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神に頼まれたので世界変革をすることにした  作者: 黒井隼人
グランフォール皇国

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第11話

皇国の四大公爵家の一つ、クロイローツ家に呼ばれ、そこで当主であるミリアル・フォン・クロイローツを話していると、ミリアルに呼ばれて現れた一人の男性は軽く頭を下げた。


「初めまして、私はシリウス・マルシャン。マルシャン商会の会長でございます」


温和な笑みを浮かべている男性、シリウスはその笑みとは違って鋭い視線をこちらへと向けている。それにクーが怖がっているのか、俺に抱き着いてくる力がわずかに強まった。


「どうも初めまして。自分は敬、彼女は瑠衣。そしてこの子は昨日襲撃した際に保護したクーです」

「ちょ、ちょっと敬!」


俺の最後の言葉にさすがの瑠衣もわずかに焦っていた。それもそうだろう。奴隷解放は犯罪だ。それを示唆(しさ)するような言葉を言ったとなれば焦っても当然だ。

そしてそれを聞いたミリアルとシリウスの表情も険しくなり、事情を知っているスティクはわずかに顔を青ざめさせた。


「それは奴隷解放を行ったという自白ですかな?」


シリウスの問いに俺はあくまで余裕を感じさせる笑みを浮かべる。


「どう取るかはそちらの自由です。ただ、一つ言わせてもらいますと、この子は違法品が保管されていた部屋にいました。牢屋に入れられていたほかの奴隷とは違って」

「…つまりその子自身違法な手段で奴隷とされた可能性があるということか?」

「あくまで可能性ですが」


奴隷が法にのっとっている以上、その取引にもちゃんとした法が関わっている。相手が非合法の盗賊などでも、取引をする以上、そこには法に則った物を適用しなければならない。といっても、それらを生業としている者じゃなければ無視する者もいるのが現状だが。


「可能性ということは、それを裏付ける証拠はないということで?」

「ええ。わざわざ調べる必要も感じませんでしたので」


万能の書を使えば一発でわかりそうなものでもあるが、これを大っぴらに使いたくはない。こういった取引に関してで言えば、合法である証拠は残ったとしても、違法である証拠が残っているとは限らない。それ故に探しても時間の無駄になる可能性もある。合法である証拠がない=違法である、とはならないからな。


「…ふむ、まあ、いいでしょう。報酬ということで」

「報酬?」


シリウスの言葉に瑠衣が首をかしげていた。


「ええ、あなた方がここのマルシャン商会を襲撃してくれましたので、こちらとしても手間が省けたのでその報酬です」

「…マルシャン商会はあなたの商会でしょ?なぜそれを襲撃した俺達に報酬を?」

「確かにマルシャン商会は私の商会です。しかし、ここの部署の担当者は、私の知らないところで違法品の売買を行っていたようで、私自身それらに対して対処しようとしていたのですが、なかなかうまく…」

「そうですか」


困ったようにため息を吐くシリウスだが、俺にはどうにも胡散臭(うさんくさ)げに見えて仕方ない。瑠衣も少しそれを感じたのか、どうしよう?といった瞳をこっちに向けてきた。


「…まあ、こちらとしてもこれ以上クー達に被害が及ばなければ、深入りする気はありませんので」

「ええ、そうですね。あとはこちらの問題ですので」


俺の言葉にシリウスはニコニコと笑みを浮かべていた。

その笑みの裏にあるであろう策略も多少は見え隠れしているが、わざわざ突いて蛇を出す必要もないだろう。


「こちらとしましても、あなた方とは今後とも、御贔屓にしていただきたいもので」

「…あまり厄介事は勘弁なんですが?」

「ご心配なく、こちらとしても商会ですので、商品を売買するのが生業でございます」

「マルシャン商会は様々なところに販売ルートがあるからね、普通では手に入りにくいものも手に入るかもしれないよ」


シリウスを補佐するかのようにミリアルが捕捉してくる。

確かに今後の事も考えるとマルシャン商会を頼るのは悪い選択肢ではないが…。

チラリとクーを見てみるとキョトンとした目でこっちを見つめていた。特に何か思うことがあるわけでもなさそうだ。

シエルとノエルがここにいないからあの二人がどう思うかは不明だが、ここでマルシャン商会とつながりを持っておいて損はないだろう。


「では早速の商談ということで。二つほど欲しいものがあるんですが」

「おや、何でございましょう?」

「まずは地図を。可能であれば人間領、魔族領、両方の地形がわかるものを別々に欲しいです。それと情報を、人間の主要国家五カ国。ここ、グランフォール皇国、宗教国家サントテフォワ、農業国家シャンフォレ、軍事国家ヴァンクール、防衛国家ブクリエのそれぞれの現状と国の特色を知りたい」


そういって金貨を10枚机の上に置くと、シリウスの目がわずかに細まった。


「とりあえず一カ国金貨2枚分。希少価値が高い情報ならば追加で渡そう。どうだ?」

「ふむ…情報を売る。というのはあまりやっていませんが…いいでしょう、承ります。数日ほどお待ちを、情報をまとめておきますので」

「わかった。地図の代金は別途…」

「いえ、情報量でこれだけ頂いたのです。地図はそのおまけということで差し上げますよ」

「いいのか?」

「ええ、あなた方は上客になっていただけそうなので」


ニッコリとほほ笑むシリウスに肩を竦めた。まあ、なんにしても必要な物をそろえてくれるなら構わんか。

会話に一区切りついたと見たのか、一息ついてからミリアルが口を開く。


「さて、ではとりあえず急ぎの案件はこれで一段落ということで、もう一つお主に聞きたいことがある」

「なんでしょう」

「スティクから聞いたのだが、ライカンスロープに関してだ。推測だと言っていたがどこにいるか予測はつくかの?」

「情報が少なすぎて無理ですね。ノエル達が襲撃された場所しかわからないですから」

「ほかに情報があれば推測できる、ということか?」

「いくつか候補地点を絞るくらいには。といってもそこにいる確証はないので、あくまで予測ですが」

「なるほど。それで必要な情報とは?」

「襲撃された場所と日時、それとウェアウルフの生態ですね。それと皇国周辺の地形がわかればある程度は」

「ふむ、どれくらいあれば予測ができる?」

「そうですね…およそ半年、できれば一年、欲をいうなれば最初の犠牲がでてからという感じでしょうか」


この世界には月という概念はない。一日は24時間ではあるのだが、四季があり、それが一周することで一年となっている。なので半年となると二季節分ということになる。

ウェアウルフの生態とも照らし合わせて、どういう動きをしたかが予測できればある程度当たりを付けることは可能だ。


「わかった。それではこちらもそれをまとめておこう。宿に届けるから、それで推測を頼めるか?」

「まあ、そういう依頼でしたら受けますが」

「ならお願いしよう。報酬はそちらの情報と交換ということで」

「わかりました」


それでミリアルの話も終わったのか口を閉じた。


「では、お話は以上で?」

「ああ、時間を取らせて申し訳なかった。頼まれた物は準備出来次第スティクに届けさせよう」

「わかりました。んじゃ、瑠衣、行くか」

「もういいの?」

「ああ」

「わかった」


瑠衣に支えられ、クーを抱いたまま椅子から立ち上がる。地味に重心が上に行っているからか、立ち上がりにくいんだよな…。


「だはまた」

「ああ」

「今後とも御贔屓に」


それぞれ挨拶を済ませ、スティクに連れられ、俺達は公爵家を後にした。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「どう思う?」


敬達が立ち去った後、ミリアルはシリウスへと問いかけた。


「なかなか扱いにくそうな人ですね。お金に対して執着があるわけでも、地位を求めているわけでもない。おそらく何か目的があるのでしょう、その目的以外は必要最低限、といった感じでしょうか」

「目的…か。魔族領の地図を求めたのと何か関係があるのだろうか」

「おそらく。どういった理由があるかまではわかりませんがね。皇国だけでなくほかの四カ国の情報も求めたのも気になります」

「皇国に取り込むことは可能だと思うか?」

「難しいでしょう。富も、名誉もどちらであっても、両方であっても彼を引き留めるだけの力はないでしょうから。おそらくやるべきことを済ませたら早々に次の国に向かうと思いますよ」

「やはりそうか…。せめて彼の目的が何か分かればいいのだが…」

「それに関しては時間をかけて調べましょう。旅の者である以上、どこから来たかの足跡があるでしょうし、どこの産まれの人かわかれば、もしかしたらそこからとっかかりができるかもしれません」

「そうだな。少し調べておこう」

「はい。では私はこれで。彼に頼まれていた情報をまとめないといけませんので」

「うむ」


シリウスが立ち上がり、部屋を出ようとするが、扉の前で足を止めた。


「そうそう、そういえば彼らの事を調べようとしていた貴族はいかがします?」

「ああ、そちらに関してはすでに手を打ってある。問題ない」

「そうですか。わかりました」


一礼し、部屋を出ていく。

一人残ったミリアルは机の上に置かれている取引リストを手に取り、目を通していく。


「これである程度掃除は完了…といったところかな」


そこに書かれている貴族たちの名前を見つつ、そう静かにつぶやいた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「では私はここで」

「ありがとうございました」


宿の前でスティクと別れて建物へと入っていく。

取ってある大部屋の扉を開けると、中にはすでに帰っていたらしい和也達がいた。


「おう、おかえり」

「おかえりなさい~、どこ行っていたの~?」

「ん、ちょっと公爵に呼ばれてな」

「公爵に?なんでまた」

「えっとね」


瑠衣が事の次第を説明していく。

スティクに呼ばれ、公爵家へと行ったこと。そこでマルシャン商会の会長と会った事等々。

俺がクーを引きはがしている間に(なかなか離れてくれないので地味に苦戦したのだが)説明を聞き終えた和也が口を開いた。


「んじゃあシエルとノエルの件はもう大丈夫なのか?」

「…あ、そこらへん話すの忘れてた」

「おい」

「いや、もう終わったもんとして頭の中に置いておいたもんで。襲撃した件も特にお咎めなかったし、咎められそうなのはクーに関しての事だったし」


シエルとノエルに関しては、もともと俺達が助けたことで返すかどうかの取引へともちこまれるはずだった。しかし相手がそれを放棄した故に、こちらは強行手段になったわけだが。


「ま、会長は話が分かりそうだったし、金貨以外はスティクに渡したんだ。あとは向こうでなんかするだろ」

「大丈夫なのかよ」

「大丈夫大丈夫」


不満げな和也へとお気楽な返事を返す。実際、問題になったとしても、当初の予定通りに動くだけだ。皇国から不興を買っておきたいところだったが、公爵が出てきて、多少なりとも交流が出てきた以上、それも厳しいだろう。それならそれで動くだけだ。

向こうとしてもこの一件はこれで終わりにしたいはずだ。マルシャン商会はそれなりにダメージを受けただろう。これ以上の被害は抑えたいはず。ならば必要以上に問題を大きくするようなことはないだろう。


「ねえ、敬。今回の一件、本当に商会にいたあの商人が独断でやったのかな?」

「どういうこと~?」

「なんか会長さんの言葉に引っかかりを感じて…何かまではわからないんだけど…」


瑠衣が眉間に皴を寄せて考え込んでいる様子がどこかおかしく、思わず笑ってしまう。


「なんで笑うのよ!」

「変な顔だn…おぶぅ」


素直な感想を言うと枕が飛んできた。


「失礼ね!」

「だが、実際のところどうなんだ?俺達はその場にいないからわからなかったが…」

「ん~…十中八九あの会長、関わっているぞ」

「やっぱりそうなの?」

「表立ってではないだろうがな。普通に考えてみろ、マルシャン商会がでかいから違法品の取引ができるのはわかるが、それを取引するルートってものがあるはずだ。それを会長でもある人物が把握してないと思うか?」

「あの商人が独自に見つけたとか?マルシャン商会を隠れ蓑にして」

「にしてはいろいろと対応がおざなりだ。おそらくだが、そのルートによって仕入れた違法品を、会長の息がかかっている奴からあの商人に引き渡し、取引させたって感じだろ」

「でも、なんでそんなことを~?」

「さてな~、さすがにそこまではわからん。だが、おそらくだが公爵も関わってるだろうさ」

「公爵さんも?なんで?」

「おそらく違法品売買は公爵と会長が組んでやった事だろう。そして取引した商人と貴族を一網打尽に捕まえる。それによってどういった利益が出るかはわからんが…とんだマッチポンプだ」


おそらく俺達が関わらなければ解決はスティクを中心に公爵家がやっただろう。対象になった貴族たちがどんな奴なのか知らないが、まあこれ以上踏み込む必要もないだろう。


「そういや、買い物の方はどうだった?」

「なかなか良いものそろっていたわよ~♪ちゃんとクーちゃんの服も買ってきたからお着換えしようね~♪」


じりじりと玲がクーへと近づくと怯えたクーが俺の後ろへと逃げ込んできた。


「まだ慣れてないんだから怯えさせるなっての」

「あら心外ね~。私としては早く着替えさせてあげたいだけなのよ?」

「というか、シエルちゃんとノエルちゃんも着替えてないよね?なんで?」

「ここで着替えて敬達に見せたいんだと」

「そか、んじゃ俺と和也はいったん外出ておくから。瑠衣、クーを頼んだ」

「はーい」


俺の後ろにいるクーをひょいと持ち上げ、瑠衣へとたくしたが、思いっきり暴れてた。うん、微妙に気持ちはわかる。瑠衣と玲の目が微妙に怖いよな。だが、安心しろ。あくまで着せ替え人形にされるだけだから。


「んじゃ行くか」

「おう」


廊下に出てとりあえず一階へと降りていく。ここは宿屋だけで生計を立てているが、それでも食堂はあり、追加で料金を支払えば料理も用意してもらえる。用意してもらった食事は部屋で食べてもいいし、食堂で食べてもいい。それらは自由だ。


「もうじき夕飯になる時間だな…今日はどうする?」

「んあー…瑠衣と玲があの調子だからな。俺達で作るのも一つの手だが、せっかくだから用意してもらうか」

「敬、料理できるのか?」

「簡単な物ならな」


とりあえず適当に座ってジュースを二つほど注文する。それと同時に夕飯を七人分、用意出来たら部屋に持ってきてもらうように店員に頼んで、代金を支払った。

少し待って飲み物が来たので軽く乾杯してから飲み始めた。


「で、これからどうするんだ?もうこの国でやることはないだろ」

「そのはずだったんだが、公爵に少し頼み事されてな。といってもライカンスロープがいるであろう場所を推測して教えるだけだが」

「できるのか?」

「大雑把ならな。さすがに的外れの処を示すわけにいかないから、ある程度は万能の書で調べるが、それでも情報さえあれば推測はできる。そこらへんの情報と、あとマルシャン商会に頼んでほかの五カ国の情報と地図を買ったからそれの到着待ちだな」

「それが終ったら次の国に行くのか?」

「ああ」

「どこに行くんだ?」

「ん~…とりあえず情報待ちでもあるんだが、一応は宗教国家サントテフォワかな。とりあえず主要五カ国を回って国の特色を見ておきたい。それと勇者と魔王について調べておきたい」

「そこらへんは万能の書で調べればいいんじゃね?」

「万能の書には事実が書かれているが、どう伝わっているかまでは書かれてないんだ。そこらへんの差とかを調べておきたい」

「なるほど」

「まあ、予定通りに行くとは限らないけどな」

「ここでの予定も大分狂ったもんな」

「どうしてこうなった…」


元々皇国とは揉めておこうと思っていたのに、いざやってみるとそうはならずに逆に公爵との接点を持ってしまった。当初とは真逆の方向に物語が進んでいる気もする。


「まあ、起っちまったもんはは仕方ないだろ。必要以上に敵意を抱からなくなったってことでプラスに考えておけ」

「だなー。はぁ…」


計画通りにすべて行くとは思っていないが、当初からここまで予定がずれるとなるとさすがにへこんでしまう。

とりあえずいつまでもこだわっていても仕方ないから頭を切り替えておかないと。


「そういや、何を買ってきたんだ?」

「ん?ああ、市場の方でか。とりあえずシエルたちの服を何着かと、食材、調味料、あと旅に必要になりそうな物とここに来る前にリストに挙げておいたもんだよ」

「なるほど、取り合えず夕飯食った後にでも確認しておくか」

「あいよ」


その後適当に雑談して、丁度飲み物が終るくらいに瑠衣が一階へと降りてきた。


「終わったか?」

「うん、着替え終わったよー」

「んじゃ行くか」

「あいよ」

「二人で何話してたの?」

「今後の予定を軽く話してただけだ。瑠衣達にも後で話す」

「はーい」


とりあえず三人で部屋に戻ると、なぜかメイド服に着替えているノエル、シエル、クーの姿があった。


「……なんでメイド服?」

「あら、男子ってこういうの好きじゃないの~?」

「俺は好きだぞ!」

「俺はクラシックスタイルの方が好きだがな」


力強く言う和也に対して、俺は冷静にそう答えた。

シエルたちが来ているメイド服は、黒を基調とした服に白のエプロンであり、スカート丈は膝くらいだった。個人的には足がほぼ隠れるクラシックスタイルのメイド服の方が好みだが。


「えー、でも可愛くない?」

「可愛いのは認めるが好みの話だ」


そういって部屋の中心にあるソファに座ると、少し疲れた顔をしているクーがトテトテと歩いてきて膝の上に座ってきた。


「…お前、そこを定位置にする気か」


その言葉にダメなの?といった視線で見てくる。とりあえず諦めた。

そしてシエルとノエルもなぜか俺の左右にそれぞれちょこんと座りこんだ。

とりあえずクーに関して諦めたのに二人にたいして文句言うわけにもいかないので、ため息だけ吐いて受け入れることにした。


「ってか、クーって喋れるんだろ?なんで喋らないんだ?」

「さあ?もともとあまりしゃべらないタイプなんじゃね?」

「あと、多分敬が喋る前に察しちゃうからだと思う」

「俺のせいだとでもいうのか」

「うん」

「解せぬ。まあいい。んで当然これ以外も服買ってきたんだよな?」

「もちろんよ~。いくら何でもメイド服で旅は危険だもの~」

「ならいいがな…」


呆れたようにため息を吐いたらクーがこちらを見上げてくる。


「どうした?」

「…お腹すいた…」

「あ、もうそんな時間だっけ。ご飯これから作ってこなきゃ」

「あ、夕飯ならさっき金払って頼んでおいた。もうちょいすれば来るんじゃね?」

「って訳でもう少し我慢な」

「ん…」


頷いたクーが俺に体重を預けてくる。

シエルとノエルもなぜか左右から体をもたげてきた。


「あらあら、仲良しね~♪」

「敬って結構子供に好かれるよな」

「結構邪険に扱っているのにな!」

「むー…」


若干むくれている瑠衣が俺の後ろに回り込み、唐突に抱き着いてきた。


「なぜおまえも抱き着いてくる!」

「いいじゃん!クーちゃん達は抱き着いても何も言わなかったじゃん!」

「言って泣かれるのが面倒なんだよ!」

「むー!そもそも私が後ろから抱き着いてなんの感想もないの?」

「小さい」


言い終えた瞬間にすさまじい衝撃が後頭部に走った。瑠衣に頭突きされたのだ。


「今のは敬が悪い」

「そうね~」

「ちくせう…」


痛みに我慢しつつ、夕飯が来るまで四方から抱き着かれている状態に耐えるしかなかった。


貴族襲撃イベントのフラグが…消えた…?

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