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神に頼まれたので世界変革をすることにした  作者: 黒井隼人
勇者教育編

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第80話



あの後襲い掛かってきたハーピィの群れを撃退し、次の階層へと降りていく階段を見つけた。


「えっと、次が四階層だっけ」

「だな。全5階層で最後がダンジョン主のフロアだから、実質次が最後の探索フロアだ」

「最後はボス部屋しかないんですね」

「ああ、どうもダンジョンがコアを守るためのフロアボスらしいからな。そこを突破してダンジョンコアを回収しておしまいだ」

「ダンジョン制覇したらここはどうなるんですか?」

「普通の洞窟に戻るぞ。まあ、戻るまでいささか時間はかかるようだが、ダンジョンになってる時のように魔物が発生するってことはない。まあ、そもそもダンジョン自体もある程度魔物を間引きできる環境だったらスタンピードとかも発生しないから資源の宝庫になるんだがな」


場所によってはそこの地主というか領主が冒険者などを雇ってダンジョンを管理しているとかいう話もあるからな。スタンピードさせないようにできるのなら、利用するのも一つの手なんだろう。まあ、ここの村にそれができるだけの戦力はないが。


「ほら、話すのもいいがそろそろ新しいフロアにつくぞ」


階段を降りつつ話していたのだが、前衛の和也が階段を降り切ったようで声をかけてくる。

森林、沼地、山岳地帯と続いて4つ目のフロアは何だろうかねぇ。水中とかだと面倒だから勘弁願いたいんだが。

さすがに普通に考えて水中エリアなんてないとは思いたいが、ダンジョンは俺たちの常識なんて簡単に無視してくる。唐突に水中エリアが展開されているとか普通にありそうだ。

警戒しつつ第4フロアへと入ると襲ってきたのは水ではなくすさまじい熱気だった。


「あっつ!?」

「ここは…溶岩地帯?」


すさまじい熱気に赤く照らされた洞窟内部。その赤い光源の元はまるで川のように流れている大量の溶岩だった。


「ほんと、ダンジョン内ってよくわかんねぇな」

「そうね~。こんな量の溶岩、どこからきているのかしら~?」

「無尽蔵なのか、こんな感じの世界が別に作られているのか。あー、思いっきり探索したくなる…!」

「もう、敬の悪い癖が出てきているよ。ちゃんと今やることやらないと」

「わかってるって」


どうにもこういう気になる事は解き明かしたくなっちまう。最近はそこまで出てなかったがどうにもこういう摩訶不思議な物があると気になっちまう。


「!師匠!何か来ます!」


ジェノの言葉と共に俺の索敵にも敵が引っかかる。

数は…10匹ほどか。サイズとしてはそこまで大きくない。成人男性と同等くらいだろう。

動きが速いことからするとおそらく…。


「あれは…リザードマンか?」


二足歩行のトカゲの群れがこちらへと走ってきているのを遠目に見えた。前衛の和也にも見える範囲だ。

そのトカゲは片手剣を手にし、鱗が纏われている体には簡素な鎧の胸当てがつけられている。


「溶岩地帯にもリザードマンがいるのね~」

「リザードってトカゲだから沼地にいる印象が強いよね」

「そうか?ゲームしてるとこういう溶岩地帯にも結構いるもんだがな」


サラマンダーのように火トカゲ系列もいるからな。沼地のイメージが強いのは確かだが、同じくらい溶岩や火山地帯の印象も多い。


「ジェノ、周囲の溶岩に気を付けつつ戦うように。相手はこの溶岩地帯に住む敵だおそらく溶岩にも耐えられるレベルの熱耐性を持っているだろうから、溶岩からの攻撃に気をつけろ」

「わかりました!」


さすがに10体のリザードマンを相手にジェノ一人で戦うのは分が悪い。瑠衣と玲には後方支援をお願いしつつ、俺達も戦うために少し前に出る。

素早い動きで迫ってくるリザードマンはある程度の距離になるとその足を止め、俺達とは一定の距離を保つように広がっている。


「はぁ!!」


しびれを切らしたのか、ジェノが正面のリザードマンへと攻撃を仕掛ける。

その攻撃をバックステップで回避し、距離を取るとジェノはそいつを追撃しようと踏み込もうとした瞬間、横から別のリザードマンが襲い掛かってきた。

咄嗟に横に飛ぶことでその攻撃を回避するが、着地と同時にさらに別のリザードマンが斬りかかってくる。


「くっ!」


咄嗟に聖剣で受け止めるが、それによって動きが止められてしまい、ジェノの背後から別のリザードマンが斬りかかってきた。

振り下ろされる剣がジェノへと届く直前、割り込んだ和也が盾を使ってリザードマンを殴り飛ばした。


「なるほど、数による一定の距離からの波状攻撃か。これは地味に面倒だな」

「感心してる場合か。どうにかできるんだろ?」

「当たり前だ」


和也の問いに俺は笑みを浮かべながら答える。


「ジェノ。視野を広く持て。どんな攻撃にも対処法は必ず存在する。冷静に、俯瞰的に、常にみて相手の攻撃の癖を見抜くんだ」


二人を下がらせ、リザードマンたちのほうへと歩いていく。向こうも何か気づいたのか、わずかに気圧された気配を感じた。

俺はあえてジェノと同じ速度で正面のリザードマンへと攻撃する。その攻撃を同じようにバックステップで回避し、それと同時に左から別のリザードマンが襲い掛かってくるが、右手に持つその剣が振り下ろされたので、それを自らの右足を軸に体を反転させることで最小限の動きで回避、その勢いのまま刀を振るって一刀のもとに切り伏せる。

それと同時に背後から次の一体が襲い掛かってくるが、左足の踵で振り下ろされた右手を蹴り上げ、その勢いのまま体を反転させて追撃で切り伏せた。

それを最後に一度波状攻撃が収まる。


「す…すごい…」

「波状攻撃っていうのは確かに厄介ではあるが、あくまでああいうのは次の攻撃までの間隔が短いだけで一人ずつ相手にしていくようなものだ。同時に襲い掛かり、零距離で攻撃し続けてくるならもっと厄介だが、ああいう風に一定の距離を保っている状態での波状攻撃は対処するにも十分な時間ができる。敬ならあの程度どうにでもなるだろう」


再度リザードマンと戦い始めている間に、和也がジェノへと解説をしておいてくれた。

和也が言うように同時に襲い掛かってきて多方向からの波状攻撃の場合、攻撃を対処するだけで手いっぱいになるが、このリザードマンのように離れた位置から襲い掛かるような戦い方ならば簡単に対処できる。

ま、それでもそれなりの戦闘経験が必要にはなるがな。

そんなことを考えつつも淡々と処理していく。波状攻撃と言っても十分に対処できるものだから襲い掛かってくるリザードマンを次々と倒していく。そのうち残り4体となってくると4体が同時に襲い掛かってきた。しかし、先ほどまで波状攻撃していた面々が同時攻撃しようとしてもそこまで足並みはそろわない。

そして一定距離を置いてあるがゆえに接敵までに時間がかかる。だから、俺から迫ればそれぞれの接敵のタイミングがずれ、同時攻撃にならない。同時攻撃にならなければあとはさっきまでの波状攻撃と同じだ。

残りの3体も順次距離をつめ、切り伏せていく。最後の一体を倒したら血ぶりし、周囲を警戒しつつ鞘へと刀を納めた。


「とまあ、こんな感じだな。今回は俺が倒したが次からはジェノがメインで戦いな。どんな敵にも戦い方と弱点がある。それをいち早く見抜くのも戦いに必要なことだ」

「わかりました」


その後も次のフロアへ向けての階段を探していき、その道中でちょくちょくリザードマンやゴーレムなどと遭遇するが、さして問題もなく倒していく。


「にしてもやっぱジェノは万能型だからか、防御特化みたいな感じのとは相性が良くない感じだな」

「うぅ…」


10体ほどのゴーレムとの戦いが終わり、俺はそう呟く。

リザードマンのように素早さ特化のようなタイプならば対処できるが、ゴーレムのように全身固い防御力特化に関してはジェノにはその防御力を突破する手段がない。


「ま、これに関しては仕方ない。そもそも仲間がいればそっちのほうに任せればいいことだからな」


現に俺に関してもゴーレムに関しては突破力はそこまでない。

一応音速の突きにより斬撃を飛ばせばその強力な貫通力で岩程度なら貫くことができるが、それが上位種のアイアンゴーレムのように鉄やそれ以上の硬度の材質でできたゴーレムとなるとまず突破できない。

だから現時点でも物理メインとなる和也にぶちのめしてもらっているわけだが。


「ゴーレムは基本的に山岳地帯や洞窟といった岩が多い場所に生息する。それにほかの魔物と違ってもともとが無機物だからか、意図的に作られない限りダンジョン以外ではまず目にすることはない魔物だ。だから村に残るとしても考慮する必要はそこまで無いだろうし、旅立ったとしたら、一人で旅をするのはリスクがあるから途中で仲間を見つけてその仲間に任せるのが定石だろ」

「もし仲間とはぐれて一人の時に相対したらどうすれば?」

「環境とか状況次第だな。逃げれるのなら逃げるのも一つの策だし、洞窟とか狭い場所ならば落盤などを引き起こして相手を行動不能にすることも手の一つ。まあ、当然自分が生き残るのが前提だがな」

「なるほど…」

「ま、そこらへんは仲間次第なところもあるし、状況によっていろいろと変わってくる。常にそこからできる限りのことを見つけ出すんだ」

「わかりました」


ダンジョン内なら実戦がほとんどになる。そして俺達との特訓では見えてこない弱点なども露呈する。

それらを学ぶのもこのダンジョンの目的でもある。旅立つ際はここ以上にいろんな問題が襲い掛かるが、さすがにそれらまでは予測できないからな。


「にしてもこの階層、なかなか階段がみつからんな」

「溶岩で行ける場所制限されているのが原因かしらね~。接敵が多くてなかなか進めてない気がするわ~」

「こっちは溶岩を避けなきゃいけないのに、向こうは関係なしに突っ込んでくるもんねー。沼地とは別のいやらしさがあるよ」

「ま、ここはあいつら魔物の巣だからな。あいつらに優位なのは間違いない。逆にこういった場所でどれだけ自らの優位性を保つかっていうのが課題になるからな」


実際ここについた瞬間、すさまじい熱気が襲い掛かってきたので、玲に頼んで熱耐性の魔法をかけてもらった。それがないとここでまともに戦うこともできなかっただろう

それに敵に関しても溶岩の中を自在に動けるということは俺たちの攻撃が届かない安全圏から攻撃してくる。

その場合、こちらとしては遠距離攻撃か、足場を冷やすことで固めて行動範囲を広げるかしか方法はないんだが…。


「あ、そうだ玲」

「何かしら~?」

「この溶岩、冷やし固めることできないか?水使って」

「あ~…確かに冷やし固めれば移動範囲広げることできるわね~やってみるわ~」


玲は杖の先端から水を生み出す。

しかし、その生み出した水からすぐに蒸気が立ち上り蒸発しそうになっている。


「やっぱりこの熱が厄介ね~ちょっと威力上げるわよ~」


蒸発量より多くの魔力を使い、大量の水を生み出して杖から放ち、手ごろな溶岩へとかけていく。それによってどんどん溶岩が冷えていき、水をかけても蒸気が出ないレベルまで冷やされたのを確認してから俺は指先でその固まった溶岩を触れてみる。


「どうかしら~?」

「ああ、大丈夫熱くない。これがいつまでもつかは不明だが、歩いても問題ないだろう」

「これで行ける範囲広がりそうだね。もしかして足場がつながってない場所に階段とかあるのかな?」

「その可能性もあるだろうからな。とりあえず地形のほうを把握しつつ歩いていこう」


今までは道とその先の魔物の気配だけに気を配っていたが、これからは溶岩の上を移動できるということで、少し離れた位置にあるであろう地面にも索敵範囲を広げておく。

そしてそのままダンジョン内部を探索、同じように魔物が攻めてくるが、それらも倒しつつ進んでいくと少し離れた場所に違和感を感じる場所があった。


「玲、あっちに頼む」

「わかったわ~」


俺が示した方向へと進んでいくとそこはポツンとした小島でそこの中心に下り階段があった。


「こんなところに…」

「こりゃ見つからんわけだ」


近くに目印のようなものもなく、少し離れた場所だとまずこの階段は見えないだろう。


「さて、ようやくダンジョンボスだ。気を引き締めていくぞ」


俺の言葉に全員が頷き、階段を下りていく。

溶岩地帯の熱気が消え、そのまま降りていくと少し開けた部屋へと到着した。

一見すると今までとは違い普通の洞窟。しかし、その周囲の壁の近くにはまるで人工物のような柱がいくつもたっており、洞窟内部の広さはかなりのものだ。

そしてその中心に巨大な影が丸くなっている。

俺たちが部屋に入るとその影はこちらを認識したようで顔を上げる。

太く強靭な足に巨大な翼。そして鱗に覆われた体に、凶悪そうな相貌。

山岳地帯にいたワイバーンと違い、圧倒的な存在感はすさまじかった。


「あれは…」

「あれがドラゴンだ。さすがにジェノ一人じゃ荷が重いな。全員行くぞ」


俺の言葉に全員が臨戦態勢を取る。そして敵意を感じたドラゴンはすさまじい咆哮を上げ、こちらへと襲い掛かってきた。



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