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第19話 親友

 共同生活が始まって数日が経った夜。工房の離れは、夜の底に沈んでいた。古びたランプだけが頼りなげな灯りを投げかけ、カイとプリルの小さな影を壁に揺らめかせている。


 カイは寝床の準備をしながら、隣で小さな光の塊となって丸くなっているプリルに、声を潜めて尋ねた。その声は、夜のしじまに吸い込まれそうに頼りなく、しかし確かな温もりを帯びていた。


「なあ、プリル……」


 プリルのゼリー状の体が、呼びかけにぷるんと揺れた。ランプの光を反射して、虹色の細かな粒子がきらめく。


「あの宝石……お前、すごく気に入ってたろ? レナータが短剣に使うって言ってたけど……本当に、良かったのか?」


 プリルの顔があるであろうあたりを覗き込むようにして尋ねた。その声には、拭いきれない申し訳なさが滲にじんでいた。プリルがどれほどあの宝石を大切にしていたか、カイは知っていた。日中、カイがベルクトの指導を受けている間も、プリルは工房の片隅で、その宝石を抱きしめるようにして、うっとりと眺めていることが常だったのだ。時には、宝石に向かって何かを囁ささやきかけているようにも見えた。


 カイの言葉に、プリルはきょとんとしたように、光の明滅を繰り返した。そして、カイの顔を見上げるように、そのゼリー状の体を少し持ち上げる。


「あのキラキラのこと? うん!プリル、だーい好き!カイがくれたから、もっと好きだったよ!」


 その声は、まるで銀の鈴を振るように明るく、一点の曇りもない言葉が、かえってカイの胸を締め付けた。彼の表情がわずかに曇ったのを敏感に察したのか、プリルはすぐにその体の輝きを一層増し、まるで満面の笑みを浮かべているかのように続けた。


「でもね、カイ!あのキラキラがカイの剣になって、カイが嬉しいなら、プリルはその方がずーっと嬉しいよ!」


 その言葉は、カイの心の奥の柔らかい部分を、不意に優しく撫でた。


 プリルはカイの腕に、ぎゅっと抱きついた。その感触は、ひんやりとしていながらも、不思議な安心感をカイに与えた。カイの胸の痛みはいつの間にか消え、代わりに温かいものが込み上げてくるのを感じた。


 カイは言葉にならない感情を抱えながら、プリルの体を優しく撫でた。

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