼女に対しても行ったのである。おかげで、将来が有望な“子供”の育成に成功した。物ごころが付くころにはすでに人を殺めていた。そんな彼女の成長を家族は大いに喜んだが、本人はそうではなかった。“術”を手にできたのは嬉しかったが、複雑に感情が入り乱れていた。それはわずかだが仕事にも影響を及ぼすようになった。失敗こそしないが、ちょっとしたミスが見られるようになった。そんなユキの様子に気がついたユキの父は、彼女に家を出て暮らすように言い放した。違う視点から物事を見てみて意思を定めて来いと暗に言ったのである。それから齢十一歳にしてユキの一人暮らしが始まったのである。仕事は不定期に家から回されてくるものを行った。それは慣れたものだから特に問題ないが、やはり一人暮らし。さまざまな分からないことが出てくる。それらのサポート役を担ったのがクリビアだった。クリビアとは幼いころからの知り合いで、ユキにとって頼ることができる唯一の他人だった。クリビアのおかげでほとんど問題なく暮らせていたが、一つだけ問題があった。それは仕事を終えた後などの空腹時に、時々そこにあったモノを食してしまうことである。美味しくはないが成長期のどうしようもない空腹を満たすには、ソレを食すことは避けられなかった。そしていつしかそれは一つの習慣となったしまった。それは駄目だと思ったクリビアが根気強くサポートし、最近ではほとんどなくなった来ていたのだった。しかし、今回空腹に負けて食してしまったようだ。
「そんなに飢えてたの?」
「第一声がそれって、りんちゃんはやっぱりすごいね。そうだね、今はクリビアのおかげもあって“普通”に近付けているけど、ちょっと前までは思考の大半を仕事関係が占めてたから“病んで”たのかもしれない。自然な流れでその行為をおこなっちゃった」
「…」
「今はホントに楽しんだ。仕事はやっぱりらなきゃだけど、それ以外に楽しみがあって!友達もできたし♪」
「うん」
「―――ありがとう、りんちゃん」
「こちらこそ、ありがとう」
「あれ?まだ二人食べてたのかい?」
「おつかれさま~!そうだよぉニャハハハ」
「あっ、今よそいますね」
「いいよ自分でやる」
「いただきます」
「どうかした?」
そう言われ少々困ってしまう二人。それを見てクリビアは一言言った。
「ありがとう」
「クリビア」
「なんだい?」
「りんちゃんにあたしのこと話した」
「そうかい」
「うん」
「りんちゃん」
「はい」
「ありがとう」
「いえ、私こそありがとうございます」
「ふふふ、それじゃあいつか僕のことも話すね」
「!」
「!」
「クリビア、本当に?」
「うん」
「嘘じゃないよね?」
「ちょっユキちゃん?」
「うん、本当だよ」
いつか………ね
「あっ、さっきユキちゃんのお父さんが来たよ」
「え゛」
「どんな人なんですか?」
「威圧感たっぷりの威厳ある人だよ」
「――父様は何の用事で?」
「単なる世間話をしにだよ。それと一緒におこられちゃってけどね」
「何で怒られちゃったんですか?」
「……いつまでもうじうじやっているから」
「うじうじ?」
「そう」
「あのキチガイとのこと?」
「キチガイ?」
「………それも含んでるかもね」
「そっか」
「???」
「ごちそうさま、やることまだ残っているから部屋に行ってるね。洗い物よろしく」
「りょうか~い!」
「…わかりました」
クリビアは苦笑いをして去って行った。




