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神に頼まれたので世界変革をすることにした  作者: 黒井隼人
聖都サントテフォワ

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第28話


「また魔族が関わっているんだねー」


ふよふよと浮かぶセレスが俺からの話を聞いて呆れたように呟いた。

俺と瑠衣、クーは聖女であるプリエ達との話を終え、まだサントテフォワへと到着していないことも考慮し、一旦馬車から降りて和也達と先ほどまでの話の共有をしていた。


「あくまで予測だがな。確証はない。だが、魔王がいて勇者がいない現状で、他国が聖女を狙うよりも魔族が狙っていると考えた方が可能性が高いのは確かだ」

「にしても、セレスの一件といい、今回といい…ずいぶんと搦め手を使ってくるな」

「だねー、勝手なイメージだけど、魔法や物理で蹂躙するー!みたいな感じだと思ってたよ」

「多分今の魔王がそういう手段を取るタイプなんでしょうね~」


確かに和也達の言う通り、セレスティアでは密かに街にかけられている魔術に別の魔術を混ぜて、セレスによって崩壊させようとしたし、今回に関しても、何人かの魔族を紛れ込ませて聖女を排除しようとしている。真っ向からぶつかるというわけではなく、密かに浸食していく感じが地味に厄介だ。

グランフォール皇国にいた時は気付かなかったが、もしかしたらあそこもなにか仕掛けられている可能性も十分にある。そしてそれは他の国も。


「搦め手が得意な魔王ね…厄介というか面倒だな…」

「気が付いたら崩壊させられていそうだもんね…。というか、今サントテフォワがそうなりかけてる?」

「多分な」


セレスの言葉の通り、サントテフォワの対立が魔族の仕業であれば厄介なところまで行っているだろう。

教皇派である貴族達と聖女派である民衆達。もともと多少の不満はあったであろうが、それを魔族に煽られて肥大化し、ここまで表立ってしまった以上、たとえ魔族を倒したとしても少なからず軋轢は残るだろう。


「んで敬、これからどうするんだ?魔族が関わっているんなら俺達もどっちかにつくのか?」

「あー…微妙なところなんだよな…。ってか、グランフォール皇国かサントテフォワのどっちかとは敵対関係…とまではいかなくてもマイナスな印象持たれたいんだよな…」

「なんで?」

「グランフォールとサントテフォワ。それぞれは魔族との戦いで強い発言力を持っている国だ。だから後々の計画からしてどちらかにマイナスな印象を持ってもらった方がいろいろと動きやすくなるんだよ」


計画の全容を話していないからそこまで詳しくは話せないが、あまり友好的になられると後々影響が出かねないのは確かだ。


「計画って言うけど、いつになったら全容話してくれるんだ?」

「隠すほどでもないのは事実だが…ぶっちゃけどこまで軌道修正が必要になるかわからないから話せないって言うのが現状。ある程度落ち着いたらちゃんと説明するよ」


主要国家5カ国との関係性やそれまでに起こった事柄。それらでどれだけ今の計画から外れるかわからない以上、下手に今話して混乱させるわけにもいかない。


「でも、敬が嫌われるって…」

「無理じゃない?敬ってお人よしのところあるし」


瑠衣が言いにくそうにしていた言葉をセレスがバッサリと言い切ってしまった。


「そうか?」

「そうでしょ。だって私を消さずに助けたんだし」

「いや、あれだけのことがあってそのまま消すとか寝ざめ悪いし。あとそれを決めたのはどちらかというと瑠衣の方だ」

「えー!私は敬の想いを汲んだだけなんだけどなー」

「そうね~、瑠衣は敬が後悔しないようにってあの手段を取ったんだものね~」

「そもそも敬は助ける手段と倒す手段があるとして、あの時倒す手段を選んでいたのか?」

「………」


和也の問いに俺は黙ってしまう。


「答えに詰まるあたりもうお察しだよねー」

「(´・ω・`)」

「んで、結局どうするんだ?聖女派につくのか?」


話が脱線しかけてたので和也が軌道修正した。


「ん~…教皇派がどこまで勘づいているか。そして今回の一件をどう見ているかに寄るんだよな…」

「いざとなったらそれぞれで別れて動いたら?」


セレスの提案も一つの手ではあるが、問題点もある。


「それも一つの手ではあるが…聖女派にも教皇派にも俺達の顔はバレているだろうから…下手な動き方をすると両方から敵対されて、魔族の思うつぼになりかねないんだよな…」

「そっかぁ…難しいね…」


セレスの言う通り、俺達が二手に分かれてそれぞれで動ければ楽になる部分は多々あるだろうが、それでも聖女派であれば民衆達に教皇派とつながっていることが露呈すれば糾弾されるだろうし、それは教皇派にいる貴族達に対してもそうだ。


「こういう場合中立って言うのが一番面倒なんだよな…」


せめてどちらか片方を重点的に動ければいいんだが…。


「そういえば敬、一つ気になることが」

「気になること?」

「ああ。聖女の護衛騎士なんだが、一人の死傷者も出してないんだ」

「ん?それがおかしい事なのか?」

「ああ、死者がいないのはともかく、怪我した奴すらいないというのはおかしいだろ?」

「え?怪我人すらいなかったのか?」

「ああ。鎧や盾といった防具に傷はついていたが、それらが体に到達した奴はいなかった」

「あいつらが暗殺部隊だから刃に毒とか塗ってある可能性も考慮したってのはわかるが…だが一人も怪我人がいないというのは確かに変だな」

「そうなの?」

「ああ、思い出してみな。あいつらは山賊に扮してただろ?そして左右は森があって姿を隠すことができる。その状態で護衛がいる馬車を襲撃するとなると、まず強襲して相手の足並みを乱し、その後各個撃破って言うのが定石だ。おそらくその定石をやらなかったんだろう」

「みたいだ。騎士の一人に話を聞いた感じだと、どうも街道を進んでいると山賊に扮したあいつらが姿を現して、そのまま戦闘に入ったようだ。さすがに真っ向から来たらやられることはないみたいでな、戦い始めてあいつらの実力を感じて少し警戒度を上げたみたいだがな」

「でも、なんで普通に姿出してから襲い掛かったんだろうね」

「ん~…聖女さんを殺す気がなかった…とか?」

「でもそれなら最初から襲撃何てしないんじゃないかしら~」

「…つまり殺意はない状態で襲撃してきたという可能性があるわけか…」

「そんな状況あるのか?」

「考えられるとしたら…教皇派にも魔族が潜り込んでいて、それに勘づいた教皇があくまで聖女派と対立しているという体裁を取るための行動…とかかな。それなら今回の聖女襲撃の被害が軽微だったのも頷ける」

「魔族とつながっている貴族をあぶりだすために被害を出さないように襲撃したってこと?」

「可能性の話だがな。だが低くはないはずだ」


だが、もしその通りだとしたら、それを察しているのは教皇か、それに近しい権力者が気づいているということになる。そいつと接触できれば今後の計画も立てやすいんだが、さすがに接触方法がな…。


「まあ、とりあえず教皇派にも魔族が潜んでいる可能性、そしてそれに教皇、もしくはそれに近い奴らが気づいている可能性があるって訳だ」

「となると、当面はその人たちに接触するのが目標?」

「そうなるかな」

「…というかさ」


そんな話をしているとセレスが呆れたように肩を竦めていた。


「もうすでに関わること前提の話になってるじゃん」

「………ハッ!」


セレスに言われ、すでに関わることが確定していることに気が付いた。



それからしばらく歩き、正面に街影が見えてきた。


「あれが聖都『サントテフォワ』です」


そういってプリエとの話の後、馬車の外で警護の指揮を執っていたエクスがこちらへと近づき教えてくれた。

少しずつ近づいてくる街影、サントテフォワは背の高い真っ白な城壁に囲まれているが故に街並みは見えないが、おそらく中心にあるのだろう、巨大な白い城のような教会が城壁の上から姿を見えていた。


「でっかいな…」

「サントテフォワが誇る大教会です。大きな神事や祝事などで使われるのです。そして本来は聖女様が毎朝祈祷をする場所でもあります」

「本来は?」

「はい、今は状況が状況ですから、大教会での祈祷はできません」

「ちなみに、聖女さん…プリエさんだっけ。あの人は今どこで暮らしているの?」

「民衆に解放されている教会がいくつか街中にありまして、そこに身を寄せています。毎朝の祈祷もその教会で」

「その教会は安全なのか?」

「今のところは。教皇様はそこまで強引な行動を起こさない方なので」

「つい少し前に襲撃されたのに?」

「ああいった事はめったにありません。それに民衆に解放されている教会に圧力をかけてしまえば、今回の様な暴動を助長させてしまいますので」

「ふむ」


それなら教皇より貴族たちがやりそうだが…いや、魔族の方が抑えるか。下手にやって勘づかれるのも面倒になるしな。


そんな事を話しながら歩いているうちに、そろそろサントテフォワの入口が見えてきた。

先ほど見えた城壁はおよそ高さ10m前後程。厚さに関してははっきりとわからないがおよそ5m近くといったところか。

街道の先には大きめの門があり、そこで検閲がなされている。

俺達はエクスの紹介によって検閲を通過し、そのまま馬車と並んで街中を進んでいく。

石畳で舗装された道に、全体的に白を基調としているのか、煉瓦と白塗りの建物がちらほらとある街並みを歩いていく。


「綺麗な街だねー」

「全体的に掃除が行き届いているな。対立しているとは思えん活気だし」

「大っぴらにはやってないってことだろ。それか聖女派の数がそこまで多くないかのどっちかだ」


教皇派の方は教会に圧力をかけて助長させるのを敬遠し、聖女派の方は大っぴらにやって貴族からの弾圧を避けているって感じかな。何とも中途半端な感じだ。


「敬さん」


そんな事を考えていると馬車の窓がわずかに開き、プリエがチラリと顔をのぞかせた。


「私達はこれから教会に戻りますが、敬さん達はどうしますか?」

「俺達は俺達で適当に宿を探して取るよ」

「ご要望とあれば教会に泊まれるように取り計らいますが…」

「さすがに遠慮しておくよ。それをやると聖女派から抜け出せそうにないから」

「わかりました。では宿が決まりましたらお教えください。こちらが私が今身を寄せている教会の住所となりますので」


そういって一枚のメモを渡される。


「ういうい。こっちも落ち着いたら誰かしらが行くようにするよ」

「ええ、お願いします。だはまたその内に」



そういってからプリエは窓を閉め、馬車はそのまま進んでいく。


「さて…俺達も宿を探すか」

「はーい」


俺達も瑠衣達と共に人込みに紛れ、宿を探す事にした。



それなりの大きさの宿を見つけたのでとりあえず二部屋取り、俺と瑠衣、クー、セレスと和也と玲、シエル、ノエルとそれぞれ別れて荷物を置き、一旦俺達の部屋へと集合した。


「で、リーダーさんよ。今後の予定は?」

「とりあえずいつも通り市場調査と消耗品の補充だな。そこらへんは玲、任せていいか?」

「いいわよ~」

「で、その際に雑談として対立に関してそれとなく聞いてみてくれ。市場はいろんな情報が飛び交うから噂話程度でもいいからある程度集めておいてくれ」

「わかったわ~。和也君も一緒に来て頂戴ね~」

「あいよ」

「で、シエルとノエルも和也達の方に行ってくれ。ノエルは聞いた話をある程度まとめてくれ。それと多分大丈夫だと思うが、教皇派がどう動くかわからない以上、あの暗殺部隊が絡んでくる可能性がある。シエルは周囲の人の動きを見て和也達を監視してる奴がいるかどうか見ててくれ」


シエルとノエルもコクリと頷く。


「私はー?」

「セレスは俺と瑠衣とクーと一緒に情報収集だ。市場は和也達がやるから俺達は教会の方に行こう」

「教会って大教会の事?教皇様の方に行くの?」

「さすがにそっちは門前払いされるのが関の山だろう。俺達が行くのはプリエが身を寄せている教会、それと民衆に解放されている教会の方に行ってくる。貴族の方から何かアクションがあるとしたらあそこにだからな」

「わかった」

「んじゃ早速動くとしますか」


俺の言葉に全員が頷き、それぞれ移動し始めた。




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