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神に頼まれたので世界変革をすることにした  作者: 黒井隼人
聖都サントテフォワ

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第38話

サントテフォワ 大聖堂地下


「さて…と、とりあえずこいつ拘束したいんだが…隊長さん、ロープとか持ってる?」


全ての手が阻止され、茫然自失となっている上級悪魔を見つつ、剣を納める。さすがに戦意喪失した奴を斬る気にはなれなかった。


「持っているが…いいのか?そいつを生かしておいて…」

「こうなったこいつをわざわざ斬る気にはなれんよ。それに情報を引き出しておいた方がいいんじゃねぇか?」

「それはそうだが…」

「上級魔族だろうからそれなりに情報を持ってるだろ。ただ、油断して魔剣を奪われるようなことだけはないようにな」

「ああ」


懐から出したロープで魔族を縛り上げるのを見ていると、クーがトテトテと近づいてきた。


「終わった?」

「多分な。あとは瑠衣達の方だが…まあ、あっちはあっちで大丈夫だろ」

「ん」


いつも通りよじ登って背中に張り付いてきたクーを支え、周囲を見回す。

先ほどまでの戦いの影響でところどころでこぼこしており、先に戦っていたであろう影の部隊も倒れ伏したままになっている。


「何か手伝うことは?」

「息がある者に手当をしてやってくれ。それ以外に関しては今はいい」

「あいよ」


さすがに全員無事なんてことはないだろう。とりあえず重傷者から応急処置しておこう。死なない程度にまで行けば何とかなるだろ。


「こういう時でも万能の書は便利だなー」


そんな事を小声でつぶやきつつ、倒れている人たちの呼吸、脈拍を確認し、生きている人たちには万能の書で調べた応急処置の方法をしていく。地面から伸びてきた槍が刺さったような傷もあるが、とりあえず最低限の止血をして、回復ポーションなどをかけていく。軽いかすり傷などには事前に作り置きしておいた軟膏を塗って処置していく。


「なにを塗っているんだ?」


拘束し終えたのか隊長さんがこちらに来ていた。


「軟膏。回復ポーションの作り方をちょっと変えて作ってみたんだよ」

「効果は?」

「普通のポーションと大して差はないよ。ただ少々治療に時間はかかるから大怪我には向かんが、軽傷ならこれで十分だ。無駄にもならんしな」

「ほう…」

「ってか、納得してないで治療班なり呼んだらどうだ?」

「すでに手配はしている。教皇様にも魔剣は護られたと伝えてあるから、おそらくこれから鎮圧部隊が動くだろう」

「あっそ。んじゃ俺は治療が終わったら帰るから」

「わかった。魔族から引き出した情報はどうする?」

「そっちの好きにしな。引き出すのに何日かかかるだろうし、俺達はそれを待つ気もないから、さっさと片付いて報酬貰ったら次の街に行くよ」

「そうか」


それを最後に俺達は黙々と作業を続け、やることが終ったので地下から出て大聖堂を入り口から出ると、正門の前に瑠衣達が集まっていた。


「あ、敬!」

「おいっす。そっちは問題なかったか?」

「ああ、俺達も捕らえた魔族に関しては影に引き渡しておいた」

「私の方は死にかけてたけどねー」

「水のドームの中で延々と放たれてくる槍をよけ続けていたからね…」

「えっぐい事やってんなぁ…」

「そうかな~?」

「敬の方はどうだったの~?」

「ああ、上級魔族が来たが問題なく撃退したよ。魔剣も無事だ。影の方には被害は出てたが、まあ仕方ない事だろう」

「手を貸した方がいいかな?」

「別にいいだろ、向こうにはそれ相応の人員がいるだろうし、必要以上に手を貸すこともないさ」

「そっか。じゃあこれからどうするの?」

「とりあえず宿に戻って…店が再開したら旅支度して次の目的地に行きたいが…とりあえずそこらへんの相談だな」

「あいよ、んじゃ戻るか」


まだどこか騒がしい街中を、俺達は宿に向かって歩き出した。



「そういえば神爺さんは?」

「ん?戦闘が終わったら寝始めたぞ」

「また寝てんのかあいつは…」

「疲れているのかしらね~」

「疲れるほどなんかしてねぇだろ」

「んー、意外とあのネズミの姿を維持するのが大変なのかもよ?」

「なのかねー?ま、いいか」


そんな話をしつつ宿の扉をくぐると、宿屋の女将さんが慌ててこちらへと来た。


「皆さん!ご無事でしたか?」

「ええ、問題ないです」

「外で暴動が起きたと聞きましたが…」

「ええ。どうやら扇動していた人がいたみたいで、その人も捕まったようなので少しすれば落ち着くでしょう」

「そうですか、それなら安心しました」


言葉の通りどこかほっとしているようだ。


「さて、じゃあ自分たちは部屋に戻りますので」

「わかりました、夕飯はいかがいたしましょうか」

「部屋まで持ってくることはできますか?」

「可能です」

「ではそれでお願いします」

「かしこまりました」


一礼して女将さんも仕事に戻った。俺達も宿屋の部屋へと戻った。


「さて…とりあえず今後の事についてだが、次はどこを目指すかだ」


一通り荷物などを置いてからリビングで地図を広げる。


「立地的にはどこが近いの?」

「今いるのがここ聖都サントテフォワ。で、近いのは農業国家シャンフォレだな。こことは農作物や林業などが盛んだからそこらへんの技術を手に入れたい」

「じゃあ次はそこかな」

「それもありなんだが…個人的にはそろそろ拠点を手に入れたい」

「拠点?」

「ああ、街を転々としていくのはいいが、それらで手に入れた物をずっと持っている形になっているだろ?今後も荷物が増えていくだろうし、それらを管理する場所が欲しいんだ」

「気持ちはわかるが、そんなのどこに作るんだ?俺達は確か魔族領と人間領の境界線に行くんだよな?下手にここらで作ったとしてもそうそう戻れないぞ」

「ああ、そうだ。だからシャンフォレに向かう前に…いったんここに向かう」


そういってサントテフォワの場所から俺は地図上に印が書き込まれている場所に指を滑らせた。


「ここは…山?ここって何なの?」

「セレスティアで少し話があっただろ?昔魔術を発展させた神が呼んだ神徒と呼ばれる奴らがいたって」

「うん」

「ここはそいつらが作った拠点…いわば遺跡だ」

「確かなのか?」

「ああ、万能の書で調べたから間違いない」

「でも、遺跡ってすでに荒らされた後なんじゃ?」

「いや、調べてみたがそうでもないみたいだ。というか、どうもこの世界の人間には開けることができないようだ」

「どういうことかしら~?」

「どうもこの遺跡は神徒が作った機械によってロックをかけられているみたいでな、そのロックを解除することができるのは体内に魔石がない存在。異世界から来た存在しかいないんだ」


この世界の住人、人間、魔族、魔物関係なしに全員が体内に大小違いはあれど魔石が存在する。だが、遺跡に入るためにはその魔石に反応しない人物じゃないと扉が開かないように設計されているようだ。


「しかもかなり巧妙に隠してあるらしくてな、よっぽど運がよくない限りはまず見つからないようだ」

「じゃあ、そこまで言ったらその入り口を探すのが目的なんだ」

「そうなるな。一応万能の書で調べては見るが、どこまで特定できるかわからんからあまりアテにしないように」

「コンパスみたいになったら楽なんだがな」

「…ワンチャンありそうだな…まあ、そこらへんはその場にたどり着いてからだな」

「じゃあそこでしばらく調査するための準備もしておいた方がいいかもしれないわね~」

「だな。そこらへんも話し合っておこう」


地図を広げた状態でメモとペン、インク瓶を取り出していろいろと書き込んでいく。


「そういえば敬、神徒ってどんな人たちなの?」

「ああ、瑠衣達には話してなかったっけ。神爺さんが昔連れてきた俺達と同じ異世界人だ」

「異世界人?」

「セレスには言ってなかったっけ?俺達この世界とは別の世界から連れてこられたんだよ。寝てるあの神爺さんにな」

「あー…だからなんか違和感があったのか」

「違和感?」

「具体的にこう!とは言えないけど…なんか私達と違う雰囲気だなーって思ってたんだ」

「そうなんだ…何か違うのかな?」

「多分魔力の流れとかそんなところじゃね?俺達の中には魔石がないから普通の人達とは違う流れ方してるんだろ」

「なるほど」

「話戻すぞー。で、その神徒なんだが俺達がいた時代よりさらに千年先、西暦で言えば3000年あたりの人達らしくてな、その時代では技術者がかなりあぶれてたらしいんだ」

「技術者が?なんでまた、そういう人たちって結構重要だと思うんだが…」

「確かにそうなんだろうが、その時代は技術が発展しすぎてな、これ以上発展する部分が少なくなってその分個人の力にそこまで大きな差がなくなってくる。大企業など技術者を数多く抱えているならともかく、俺達の時代にいたフリーランスとか個人がやっているものだとよほどの高い能力を持っていないと埋もれてたらしい」

「じゃあそういう人たちを?」

「ああ、連れてきたらしい。といっても俺達と違ってくるかどうか確認したらしいがな」

「扱いの差が…」

「まあ、目的の重要度の差だろ」

「敬に関しては敬にしかできないってのがあるし、その時に関しては技術者っていう大雑把な枠組みだったんだろ」

「多分な。で、未発達なこの世界の魔術や技術をある程度発展させるために連れてきたのが神徒と呼ばれる存在らしい」

「へー」


他にももう一柱の神の話もあるが、そこらへんはまだいうべきではないだろう。実際問題、関わる可能性があるとは言えない状況だ。必要以上に不確定要素を告げる必要もないし、現状変革に関してもまだまだ準備段階だからな。


「ねえねえ、敬。その神徒って人達には私達と同じ日本人もいたの?」

「らしいぞ。ってか世界各国から集めたらしい」

「へ~、どんなものがあるのかしらね~?」

「よくあるレーザー銃とかあるかね?」

「どうだろうな~、意外と特殊な物がないかもよ」


技術は発展するとなぜか外見のシンプルさやコンパクトを追求し、中身が化け物って言うのができていったりもするからな…。あれは一体どういうコンセプトで作っていくんだろうか。


「ま、いいものがあるのかないのか、拠点になるかどうかもわからんがとりあえず楽しみにしておきますか」

「だねー」


そんな和やかな話をしながら、俺達は旅立ちのための話し合いを進めていった。


次回でサントテフォワ編最後です

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