平和的交渉53
「元々洞窟内にあった横穴の入口を、物理的な手段で封鎖した、という仮説はどうだろう?」
俺はその場にいる面々に問いかけた。これならば、現状に対する回答たりえているようには見える。
「可能性はあるわ。でも、封鎖するにしても多少石を積んだくらいでは、そこから跳ね返ってくる音は他とは違うものになるのよ。いくらアークデーモンでも、少人数が魔法無しの制約の下で分厚い壁を作れたとは考えにくいわ」
「その、違和感の無い壁を作るとしたら、具体的にはどれくらいの厚さが必要になる?」
「それは試してみないとわからないわね。ただ、薄い壁なら足音の反響で気づけるし、厚くても直に叩いた時の音を集中して聞き比べればわかるわよ。それこそよほど分厚くなければね」
「例えば1mくらいの厚さの壁だと?」
「うーん、微妙ね。はっきりとは言えないけれど、足音でわかるか叩けばわかるかの間ってところかしら」
ということは、俺の仮説が正しい場合は少なくとも1m以上の壁が横穴を塞いでいることになる。それだけの厚さの壁を、果たして魔法を使わずに構築できるのだろうか? それも、視覚的に他の壁と比較して違和感が無いように仕立てた上で、である。
「正直、他に仮説が浮かばない。緑山、俺達が無理なく侵入できる範囲でいいから、横穴が塞がれた形跡が無いか確認してくれるか?」
「ええ、了解。暇そうにしてるのを何人か借りていい?」
「編成し直した古島隊と杉下、加藤以外からなら構わん」
「ええ、わかってるわ」
緑山は真っ直ぐに隠された洞窟へと歩いていった。途中で見かけた者全員に声をかけている。どうやら、助手は誰でもいいらしい。
「ねえ、高木君」
ぼんやりと緑山を見送っていると、斉藤が声をかけてきた。
「あのさ、魔法で作った壁ってどう見えるのかな?」
「どう、とは?」
質問の意図が読めずに困惑する俺の顔を、斉藤が躊躇いがちに指差した。つまり、マヒャドの眼を装備したままの俺の顔を。




