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神に頼まれたので世界変革をすることにした  作者: 黒井隼人
勇者教育編

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第74話


村へと来てから一週間。ジェノが勇者として覚醒し、鍛錬を初めて6日。

技術を磨く鍛錬が三日ほどで終了し、次の段階である殺気への慣れの鍛錬も時間はかかっているがそれなりに順調である。

まあ、これに関しては急いでどうにかなる物でもないし、むしろ殺気は生存本能からくる警告のようなものだ。それを感じさせなくなっているのは危険でもある。

故にそれもしっかりと教え込んでいく。


「殺気というのは敵を察知するのにも重要なものだ。そして人が強い殺気に慣れてしまうと、弱い殺気は感じることができず、見逃してしまう。それは自分を狙う相手を見逃してしまうことにつながる」

「別に問題ないのでは?確かに、敵を見逃すのは危ういかもしれませんけど、感じれないほど殺気が小さいってことは、そこまでの実力ではないってことに…」

「残念ながらそうはならない。なぜなら殺気というのはその強さに比例した強さを持つのは事実ではあるが、実力がある人物はその殺気を抑える技術も長けていることが多いからだ」


例えば戦場にいる熟練の戦士。ああいういわば表に立つ連中に関しては殺気と実力は比例することはある。

だがその表舞台とは対照的に裏で活躍している暗殺者。そういった類は実力が高ければ高いほど、気配を絶つ能力を持っており、それだけ殺気を抑える術を身に着けている。

そして先ほど言った熟練の戦士に関しても、策を講じる人物は奇襲など、気配を探られない方法で戦況を有利に進めたりもするから油断できない。

だからわずかな殺気を見逃すことはそのまま実力者を見逃し、自らの死へと直結することも十分にあり得るのだ。


「殺気に足元掬われず、きっちり察知できるように。小さいからこそ危険な殺気というのもあることをしっかりと覚えておくように」

「わかりました!」


とりあえずこの素直さがジェノのいいところではあるが、それが悪い点にならないことを祈っておこう。…ん?


「師匠どうかしましたか?」

「…いや、何でもない。さて、休憩は済んだな。続きやるぞー」

「はい!」


ま、とりあえず今はジェノの鍛錬をしてあげないとな。気になることは後でやればいい。時間はあるからな。



さて、ジェノの鍛錬を終え、昼食を取ったのでとりあえず先ほどの懸念を解決しておこう。

クーはおいてけないので背中に張り付いていてもらい、手が空いた瑠衣と三人で村を出る。

ちなみに和也達はいまだに水回りをどうにかしてもらっている。


「それでこっちから殺気がしたの?」

「殺気って程でもないがな。妙な気配がしたのは事実だ」


殺気って程ではないがどこか嫌な感じ。小さな悪意のようなものを感じた。

それがなんなのかまではわからないが、よくない物の可能性があるので今のうちに調査しておく。


「でも何があるんだろうね?予想つく?」

「んー…ジェノが勇者として目覚めて一週間くらい経ってるからな。魔族がそれを感知してアクションを引き起こしてくる可能性もなくはない」

「え、それってジェノ君を倒しに?」

「さてな。直接的に倒しに来たか、弱点を探りに来たか。それともまた別のなにかか…そこらへんがわからんから探りに行くんだよ」


可能性として一番あるのは魔族。時点として盗賊や山賊がこの村に目を付けたって感じだが、確かにこの村は成長し始めてはいるが、まだ盗賊たちが目をつけるほどのものではない。

実際俺たちが来る前まで盗賊たちだっていなかったんだ。いくら何でも現時点でここら辺に居座るとは思えない。

だから一番可能性が高いのは魔族なんだが…。様子を見に来たのか、それともジェノを消しに来たのか…。はてさて目的は何だろうね。


「で、どこにいるの?」

「知らん。結構小さいものだから正確なところはわからんし、方向位しかわからんかったんよ」


ジェノとの鍛錬中のほんの小さな違和感。それしか感じられなかったから正確な位置までは探れなかった。

だから時間がかかりそうなのだが…まあ、何とかなるだろう。気配察知に関しては得意なほうだからな。

とりあえず村からある程度離れた位置へと移動していく。

方角に関してはきちんと把握しているから大丈夫ではあるのだが、正確な位置がわからないのが問題だ。

あれからそれなりに時間が経過しているから移動もしているだろう。痕跡…に関してはあるとは思えんが、何かわかればいいんだが。


「どこら辺調べるの?」

「ちょっと待ってな…」


とりあえず周辺の気配を探る。気配を感じてからジェノの鍛錬の続き、昼食食べて午後の予定を話したりとしてたから数時間ほど経過している。

さすがにそこにずっといるとは思えないが、何か動きはあるだろう。周囲を少し広めで気配を探り出す。

気配の探り方は主に二つ。一つはそれ自体の気配を探ること。しかしこれは気配を隠すのが上手い隠密とかにはうまくいかない。まあ、俺は風を流すことでそれに触れた存在を感知できるから無意味だが。

これに関しては主に街中とかで使う。何かを探っていたり、不穏なことを考えている奴は気配や動きが違うのでそれで不穏分子を見つけたりしている。

そしてもう一つの方法がこういった森の中で探る方法。周囲に住まう動物などから気配を探る方法だ。

野生動物というのは気配を探るのも隠すのもうまい。草食動物は肉食動物に捕食されないために気配を隠しているし、肉食動物はそうやって隠れている草食動物を探すために様々な習性などを活かしながら狩りをしている。

だから森の中では特定の気配を探るよりかは、動物たちを探ったほうが何かがわかったりする。

良くも悪くも人の気配というのは野生動物からは敬遠される。それは魔族であってもそうだろうし、自然の中に潜む不自然な動物の動きを探れば…。


「見つけた」


浮かび上がる違和感。そこだけ切り取られた空間があり、その周囲には動物の気配はするのにそこだけ避けられている。

何かがそこにあるのか。それともいた後なのか。それはわからないが、そこに何かがあるのは確かだ。


「にしてもやっぱ山賊とかじゃなさそうだ」

「そうなの?」

「ああ。もしこれで山賊とかだったら俺がへこむ」


気配を探った際、不審な気配は見つからなかった。つまり今この場に先ほどの悪意を感じた元凶がいない、もしくはそれだけ気配を隠すのが上手いってことになる。

山賊の頭が上手いならまだわかるが、手下までもしそのレベルとかだったらいろいろと考えを改めなければならなくなる。まあ、そんなことはないだろうが。

そんなことを話しつつ先ほど見つけた不審な場所へとたどり着いた。

少し開けたその場所は特に誰もいないが、少し前まで人がいたようで、ところどころに足跡がついている。


「誰もいないね」

「時期が来るまでどこかに身を隠したんだろう。何かやろうと考えているってのは確かなようだ」


この動き方。前にセシルの村を襲撃した奴とは違う気がする。

あの魔族は相手が人間ならまず滅ぼせば安全だという考えだろう。勇者であろうがなかろうが、人間であるなら敵だから殺す。単純でわかりやすく、読みやすい。

だが、今回来た奴は冷静だ。必要以上に動くことはなく、手を見せないからどう動くか、何を考えているか読みにくい。

だから何かしらの痕跡を見つけておきたいものだが…。


「何もないねー。何しに来たんだろ」

「何もしなかったってことはないとは思うが…」


様子を伺うにしても何かをしてくるはずだ。それすらないってことはここ以外に何かをしてきたということか?

何か痕跡がないかと周囲を見回していると背中に張り付いているクーが俺の服を引っ張った。


「どうした?」

「……あそこ…変…」

「どこー?」


瑠衣がクーが示した場所を見てみる。


「ここ?」


クーが頷いたので俺も見てみるが、特に何もない地面だ。だが…


「足跡がない…いや、消されたのか?」


その地面の周囲にはいくつか足跡があるというのに、ここだけは綺麗に均されている。

何かを設置した?地雷とかそういったものはこの世界にはないだろうし、ここに設置する必要も意味もない。何か隠しておきたいものか、それともここに隠すことで意味があるやつなのか。


「埋めたのかな?掘り出してみる?」

「ああ、だがちょっと待ってくれ。俺がやる」


そういって地面へと手を向ける。

範囲がわからないというのもあるが、可能性としてこの均されている地面すべてに何かを隠している可能性もある。だからそれをできる限り壊さないように、上の土を巻き上げて吹き飛ばすように風を作りだして…。


「あれ…これって…」

「……魔法陣…?」


徐々にあらわになったのは魔法陣。中心に魔石がはめ込まれており、うっすらと光り輝いている。

おそらくこの光を隠すために土をかぶせておいたんだろう。


「これってなんの魔法陣だろ」

「えーっとちょっと待てよ…」


魔法陣の専売はセレスなので、俺は少し読める程度だが、この魔法陣は知らない。

というわけで万能の書で調べ始めたのだが…。


「転送…いや、転移か?物質を送る物ってわけじゃなくて生物を送るための魔法陣だな」

「じゃあ戻ってくるためにここに設置しておいたのかな?」

「…それか何か大物をここに送り込むために設置しておいたか…」


どっちにしろ何かがここに来るのは予測できる。問題はそれがいつ来るかだが…。


「敬、どうするの?」


………何かが来るにしてもそれはいつだ?セシルの時のように滅ぼすのが主だった場合、わざわざ大物を呼び出すなんて目立つことをするとは思えない。田舎の村だ、様子見に来た魔族だけで攻め落とすということも考えられるだろう。

そしてここにはそれほど大きな魔法陣が描かれているわけじゃない。おそらく人が入るとしたら多くて5人ほど。となると、滅ぼすための軍勢を呼び出すってことはないだろう。

やばいのは一人で国を滅ぼせる単位の人員が来ることだが…。それに関してはわからないな…。


「とりあえずここの場所を覚えて夜また来よう。ここでの俺たちの痕跡は風でいくつか消しておく。暗ければ暗視とかできなければわからないだろう。あとは来た奴次第ってところかな」


俺の言葉に瑠衣が頷く。おそらく呼ぶのは今夜。遅くても3日以内に動くだろう。

とりあえず動きがあるまでは夜はここで見張っていないといけなくなりそうだな…。



深夜

草木も眠るこの時間帯。動物たちも眠り、森は風が奏でる葉がこすれ合う音のみを響かせていた。

そんな中、うっすらと明りがともる。地面へと魔法陣が映し出され、ゆっくりと回転し始める。

そして外周の枠から光が立ち上り、魔法陣の中心に3人の人影が現れた。


「ここがそうなのかい?」


先頭にいる青年が後方にいる二人に問いかける。


「はい。ここから少し先にある小さな村から確かに勇者が覚醒した時の魔力を感じました」

「少し前に勇者捜索をしていた部隊が消息を絶った際、その時も同じ魔力を感じたのだが、それとはまた別なのか?」

「正確なところはわかりませんが、おそらく違うかと。あの時に覚醒した勇者も途中で消息を絶っておりますが、魔力の気配が違いました」

「なるほど。まあ、そのあたりはそこに潜んでいる彼らに聞けばいいだろう」

「「っ!?」」


青年が明らかにこちらを見ている。気配を隠して潜んでいたが、ばれていたか。


「うまく隠れていたと思ってたんだがなぁ」

「それだけ相手の実力があるってことだろ。油断するな」


悠々と構える俺に和也が険しい表情で盾を構えている。後ろで瑠衣と玲も武器を手にし警戒しており、背中に張り付いているクーもいつもより体を縮こませている。

俺もわかる。後方にいる二人は問題ないが、先頭にいる青年がやばい。

見た目20代後半ほどだというのに、その身に纏う魔力が桁違いに高い。魔族の中でも高位な存在。おそらく四天王レベル。下手するとそれ以上の…。


「まあ、待ちなさい。私たちは争いに来たわけではないのだよ」

「勇者に覚醒した奴の様子でも見に来たか?」

「そうだよ。そういえばセレスティアにいた子をこっちに投げてきたのは君かな?」

「あー、そういやそんなこともしたな。生きて届いたか?」


投げ飛ばしたのはいいが、着地に関して一切気にしてなかったんよな。


「無事…とは言えないけどちゃんと生きて届いたよ。ただ、ずいぶんと怖がっていてね。話を聞きだすのが大変だったよ。姿だけで、君の名前を聞いても知らないみたいでね」

「あぁ…そういやそうだっけ」


あの時は確かセレスにしたことで頭に来てたからな。名乗りだとかそんな余裕なかったな。


「ま、あれは俺も頭に来てたからな。謝る気もない。で、それに対して制裁でもする気か?」


チャキと刀に手をかけると、後方にいた二人の魔族が警戒する。しかし青年が片手を上げて制した。


「いっただろ?争いに来たわけじゃないって。そういう挑発は早計だよ。それに君が挨拶してきたんじゃないか」

「なに?」

「コルソ…君が投げ飛ばした子に伝言を頼んだだろ?『じきにその面拝みに行くから首を洗って待っていろ』だったかな?」


確かにそれを言ったような気がする。そしてその相手は…。


「改めて自己紹介しよう。現魔王軍のトップである魔王。『カリヤ』だ。会えてうれしいよ、勇者ではない異様なる者よ」


青年…魔王カリヤは底知れない笑みを浮かべて自己紹介をした。



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