第一話【却下と葛藤】
キーンコーンカーンコーン。
帰りのHRが終わり、帰宅の準備をする結だった。
「いやー、何度思い出しても朝の件は本当に笑わせてくれたよなー。」
「サッカーの抱負を言うのにプロ野球選手になるって言ってんだもんなー。」
「まじで傑作。結が頭おかしくなっちまった。」
友達は各々結に朝の話を、今日一日中永遠と話していた。
「うるさいなー。もういいだろー。寝ぼけてたんだよ。」
「いやいや、寝ぼけてたとしてもサッカー大好き少年が言うはずないだろー。」
「俺だって分かんねーよ。今日はもう寝たいから先帰るから。」
「また明日なー、野球少年。」
最後の最後までいじられ続ける結は嫌気が差し、教室を直ぐ様出て行った。
校門を抜けいつもの通学路を歩き、1人ぶつぶつと言いながら結は帰っていた。
どーーんっ!
「痛っ!」
「なーに、1人でぶつぶつ言ってんのよ。」
もちろん突っ込んできたのは朝と同様月だ。完全に朝のデジャヴだろと思った結だった。
「今度はなんだよ。」
「独り言言ってると将来ハゲちゃうからね。」
「ハゲないわ。うちの家系にハゲはいない。」
「あっそ。」
横並びで歩き、あと少しで家に着きそうになると、不意に結が足を止めた。
「どうしたんだよ。もう着くぞ。」
「何か悩んでるでしょ。」
「、、、何も悩んでねーよ。」
「嘘つき。結は嘘つくとき鼻がピクッてする。」
そうなのか。と、頭の中で気を付けようと考えながら寝不足なだけと軽く答えた。
「ふーん。ま、いいけど。結ママに聞けば分かることだし。」
「おい!それはやめろ!まだやりたいとは言ってないだろ。あ、、、。」
「何をやりたいの?もしかして野球?」
その後、沈黙が続いたのは言うまでもなかった、、、。
ガチャ。
「ただいまーー!」
と、真っ先に入ったのは月。
「おいっ」と、急ぎながら後に入る結。
「あら、月ちゃんおかえりー!一応結も。」
出迎えの差に落胆した結だった。
「結ママー。結が野球やるとか言い始めた!」
息つく暇も与えず、さらっと月が言い出した。
「まだ言ってないだろ」と、こちらも間髪入れずに結も言い放った。
お母さんは表情を変えぬまま、聞いていた。
数秒の間があり、この間結の内心はかなりドキドキしており長い時間に感じた。
そして、お母さんは夕飯作りの途中であったキッチンへと向きを戻し、「ダメよ。やらせないよ。」と言った。
結、そして月までも思考が停止した。
なぜ?どうして?
頭の中にはこの言葉ばかり。
確かに考えればダメな理由などいくつも思い当たる。
しかし、考えもまとまる前に口に出してしまった。
「なんでダメなんだよ。」
この言葉を発して初めて自分自身の中で、気持ちが移り変わりつつある事を自覚した。
「あんた、何をやらせても3日坊主じゃない。唯一サッカーだけが続いてるじゃない。野球なんかやらせてもすぐ辞めるのが目に見えてます。それに一緒に全国目指そうって言った仲間を結は見捨てるの?」
ダメな理由を考えてた事を全部言われた気がした。
言い返す言葉が一つも無い程、充分に納得出来る言葉であった。
何が。というか訳もわからず悔しくなり「もういい」と吐き捨てるように自分の部屋に向かった。
それをただ、呆然と眺める月。
「月ちゃんごめんねぇ。変な空気にしちゃって。夕飯食べて行ってね。」
月は神妙な空気の中、夕飯をご馳走になり帰宅した。
その一方で、結は目まぐるしい気持ちに葛藤しながらも、部屋で野球漫画を読み直していた。




