第82話 星神教との決戦(4)
前回のあらすじ
オリオンとリーブラの決闘は、オリオンが勝利した。
しかし、そんなオリオンが最後に放った言葉は、「俺はまだ、終わらねぇ!まだ、私は死にませんよ!アタシの人生を奪っておいて、ただで済むと思うなよ!!」だった。
オリオンのその言葉を聞いて、ケフェウスとアンドロメダは、想像していた恐怖に絶望した。
「やっぱり、どうやっても、殺してしまったら、体を奪われてしまう。」
「オリオンさんはどういうつもりだったの?あの人の性格が若干変わったのに気が付いて、もしかしたら奪わないかもと思ったの!?」
ショックを受けている、2人に対して、オリオンの体を奪ったリーブラが睨みつける。
「はぁ?なんだよその顔?俺の事を殺した奴の事を差し置いて、私を拒否するような目で見てくるんですか?そういう、傲慢で強欲な奴はこのアタシが、殺してや───」
リーブラが、2人の元へと近づこうとした時、リーブラの頭の中で声がした。
「(やらせねぇよ。私が2人を守る!)」
「はぁ!なんだよお前!何処にいやがる!!」
リーブラが周りを見渡すが、そこには誰もいない。
「(オリオンだ。今は、お前の体自身だよ。)」
脳内に流れる言葉に、リーブラは混乱する。
「おかしいだろ!なんで、お前が!体は完全にのっとったはずなのに、なぜ声が聞こえる!」
「(知らん。だが、まだ精神というか、魂というべきか、そういうもんまでは、奪えなかったらしいな。)」
「ふっざけるなよ!お前!だがな!魂やらが残ったからって何になる!分かりませんか?貴方の体は完全にこちらの支配下にあります!つまり、隊長が彼らを守ることなんて出来───」
リーブラが脳内に流れる言葉に、文句を言っていると、空中から落ちてきた剣に首を刺される。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! なんだこの剣は!誰が投げやがった!許さねぇ、そいつの体を、人生を奪ってやる!!」
剣を抜き、血の吹き出す首をおさえながら、周りに向かって叫ぶリーブラ。
しかし、そんな彼に、脳内の言葉は絶望的な真実を語る。
「(誰の体を奪うんだ?その剣をよく見てみろ。私がお前を斬る前に上に打ち上げた、ベラトリクスの剣だ!)」
その言葉を聞いて、リーブラは絶望したように目を見開いて驚く。
「(その剣を上に打ち上げたのは、私だ。そして、その剣が当たるような位置取りをしたのも私だ。なら、お前を殺したのは私か?しかし、私の体はお前がすでに奪っているだろう。なら、剣の持ち主であるベラトリクスがお前を殺した犯人か?しかし、彼女の体はすでに死んでいる。
お前は、過剰な受け取りをし、理不尽な仕返しをする奴だが、全く無関係の者から、何かを奪うことはしなかった。いや、能力の関係上出来なかったというのが正しそうだな。
つまり、ここで、私の手によって仕組まれた、ベラトリクスの剣で、私とともに心中してしまえば、お前は永遠に蘇ることはできない!!)」
「くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 何故だ!何故それほどまで、俺から何もかもを奪う!私はただ、生きていたかっただけ!アタシはただ、愛されたかっただけだというのに!!!」
「(ああ。その『愛』だがな、お前は一生。いや、何度体を入れ替えて生きながらえようと、永遠に手に入ることはないと思うぞ。
『体に悪いから』と靴を隠し、自分が自由に歩けないようにしたから、お前の母はお前を愛してなかった?お前の体を気遣った愛だろうが!
『仕事だから』と長いこと一緒にいられなかったお前の父は、お前を愛してなかった?病気のお前の為に薬を買う金を稼いできただけじゃないのか!それは、お前を愛してたからこそだろ!)」
「何を言ってるんだ!おかしいだろうがよ!俺を愛しているなら、私の思い通りに、してくれたはずでしょう?それなのに、それをしなかったあいつらはアタシを愛してなかった!そうだろうがよ!だから俺は『流星』の力で、私の納得するような、しっかりした愛を手に入れたかったというのに!」
リーブラの叫びに、心の声はため息をつく。
「(お前の、その他人の言葉を無視する傲慢。望み通りにいかない他者を痛めつける憤怒。健康的な体に対する異様な嫉妬。他人の気持ちも考えず、自分の描いた愛だけを求める怠惰と強欲。他人の体を奪いつくす暴食。そして、本当の愛を愛と感じられない異常な色欲。その七つの大罪全部!私の、『その身』で償え!!)」
心の声に、リーブラは声にもならない叫びをあげ、怒りの声をあげる。
「償えだと!? 償うのはお前たちの方だ!お前達はアタシのように、病気になっていなかったろ!俺のように、親に愛されていなかったわけじゃないんだろ!私のように、親に売られたわけじゃあ、ないんでしょう!わたくしのように、目をバカにされたわけじゃあ、ないんでしょう!わたくしのように、変な力を無理矢理つけられたわけじゃあ、ないんでしょう!わたくしのように、なかまだと思っていた人にまで奇怪なモノを見るような目で見られていたわけじゃあ、ないんでしょう!わたくしのように、わたくしのように、わたくしのように不幸じゃあない!その不公平さこそ償うべき罪だろうが!!」
叫びながら、出血によって、気が遠くなるリーブラ。そんな、少女は心の中で絶望する。
「バカな!アタシが、俺が、私が、僕が、我が、余が、ワイが、わっちが、某が、吾輩が、アタクシが、妾が・・・・・・。わたくしが…。」
そして、オリオンの体は倒れ、『彼女』の魂は死後の世界にいざなわれる。
次回予告
リーブラが死に、『星神教』との戦いが終わった。しかし、ケフェウスとアンドロメダは、一緒に過ごした仲間が、一度に死んでしまったことに絶望していた。
しかし、彼らは知らなかった。さらなる絶望が待っていることを。
次回 第83話 剥がれ落ちる道化の仮面




