閑話・ノーブル 7 力の一端
お疲れ様です。
GWでも容赦なく仕事が襲い掛かって来る緋色で御座います。
・・・ってか、意味わからん。
まぁ~元々関係ないっちゃ~ないんだけどね。
ちょい・・・手加減はしてほしい><
ってな感じですが・・・。
今回もノーブルの話ですね。
もう少し・・・お待ち下さい。
それでは、閑話・ノーブル 7をお楽しみ下さい。
OP曲【緋色の残響】
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『ユウト様ぁぁぁぁっ!』とナイアドの声が響き渡ったのだった・・・。
ナイアドはこの瞬間・・・。
今まで感じなかった『死』を予感した・・・。
ほんの数十分、時は遡り・・・。
悠斗を乗せた黒紅は『大地を駆けるが如くぅぅぅっ!』と・・・。
全速力で疾走しいた・・・。
「黒紅っ!右だっ!急いでくれっ!」
『らじゃぁぁぁっ!』と、黒紅は悠斗が指し示す方角へと向かう中、
悠斗は焦りの色を濃くしていた・・・。
(・・・この張り詰めた空気は昔からよく知る戦気だ。
だけど戦場が近いせいか・・・リヒテルの居場所がっ!?
一番大きな戦気がリヒテルだとは思うけど・・・。
チっ!単体の魔を相手にしかしてこなかったせいで、
これだけ戦気が散らばっていると、今の俺には・・・。
もっと正確な位置が分からないと・・・これじゃ・・・)
悠斗は戸惑っていた・・・。
日本に居る頃、魔を相手にしていた時は、
魔対人間の構図だった・・・。
現代科学を使い、多数と単体での戦闘が多かった為、
悠斗にとっては戦気の散らばりは、
個人を特定するには不慣れ過ぎたのだった・・・。
「あちこちで命が・・・。
な、何かいい手はっ!?」
自分の経験不足から個人を特定出来ない悠斗が、
更に苦悩した時だった・・・。
悠斗は苦悩し顰めた顔が『あっ』と言う言葉と共に、
鋭い眼光へと変わった。
「・・・気配察知のスキルってのがあったなっ!?」
悠斗はこれまでその類まれない戦闘センスと、
培ってきた経験から魔と対等以上に戦って来られた・・・。
だからこの『異世界』の『剣と魔法の世界』では、
現代日本が持ちえない『魔法とスキル』がある事を思い出したのだった。
(た、確か・・・俺のスキルに・・・)
悠斗は脳内にステータス画面を映し出すと、
所有しているスキル項目を閲覧し始めた・・・。
(ど、どこだ、どこだどこだどこだっ!?
た、確かにあったはずだっ!
『気配察知』と言うスキルがっ!)
黒紅が疾走し土煙を上げる中、
悠斗は脳内に映し出されるスキルを凄まじい勢いで閲覧した。
「・・・あ、あった!スキル・・・気配察知っ!」
悠斗はスキルの項目から『気配察知』がある事を確認すると、
『OFF』となっていたスキルを脳内で『ON』に変更した。
その途端・・・。
脳内に現れていたステータス画面が消失するのと同時に、
『気配察知』がアクティブとなり、
すぐさま脳内に周辺マップが出現した・・・。
その脳内マップには多数の人数が示され、
この内戦が生半可なモノではない事を改めて認識されられた。
悠斗は『リヒテルやジュゲム達は何処だっ!』と声を挙げた瞬間・・・。
『ポンっ!』と音を立てて赤い四角で囲むマーカーが示された。
(・・・こ、これかっ!?)
脳内の四角く囲まれている赤いマーカーの中に、
個人名が示されると『見つけたっ!』と声を挙げると、
黒紅に方角を指し示し『急いでくれっ!』と叫んだのだった・・・。
黒紅は悠斗の指示に『お任せをっ!』と声を挙げると、
『ギュルギュルギュルっ!』とホイールを更に回転させ加速した。
悠斗は脳内マップで距離を測っていた時だった・・・。
何かを感じ取った悠斗は黒紅に声を張り上げた。
「黒紅っ!何でもいいっ!俺を120m先くらいまで飛ばしてくれっ!」
すると黒紅は一瞬沈黙すると返答した。
「な、ならっ!悠斗様っ!?
扉の方へとお身体をっ!」
黒紅の言葉に悠斗は『おっけーっ!』と返答すると、
疾走しながら『5・4・3・・・』と『カウントダウン』を開始した。
そして『ゼロっ!』と黒紅が声を張り上げた瞬間・・・。
閉じられていた扉を勢いよく開くと、
悠斗は軽く跳びながら勢いよく放たれる扉に足の裏を着けると、
『くっ!』と、衝撃に顏を歪ませつつ、
『ブォンっ!』と風切り音を響かせながら凄まじい勢いで飛ばされた。
悠斗はその衝撃と風圧に苦悶の表情を浮べながらも、
空中で態勢を変えると、上空からリヒテルと思われる男を見つけた。
そして急降下しながら青い鎧の男が、
今まさに止めを刺される寸前である事が見て取れた。
(まっ、まずいっ!このままじゃっ!?)
悠斗は風の抵抗を最小限にする為、
姿勢を伸ばし頭から急降下し始めたが、
『チっ!』と舌打ちすると心の中で『やるしかないなっ!』と決断すると、
躊躇う事無く声を張り上げた。
『・・・か、母さんの力ならっ!
雷っ!』
『バリバリバリバリっ!』と・・・。
その身に悠斗の『異能の力』を纏うと、
その速度は急激に加速した・・・。
『ユウト様ぁぁぁぁっ!』と・・・。
ナイアドがそう絶望の声を挙げた瞬間だった・・・。
勝利を確信し笑みを浮かべたヒテルから放たれた何かが、
ナイアドに直撃する寸前・・・。
『バリバリバリバリっ!ドッシャャャャャンっ!』
突然の『落雷音』と共に土煙でこの周辺は視界が利かなくなった。
リヒテルは眉間に眉を潜めつつ、
焦げ臭い匂いと土煙が晴れるのを待つと、
『・・・なっ!?』と困惑した表情を浮べた・・・。
ナイアドに直撃したはずの攻撃が当たるどころか、
その場所にはナイアドの姿がなかったからだった・・・。
「・・・き、消えた?
な。何だっ!?この焦げ臭い匂いはっ!?
そ、それに・・・一体これは・・・?」
『信じられない』と言った表情を見せるリヒテルだったが、
周囲の視界を遮っていた土煙が消え去ると、
『ザザっ!』と言う音に、リヒテルの視線は向けられた・・・。
そして視線を向けた先には、まだ少年と言える程の男が、
体格のいい青い鎧を着たナイアドを抱えていたのだった・・・。
『ピクっ』と顏を引き攣らせたリヒテルは、
ナイアドを抱える少年に声を掛けた・・・。
『・・・何だ、貴様は?』
不機嫌な表情を浮べたリヒテルがそう口を開くと、
悠斗がリヒテルの声に鋭い視線を向ける姿に、
『ユ、ユウト・・・様?』と、
まだ困惑しているナイアドがそう声を挙げた。
悠斗は鋭い視線を優しいモノへと変えながら、
腕で抱えるナイアドを見ると笑顔を向けながら返答した。
「・・・間に合って良かったよ。ナイアド♪」
「・・・ど、どうして・・・こ、此処に・・・?
こ、こんな所に・・・ユ、ユウト様が居るわけ・・・」
呆気に取られたナイアドがそう呟くように言うと、
『立てるか?』と言いながらナイアドを下ろした時、
まだ戸惑いながらも尋ねた。
「・・・どうして此処に?
そ、それに・・・こ、この焦げ臭い匂いは?」
まだ困惑しているのだろう・・・。
自分の目の前に居るはずのない悠斗が居る事に、
未だに整理出来ないでいた・・・。
すると悠斗は周囲を見渡しながら『ジュゲムは?』と尋ねると、
その名を聞き我に返ったナイアドは『あっ!そ、そうだったっ!』と、
慌てながらも地面に倒れるジュゲムへと駆け出した・・・。
「お、おいっ!負の勇者っ!しっかりしろっ!
おいっ!ジュゲムっ!?
お、おいっ!」
地面に倒れているジュゲムを抱き起しながら、
ナイアドは必死に呼びかけると、
『んんっ』と顏を顰めながら目を開けたジュゲムは驚いていた。
「・・・ナ、ナイアド?
い、一体・・・どうしてお前が?」
そう言った瞬間・・・。
ジュゲムもまた『あっ!』と、
何かを思い出し声を挙げ身体を起こしながら、
『ヤ、ヤツはっ!?リヒテルの野郎はっ!?』と声を挙げた。
するとナイアドは静かに・・・。
そして緊張した面持ちと声でジュゲムにこう言った。
「・・・あそこだ」
ナイアドの声と視線を追ったジュゲムが見た先には、
この場所に居るはずもない悠斗が、リヒテルと対峙していたのだった。
「・・・ど、どうして・・・ユウト様が?」
ジュゲムもまた、自分の目の前の光景が信じられないのか、
抱き起こされたナイアドの腕を振り払いながら尋ねた・・・。
「・・・な、なぁ~・・・ナイアド?
お、俺は夢でも見ているのか?
ど、どうして此処に・・・ユウト様が?」
そう尋ねたジュゲムの声は『ヒュ~』っと吹き抜ける風に邪魔され、
傍に居たナイアドには届かなかった・・・。
そしてナイアドとジュゲムが見つめる先には、
悠斗とリヒテルが対峙しており、その張り詰めた緊張感から、
『ゴクリ』とジュゲムは喉を鳴らしたのだった・・・。
『ヒュゥゥゥゥ~』と・・・。
乾いた強い風が悠斗とリヒテルの間を抜けて行った・・・。
風に巻き上げられた砂や草が舞い、
視界に自然の薄い膜のゆうな視界を遮ったが、
悠斗とリヒテルは対峙したまま動かなかった・・・。
リヒテルは悠斗の真っ直ぐ射抜くような視線に、
強く眉間に皺を寄せていたが、
何も言わない悠斗に対し、次第に苛立ちを募らせていった・・・。
『ザザっ!』と、リヒテルが足幅を広げ、
強い風が土煙を巻き上げた時だった・・・。
不機嫌な表情を見せるリヒテルが悠斗に向かって口を開いた。
「・・・小僧っ!貴様は一体何者だ?」
そう声を挙げたリヒテルに悠斗は表情を変える事も・・・。
また抑揚も付けず返答した。
「・・・通りすがりの剣士だ」
『ピクっ!』と・・・。
悠斗の返答にリヒテルの頬が引き攣った。
「・・・ほう?通りすがりの剣士・・・か?
貴様・・・ふざけているのか?」
リヒテルが不機嫌さを滲ませそう言った時、
悠斗の視線はとある場所へと向けられていた・・・。
悠斗の視線に『ん?』と疑問を持ったリヒテルが、
向けられた視線の先を見るとそこには、
『シュゥゥゥ、グチュグチュグチュ』っと・・・。
リヒテルが先程放ったモノが、
地面を急激に腐食させていたのだった。
『グツグツ』と腐食して行く地面を見ていた悠斗に、
『フフっ』と微笑を浮べたリヒテルは言った・・・。
「・・・貴様もすぐにそうなる」
少し機嫌よさげにそう言ったリヒテルに、
悠斗は『へぇ~』っと、関心無さげに返答すると、
リヒテルは『貴様・・・』とこめかみを『ヒクヒク』とさせた。
「・・・おい、貴様・・・名は?」
リヒテルのその声に悠斗は再びその視線をリヒテルへと向けると、
一言・・・『悠斗だ』とだけ名乗った。
悠斗の返答にリヒテルは眉間に皺を寄せ、
首を少し傾げながら『・・・ユウト?ユウト、ユウト』と呟き、
その名に聞き覚えがないかと考えていた・・・。
そして『・・・知らん名だな?』と口を開くと、
悠斗は『・・・だろうね?』と抑揚なくそう返した。
この時、再びリヒテルの頬が『ピクっ』と引き攣らせたが、
すぐに『まぁ~いい』と言いながら左拳を自分の目の前で広げると、
『いいモノを見せてやろう』と薄く笑みを浮かべた・・・。
『いいモノ?』と返答した悠斗の声に耳を傾ける事もなく、
リヒテルは溜めた魔力が収束すると同時に左拳を握り締めた。
すると『グジュグジュ』っと不気味な音を立てながら、
握られた左拳が淡く黒く光りを纏うと同時に・・・。
リヒテルは腕を真横に振りながら、握られた左拳を開いた。
『ビチャっ!ビチャビチャビチャっ!』
左手から降り放たれ『黒い液体』が地面に落ちると、
リヒテルは声を挙げながら『バシっ!』と、
しゃがみ込みながら地面を勢いよく叩いた・・・。
『スキル・黒き擬人体』
(・・・擬人体?)
その瞬間・・・。
地面に放たれた黒い液体は『ゴポっ!ゴポっ!』と、
水泡を弾かせながら次第に盛り上がり肥大化させると、
それはやがて・・・人の形を成したのだった・・・。
悠斗はその光景に『へぇ~』と・・・。
少し関心無さげにそう言うと、リヒテルは三度・・・。
その頬を『ピクっ』と引き攣らせた。
「・・・まぁ、いい。
ユウト・・・とか言ったな?
貴様が今、目にしているソレは『神よりもたらされた力の一端だ』」
「・・・神よりもたらされた?」
悠斗はの眉間に力が入ると、リヒテルは口角を上げた。
「・・・フッフッフっ。
我々は神よりもたらされたこの力で同士を増やし、
やがてはこの世界を・・・フッフッフッフっ・・・・」
リヒテルがご満悦でそう語っていると、
その『黒い液体は』は人のようなモノになり、
左右にゆらゆらと揺れていたのだった・・・。
「・・・こんなモノでどうするんだよ?」
そう尋ねた悠斗にリヒテルは『フフっ』と笑いながら言った。
「今からこいつらの実力を見せてやろう。
光栄に・・・思うがいい」
リヒテルが左腕を大きく上げ、
今、まさに振り下ろそうとした瞬間だった・・・。
『パカっ!パカっ!パカっ!』
『ギュルギュルギュルっ!』と・・・。
小高い丘の向こうから馬の蹄の音と、
聞き慣れない音が迫って来た・・・。
『なっ、何だ?この音はっ!?』
そう訝し気な声を挙げたのはリヒテルだけではなかった。
2人の様子を見守っていたナイアドとジュゲムもそう思っていた時、
その音はやがて小高い丘を登り切ると姿を見せたのだった・・・。
「・・・女・・・だと?
それに・・・な、何だ・・・あの建築物は?」
小高い丘に姿を見せた黒紅は、
悠斗の姿を見つけると嬉しそうに声を挙げた。
「・・・ゆ、悠斗様ぁぁぁ!みっっっっけっ!♪」
そんな楽しげな黒紅の声に、悠斗は苦笑していたが、
リヒテルは『た、建物がしゃ、しゃべっただとっ!?』と、
困惑した様子を見せていた・・・。
そうリヒテルが戸惑う中、
イリアとセルンが小高い丘を駆け下りながら黒紅に指示を出した。
「黒紅っ!負傷者をっ!」
「かしこまり~♪」
『ギュルルルルっ!』
黒紅が負傷しているナイアドとジュゲムに辿り着くと、
少し遅れてイリアとセルンが悠斗の隣に辿り着いた・・・。
リヒテルをじっと見据える悠斗にイリアが口を開いた。
「・・・ユウト?
あの男が・・・元・正の勇者・・・リヒテルなの?」
『・・・コクリ』
イリアの問いに悠斗は無言で頷くと、
悠斗の左側に移動したセルンが『黒い人型』を見ながら尋ねた。
「ねぇ・・・ユウト?あの黒い人型って魔物なの?」
セルンの問いに悠斗は静かに首を振るとこう言った。
「・・・なぁ、2人共」
『・・・何?』
「・・・『黒い液体』の事を覚えてる?」
『・・・・・』
一瞬、悠斗の言った事に『ん?』と首を傾げた時、
悠斗は更に言葉を続けた・・・。
「・・・カロンやアマルテアの擬体に侵入し操ったり、
トロールに寄生し神獣達を苦しめた・・・。
『例の黒い液体』の事だよ」
悠斗の言葉に2人は『えっ!?じゃ~あれがっ!?』と、
そう声を挙げると、悠斗はリヒテルに向ける眼光を鋭くしながら言った。
「・・・あぁ、そうだよ。
あの『黒い液体』が・・・その人型だよ。
そしてその『黒い液体』の正体・・・。
いや、そのルーツは・・・。
『神よりもたらされた力』・・・らしいよ?」
『っ!?』
悠斗の話にイリアとセルンは驚きの表情を浮べた。
「・・・じ、じゃ~・・・カロン達を操ったのってっ!?」
「そ、そんな・・・まさか人族がっ!?」
勿論、悠斗の話に驚いたのはイリアとセルンだけではない。
事情を知るナイアドやジュゲムまでもが驚き、
その表情を強張らせていたのだった・・・。
そんな時、今まで様子を伺っていたリヒテルが声を挙げた。
「・・・お前達が一体何者かは知らないが、
この俺の邪魔をすると言うのなら、今、此処で・・・死んでもらおう」
リヒテルが不気味な笑みを浮かべた時、
イリアは負傷している2人に声を掛けた・・・。
「ナイアドとジュゲムっ!?
貴方達・・・戦えるのっ!?」
イリアの問いに2人は悔しげに頭を左右に振ると、
セルンは『黒い人型』を睨みつけながら言った・・・。
「・・・黒い人型の数は6体。
どれ程の強さかは分からないけど、私達なら・・・」
セルンの言葉にイリアは『ええっ!勿論よっ!』と返すと、
今度は悠斗がナイアドとジュゲムに左手をかざした。
「・・・2人共、そこから動くなよ?」
その行動に負傷している2人が一瞬、
『えっ?』と声を挙げたのも束の間・・・。
『・・・ヒール』とそう言った悠斗の左手は淡い緑色の光を放つと、
負傷した2人の傷は見るみるうちに完治したのだった・・・。
悠斗は2人を回復させつつも、その視線はリヒテルへと向けたまま、
怪我が完治した2人に口を開いた。
「・・・スタミナまでは回復出来ないからな?」
「わかりましたっ!ユウト様、感謝致します」
「・・・兄貴っ!ありがとよっ!」
2人はそう言いながら立ち上がると、
数度、拳を握っては開きを繰り返した。
そして『行けますっ!』と答えた時、
セルンから念話が入った・・・。
そしてこのセルンから送られた念話は、
この場に居る者達へと共有された。
{・・・ユウト?
貴方はそこで見ていて・・・いいわね?}
{・・・戦いたいんだろうけど、今はダメよ?}
{・・・ユウト様はお身体の事だけを考えて下さい。
この場は私達が・・・}
{兄貴?退屈だろうけど、この場は俺達に任せてくれよ?
俺だって『負の勇者』は伊達じゃないってところを見せるぜ♪}
それぞれがそう念話で悠斗に『戦うな』と告げると、
4人は悠斗の眼前で扇状に広がると声を挙げた。
「・・・この黒い液体のせいでっ!」
「・・・今の私達を倒せると思わない事ね?」
「・・・ユウト様の前でこれ以上の失態はっ!」
「・・・俺の力を・・・舐めるなよっ!」
そう言った瞬間・・・。
みんなの声を聞いたリヒテルは、
『フっ』と笑いながらも左腕を高く上げると、
一気に降り下ろしながら声を挙げた。
「・・・人族風情がいい気になるなっ!
擬人体共っ!こいつらを殺ってしまえっ!」
リヒテルの腕が降り下ろされたと同時に、
黒い人型はゆらゆらと揺れながら移動を開始した。
イリア達もまた剣を抜きつつ同時に駆け出すと、
黒い人型に襲い掛かったのだった・・・。
悠斗とリヒテルは、真っ直ぐお互いを睨みつけたまま対峙し、
イリア達の戦いには目もくれなかった・・・。
じっと睨みつけていた時だった・・・。
後方で『あの~?』と黒紅が申し訳なさそうに悠斗に声を掛けた。
「・・・どうした?」
「い、いや~・・・私はどうすれば~?
あの愚民達の様子から、私は手を貸さない方が?
と、そう思ったのですが~・・・?
それにあそこで偉そうな金髪男が人族風情が~って、
そうほざいておりましたので~」
そう退屈そうに言った黒紅に悠斗はこう言った。
「黒紅、ステイ」
「・・・らじゃっ!」
悠斗の命令に元気よくそう言うと、
数歩・・・?後ろに下がり、戦いの行方を見守るのだった。
そんな悠斗と黒紅の会話を聞いていたリヒテルは、
再び不機嫌そうな表情を浮べるとこう言った。
「・・・ユウト?
何だか貴様を見ていると苛々する」
いきなりそう苛立ちを滲ませながら言ったリヒテルに、
悠斗は肩を竦めて見せながら言った。
「・・・奇遇だね?
リヒテル・・・俺もだよ。
正の勇者だった男が、落ちぶれたモノだな?」
「・・・何だと?」
「だってそうだろ?
一度は人々の為に戦ったはずだろ?
なのにお前は今・・・逆の事をしているんだぞ?」
「・・・だから何だ?
貴様が言う通り、俺は人々を守ってやった・・・。
それが当然と言わんばかりにな?
だから今度は・・・奪ってやるんだよ。
フッフッフっ・・・。
人族風情が・・・感謝も出来ぬほどのクズだからな~」
そう楽しげに言ったリヒテルに悠斗の眼光は鋭さを増した。
「・・・守って・・・やった?」
悠斗の言葉にリヒテルは恍惚な笑みを浮かべると言った。
「・・・だってそうだろ~?
奪われる事を知って尚、人族は傲慢でどうしようもない生き物だ。
だから・・・今度は奪われる立場になって、
死を以って悔い改めされようって言うんだよっ!
正の勇者であるこのリヒテル様がなぁぁぁっ!」
恍惚な笑みは醜く歪み、同じ人族であるとは到底思えなかった。
そんなリヒテルを見た悠斗からは表情が『スゥ~』と消え失せた・・・。
そして次の瞬間・・・。
『ボっ!』と、その身体から魔力を放出させた。
そんな悠斗の放出された魔力を感じ取った者達は、
『ユウト様っ!?』と戦いながらも声を挙げた。
するとセルンから怒った口調で念話が送られて来た・・・。
{ユ、ユウトっ!?
ダ、ダメっ!?
あ、貴方は戦ってはダメよっ!?
今、戦ったらその身体はっ!?}
他の者達も同様で、各々から悠斗に『戦うな』と念話が流れて来た。
だが悠斗の眼光が鈍く光った時、
みんなに念話をこう返したのだった・・・。
『ごめん、みんな・・・。
少しだけ・・・俺の我儘を通させてくれ・・・。
こいつだけは許して置けない。
・・・いや、こいつだけじゃない。
あの黒い液体は神をも狂わせるモノだ。
だから・・・放って置く事は出来ないんだ。
みんなの心配は十分に分かってる。
それに長時間戦えない事も・・・。
だけど・・・ごめん・・・みんな・・・』
そう念話を送った悠斗は、鈍く眼光を光らせながら、
恍惚な笑みを浮かべるリヒテルにこう言った・・・。
「・・・少しだけ付き合ってもらうぞ?」
悠斗の眼差しに恍惚な笑みが消えたリヒテルは、
眉間に強い皺を寄せながら口を開いた・・・。
「・・・このガキがっ!」
「・・・随分と口調が変わったな?」
薄く笑みを浮かべた悠斗は、マジックボックスを開くと、
ベガから受け取ったばかりの納刀されたままの刀を取り出すと、
小脇に抱え戦気をゆらゆらと立ち昇らせるのだった・・・。
ED曲【不死鳥の扉】
https://www.mureka.ai/ja/song-detail/5ijngCGohiawBFyn7p8BEG?is_from_share=1&song_title=%E4%B8%8D%E6%AD%BB%E9%B3%A5%E3%81%AE%E6%89%89&singer=%E7%B7%8B%E8%89%B2%E7%81%AB%E8%8A%B1
ってな事で・・・。
今回はこんな感じとなりました。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
そして次回は悠斗の挿入歌の新曲となりますので、
楽しんでいただけたらと思います。
ってなことで、緋色火花でした。




