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神に頼まれたので世界変革をすることにした  作者: 黒井隼人
勇者教育編

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第81話

洞窟内部にドラゴンのけたたましい咆哮が響き渡る。

そこまで狭くはないはずなのに、翼を広げたドラゴンは巨大で洞窟内が狭く感じてしまう。


「敵は巨大。一撃も重いだろう。こういう相手は攻撃が当たらないように立ち回ることだ。もともと魔物と人間では耐久力が段違いだ。攻撃を受けないこと、それは魔物と戦う際の基本と考えておけ」

「わかりました」


俺の言葉にジェノが威勢よく返事をし、ドラゴンへと向かっていく。和也もジェノの援護ができるように近くにスタンバっている感じだ。

俺は少し後方へと下がって全体を見渡せる立ち位置にいて、瑠衣と玲は更に後方からの援護を任せてある。


「それにしてもおっきいねぇ~。このダンジョンって産まれたばかりなのにこんな強そうな魔物が産まれたんだね」

「それだけ魔力の濃度が濃かったのかしらね~?それとも質かしら~?ダンジョンに関しては虚空君たちもまだ解明しきれてないのよね~?」

「そうだねー、敬も何もやることなかったらずっとダンジョンに関して調査してそうなんだよなぁ…」

「聞こえてるぞー。ちゃんと集中しろよー」

「はーい」


全く好き勝手言ってくれちゃって。まあ、あながち瑠衣の言うことにも間違いがないがな。

この世界はいろいろと興味深いものがある。一通り終わったらまたいろんなことを探索する旅に出るのもありかもな…。

そんなことを考えている間にも戦いは進んでいる。

ジェノは俺の言葉をきちんと守っており、相手の攻撃が当たらないように一定の距離を保ちつつ、相手の攻撃後の隙をついて攻撃するヒット&アウェイの戦法で戦っている。

ドラゴンは時折ブレスを吐こうとしており、その時は和也の後方へと下がってブレスを受け止めてもらっている。

過剰に攻撃を求めるわけでも、仲間である和也を頼らないような立ち回りをするわけでも無く、しっかりと役割に合った戦い方ができている。だがそれでも…。


「まともにドラゴンにダメージ入ってないな…」


ジェノの一撃は軽いものではない。一撃一撃の間隔は広くなってしまうが、それでもしっかりとした攻撃を当てることはできている。

しかし、まだ聖剣の力を引き出しきれていないのか、ドラゴンの硬い鱗に阻まれてしまっており、ダメージ自体はそこまで高くはない。

現時点でのジェノの問題の一つである貫通力が足りていないのだろう。さすがにそれまで求めるのは過剰だからここは俺の出番か。

刀を納め、両手を少し空間を開けて向き合わせる。その間に風を集めていくと、高い魔力に反応したのかドラゴンのヘイトが俺へと向いた。


「お?」


ドラゴンの口の端にちらりと炎がちらつく。ブレスを吐き出す前兆だ。その瞬間に和也が俺の前へと割り込んできた。


「伏せてろ!」

「サンキュ」


体をかがめて小さくしつつも魔力をさらに編み込んでいく。その間にドラゴンから炎のブレスが放たれた。すさまじい熱気と共に放たれたブレスを和也はしっかり盾で受け止める。


「あっつ!?よくこんなのまともに受け止められるな」

「そこらへんもしっかり鍛えられたからな!」


どうやら俺が知らないところで虚空たちに鍛えられていたようだ。瑠衣達もそうだし、皆できることを伸ばそうと頑張ってたんだな…。

そんなことを考えている間にブレスが収まった。


「よし!和也!」

「わかってる!!」


すぐさま横へと跳びのき、ドラゴンへの射線を開かせた。そこに放たれたのは俺が先ほどまで風を集めて作り上げた空気の玉。すさまじい速度でドラゴンの下へと潜りこみ、そこで解放されると無数の風の刃がドラゴンへと襲い掛かり鱗を切り裂いた。


「これで鱗の防御力は格段に落ちたはずだ!ジェノ!」

「はい!」


ジェノの声にこたえるように聖剣の輝きが増す。力強い踏み込みとジェノの姿が消え、聖剣の輝きが糸を引くようにドラゴンの周囲に伸びていく。そのたびにドラゴンの体に切り傷が増え、血が噴き出していく。


「これで…どうだ!!」


立ち上る聖剣の輝きが刀身をさらに巨大化させる。そしてドラゴンの真上から一直線に心臓部めがけて突き刺した。


「グギャアアアアアアアア!!」


すさまじい断末魔と共にドラゴンが倒れ伏す。すぐさま聖剣を抜き、ドラゴンの上から俺達のいるほうへと跳んできた。

最後の一撃が致命傷となっただろう、ドラゴンは一切動く気配はない。

しかしジェノも俺達も油断はせずに少しの間ドラゴンの様子を伺っておく。


「大丈夫そうだな。素材だけ回収しておくか」


せっかくのドラゴンの素材だ。なかなか希少なものである以上それらは回収できるときにしておくべきだろう。

サクサクと解体して鱗や爪など素材を回収していく。万能の書で調べた結果、ドラゴンの血液には薬の力を強化させる作用があるとのことなので、ドラゴンの血もできる限り採取しておく。


「調べながらやってみると、ドラゴンって本当に捨てる場所無いんだな」


骨や皮、鱗といった部分は武器や防具にするのにすさまじい能力を持っており、血液や内臓といった部分も薬になる部分が多々ある。当然使い方を誤れば毒にもなるのだが。

そして肉に関してはかなりの美味であり、滋養強壮などの効果もあり、まさに捨てるところがないといっても過言ではない感じだ。


「僕としては師匠のその本がすっごく気になるんですが…」

「人には必ず探られたくない秘密ってもんがあるもんだ。そこを探るならそれなりの覚悟を持ってやらんとな」

「あ、はい…」


万能の書について知りたかったようだが、俺の警告でそれを即座にやめていた。

まあ、あまり表立って使うもんでもないし、仮にばれたら面倒でしかないからな。神から与えられた書物とか聖剣並み…下手したらそれ以上にやばいものだからな。


「さて、解体も終わったし、これの報酬は後でジェノにも渡すな。んじゃさっさとダンジョン制覇と行きますか」


ボスエリアである洞窟の奥。その壁にぽっかりと一つ穴が開いていた。その先がダンジョンコアの魔石がある部屋でその魔石を回収し、無力化すればダンジョンは崩壊する。

事前に話し合っていたので、ここは玲に魔石の回収をお願いすることになる。

穴をくぐり、魔石がある部屋へと行くと、そこはこじんまりとした小部屋で、中心には天井、そして床から鍾乳石のように突出した石とそれに挟まれるように浮いている大きめの魔石があった。

サイズからして先ほど倒したドラゴンの魔石の一回り大きい程度と行ったところだろう。


「んじゃよろしく頼む」

「わかったわ~」


玲は静かに魔石へと手を掲げ、自らの魔力を流し込んでいく。

これはこのダンジョンに来た際、トレントへとやった主導権の奪取と同じであり、魔石以上の魔力をあたえることでその主導権を玲へと移す作業だ。

トレントの時と違うのはその魔力量が膨大であること、そして…


「師匠、なんだか少し部屋が揺れていませんか?」

「ああ、和也。玲を頼む。ジェノ、瑠衣、最後の仕上げだぞ」


主導権を奪われたくないダンジョンコアの最後の抵抗が入ることくらいだ。

俺たちがコアの部屋から出てボス部屋へと戻ると、ボス部屋の入り口のほうから大量の魔物が押し寄せてきていた。


「魔物がこんなに!?」

「ダンジョンコアが自分を守るためにダンジョン内のモンスターたちを呼び寄せたんだよ。だから俺たちの目標は玲が魔石を手に入れるまで守り切ることだ。そして敵は今まで戦ってきたフロアの連中すべて。数が多いから気を引き締めろよ」

「わかりました!」


さすがにこの数をジェノ一人でさばききるのは無理だ。というか俺ですら取り逃しかねない。そして和也には万が一別ルートからダンジョンコアに行かれた可能性を考慮して玲を守っていてもらっている。それゆえに今前衛ができるのは俺とジェノだけ。クーも一応戦えるが、さすがにリスクが高いので、後方で瑠衣と共にうち漏らしを狩ってもらう形となった。


「来るぞ」


俺の言葉と共にボス部屋へと大量の魔物が流れ込んでくる。まず来たのはこの上の階層である火山エリアの魔物。リザードマンやゴーレムといった倒したことのある魔物に加え、溶岩でできているスライムのラヴァスライムにところどころ体が燃えているトカゲ、サラマンダーなどがいた。


「スライムにトカゲまでいたのか。とりあえず目に付いたやつは端からぶっ飛ばしておけ」


そう言いつつ俺もすでに戦いを始めている。

リザードマンをすれ違いざまに切り伏せ、正面にいるゴーレムを飛び越えて後方へと回り込んで蹴とばすことでゴーレムを倒し、そこにゴーレムのコアめがけて貫通力を上げた突きを放つことで倒す。


「硬い敵は俺も苦手なんだけど…な!」


とびかかってくるサラマンダーを切り伏せ、その先にいるラヴァスライムのコアを切り払って絶命させる。

ジェノのほうもさすがに手間取る時もあるが、きっちりと魔物を倒している。


「なんかこうしているとスタンピードの試験思い出すねー」

「のんきだなお前は」


遠くのほうからちまちまリザードマンやサラマンダーの頭を撃ち抜きつつ、ぽつりとつぶやく瑠衣に思わず呆れる。

まあ、確かにスタンピードもそのダンジョンの魔物がまとめて襲い掛かってくるといった状態だったから似たようなものなんだろう。

とりあえずゴーレムというめちゃくちゃ硬いやつ以外はさして問題ないので、淡々と処理していくと、徐々に第3エリアである高原地帯の魔物も混ざってきた。

高原地帯のモンスターはワイバーンやハーピィといった空を飛ぶ魔物が多いゆえに空中と地上双方に敵がいる形となった。


「瑠衣―」

「大丈夫―、上はこっちでやるねー」

「頼んだー」


上空の魔物にかまっていると地上の魔物がおろそかになってしまう。

さすがにジェノ一人では無理だろうし、うち漏らしが増えてしまうと、瑠衣やクーに危険が及ぶ。だから上空に関しては遠距離攻撃ができる瑠衣に任せる形を取った。


洞窟の天井付近を飛び回るハーピィやワイバーンを瑠衣が的確に射抜いて撃ち落としていく。たまに仕留めそこなっているものもいたが、それに関してはしっかりとクーがとどめを刺していた。

そして地上のほうにも高原地帯でかち合わなかった後ろ脚だけ発達しているトカゲの魔物など、足場の悪い場所でも動けるように進化した魔物たちがこちらへと来ていた。


「いろんな魔物がいたんだなっと」


これだけの種類がいるのなら、安定的に狩ることができれば収入の一つになっていただろう。

まあ、それでもそういった部分はさすがにあの村では過剰になるし、下手に人が増えるのも別のトラブルを引き込みかねない。ゆえに潰すのが的確だろう。


そうこうしているうちに次の立地である沼地の魔物がちらほらと混ざり始めてきた。

カエルやトカゲ、ぬめぬめした魔物たちが混ざってきたが、こいつらも火山地帯を突破してきたんだろうか。

途中で干からびそうな魔物もちらほらいるが、それでもここに来ているということは下手するとコアが引き寄せるためのルート的なのがあったのかもしれない。

こいつらに関してはさして特出したものもなく、頑丈で倒しにくいといったものもないから特に苦戦することもなく処理が進んでいく。

そして最後のエリアである森林地帯。そこからはトレントやウェアウルフが押し寄せてきた。

いや、うん。確かに森林エリアではね、生木とかは燃えにくいとは言ったよ?言ったけどさ。でも、それにも限度ってものがあるじゃん?いくら燃えにくいといってもそれはあくまで普通の火に対してであり、溶岩みたいな熱源には無意味なんよ?お前らどうやって燃えずに来た。

それにウェアウルフ達もその毛皮の状態でどうやって溶岩地帯を突破してきた。明らかにチリチリになるだろ。

まあそんな疑問に答えてくれるわけもなく、襲い掛かってくる魔物たちを倒していく。

トレントがコアの位置が分かりにくいのでいささか難儀ではあるが、細かく切り刻みまくればどうにでもなるだろう。

途中で昆虫系の魔物もいたがこいつらは毒を持っている可能性もあるので一撃を受けないように気を付けつつ戦っていると、唐突に魔物の波が収まった。


「はぁ…はぁ…魔物はもう来ないんですかね…」

「さすがにあれだけでこのダンジョンの魔物すべてってわけではないとは思うが…」


実際後半のほう、森林地帯の魔物が来た時でも、最初の溶岩地帯の魔物はいた。

もしあれですべてというのなら森林地帯の魔物の数が圧倒的に少なすぎる。

となると、考えられるのは一つだけだ。


「瑠衣、和也達の様子を見てきてくれ」

「こっちは大丈夫?」

「ああ、警戒はしておくがおそらく大丈夫だろう」

「うん、わかった。じゃあすぐ行ってくるね」


瑠衣は走ってダンジョンコアの部屋へと向かった。それと同時にクーも俺の背中にまた張り付いた。


「お疲れ様」

「ん…」


軽く頭をなでてやると嬉しそうに目を細めていた。

魔物が大量にやってきたのはダンジョンコアの防衛策。自らにもたらされた脅威を排除するためのものであるからこそ、それがなくなったってことは、その脅威である玲達が排除されたかもしくはその防衛をしていたダンジョンコア自体がなくなったかのどちらかだ。

そして玲達がやられるわけがないだろうか残された可能性は一つだけ。


「けーい」


瑠衣が通路の奥のほうから呼んでいる。

そしてその後ろには



「終わったわよ~」


玲の魔力によって水色に輝いている魔石を持った和也と玲の姿があった。


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