表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『チョーク一つで世界を変える〜異世界教育改革王都裁判編〜』  作者: くろめがね


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/46

第43話 同じ場所

43話です。

最初は、偶然だった。


放課後。

校舎の裏。


理由を書く授業のあと、

子どもたちは

まっすぐ帰るのが

正しい。


だから、

誰も立ち止まらない場所。



一人が、

石段に座っていた。


あの子だ。


理由欄を空けた子。


何をするでもなく、

膝に紙を置いている。


書かない。

破らない。


ただ、

持っている。



少し離れた場所に、

もう一人。


同じ紙を、

折っている。


理由欄は、

空白。


余白に、

小さな文字。


「まだ」


二人は、

目を合わせなかった。


合わせる理由が、

なかったから。



三人目が、

来た。


井戸の列に

最近並ばなくなった子。


歩きながら、

紙を見ている。


同じ様式。


同じ空白。


石段の子が、

ふと顔を上げた。


目が合う。


それだけ。


合図は、

ない。


だが――

三人とも、

同じ場所に

座った。



「……書いた?」


誰かが、

小さく聞く。


石段の子が、

首を振る。


「まだ」


三人目が、

頷く。


「私も」


沈黙。


だが、

重くない。


初めて、

 説明しなくていい沈黙。



「先生が」


二人目が言う。


その言葉に、

全員の肩が

わずかに動く。


名前は、

出さない。


出さないのが、

安全だから。


「考えてるって

 書いたら」


「……怒られた?」


石段の子が、

聞く。


二人目は、

首を振った。


「怒られなかった」


「でも」


一拍。


「見られた」


三人とも、

頷く。


それは、

同じ経験だった。



四人目が、

来た。


少し遅れて。


立ったまま、

言う。


「……ここ、

 理由書かない人?」


誰も答えない。


だが、

誰も否定しない。


四人目は、

そのまま座った。


それで、

十分だった。



「……何で、

 書かないの?」


誰かが、

聞く。


石段の子が、

考えてから言う。


「書くと」


一拍。


「終わる気がする」


三人目が、

小さく笑った。


「分かる」


二人目が、

続ける。


「私、

 理由を三回

 書き直した」


「でも」


一拍。


「全部、

 違う気がして」


四人目が、

紙を広げる。


理由欄は、

白い。


余白に、

一言。


「途中」



その言葉で、

空気が変わった。


途中。


終わりでも、

始まりでもない。


ただ、

続いている状態。


「……いいね」


誰かが、

呟く。


四人目は、

驚いた顔をした。


「いいの?」


石段の子が、

頷く。


「終わってない感じ」


それが、

この場所の

最初の共通語になった。



遠くで、

足音がした。


四人は、

一瞬だけ

静かになる。


逃げない。


隠れない。


ただ、

話を止める。


それだけで、

十分だった。


足音は、

通り過ぎた。



その夜。


清掃の女は、

また紙を拾った。


余白に、

新しい言葉。


「途中」


彼女は、

袋に入れる。


数は、

三十を超えた。


だが、

数えなかった。


揃っている

という感覚だけが

あった。



役所では、

別の報告が上がる。


「……児童同士の

 非公式な接触が

 増えています」


上役が、

低く聞く。


「内容は」


書記は、

答えた。


「……不明です」


沈黙。


制度は、

名前を付けられないものを

最も恐れる。



夜。


私は、

紙に一行書いた。


・余白(子)→集合


それだけ。


理由は、

書かなかった。


外で鐘が鳴る。


今日も王都は静かだ。


だが――

余白を書いた子どもたちが、

 互いを見つけた日だ。


誤字脱字はお許しください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ